上 下
50 / 141
高尾山のムササビカフェ食堂でお仕事ですよ

こんな人生も幸せかな

しおりを挟む
「あ、うん、ありがとう」
「一緒に運ぶと重たくないもんね~」

  もふもふな姿のムササビとモモコはうんしょ、うんしょと椅子を一生懸命運んでいる。その姿があまりにも可愛らしくてキュンとする。

「ムササビちゃん、モモコちゃん頑張って!」

  わたしは顔の横にグーを二つ作り応援した。そのわたしの隣で「ムササビちゃん、モモコちゃん頑張ってにゃ~ん!」とミケもわたしと同じポーズで応援した。

「ありがとう~頑張るよ。うんしょ、うんしょ」

  ムササビとモモコは声を揃えてお礼を言う。

  そんなこんなで四人掛けのテーブルに椅子を二脚追加して座ろとしてあることに気がついた。

「ねえ、四人掛けのテーブルに元々三人しか座っていなかったんだから椅子は一脚だけの追加で良かったんじゃない」

  わたしが一脚余った椅子を指差し言った。すると、「そうだった」とみんなの声が揃う。そして、あはは、にゃははと一斉に笑う。

「椅子が一脚余りましたが、まあ、よしとしましょう。では、お茶でも淹れて来ますね」

  高男さんがにっこりと笑い厨房に向かった。

  戻って来た高男さんは湯気の立った緑茶とおせんべいをわたし達の目の前に置いた。

「わ~い!  おせんべいだ~」

  わたし達は喜びの声を上げおせんべいをバリバリと食べ緑茶をゴクゴクと飲んだ。

  美味しいねと笑い合いみんなで食卓を囲む時間は幸せ色に包まれていた。



「うふふ、今日はなんか楽しかったな~」

  モモコが帰るとムササビが大きな伸びをして言った。今はポニーテールの女の子の姿になっている。

「モモコちゃんと仲直りできて良かったね」

「うん、モモコの奴あんなのだけど、意外と可愛い奴かもね」

  ムササビはニカッと笑う。

「あはは、ムササビちゃんってばほんとはモモコちゃんと仲良くしたかったんでしょ?」

「え!?  あ、えっとその……仲良くしてあげても良かったかな~とは思っていたよ」

  ムササビは唇を少し尖らせ気味にして言った。ちょっとひねくれた言い方ではあるけれど、ムササビの表情を見ているとやっぱり嬉しいんだろうなってことがわかる。

  だって、顔がいつもより柔らかくなっているんだもんね。

「ねえ、真歌ちゃんどうして笑っているの?」

  ムササビがわたしの顔を覗き込み尋ねた。

「ううん、何でもないよ~だ。やっぱりムササビちゃんは可愛らしいなと思ってね」

「えへへ、わたしってばやっぱり可愛いかな~」

  ムササビは頭をポリポリ搔きちょっと照れたように笑った。

  本日のお客さんはモモコとそれから男性のお客さんと女性のお客さんが各々一名来ただけだった。

「真歌さん、本日もお疲れさまでした。助かりました。また、明日もよろしくお願いします」
「高男さんお疲れさまでした。本日もありがとうございました。はい、また、明日もお願いします」

  わたしと高男さんはにっこり笑い挨拶をした。

「また、明日ね」
「また、明日にゃん」

  ムササビとミケもニコニコ笑顔で手を振る。わたしも「また、明日ね」と二人に笑顔を向ける。

  派遣先が倒産して途方に暮れていたわたしだったけれどこの不思議なカフェ食堂に出逢うことができたので今はそれも良かったなと思う。人生の出逢いはなんだか不思議だな。

  今日はケーブルカーが動いている時間にムササビカフェ食堂を出た。ケーブルカーから見える景色に目を細めわたしはこれから先のことはゆっくり考えようと思った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

鬼と私の約束~あやかしバーでバーメイド、はじめました~

さっぱろこ
キャラ文芸
本文の修正が終わりましたので、執筆を再開します。 第6回キャラ文芸大賞 奨励賞頂きました。 * * * 家族に疎まれ、友達もいない甘祢(あまね)は、明日から無職になる。 そんな夜に足を踏み入れた京都の路地で謎の男に襲われかけたところを不思議な少年、伊吹(いぶき)に助けられた。 人間とは少し違う不思議な匂いがすると言われ連れて行かれた先は、あやかしなどが住まう時空の京都租界を統べるアジトとなるバー「OROCHI」。伊吹は京都租界のボスだった。 OROCHIで女性バーテン、つまりバーメイドとして働くことになった甘祢は、人間界でモデルとしても働くバーテンの夜都賀(やつが)に仕事を教わることになる。 そうするうちになぜか徐々に敵対勢力との抗争に巻き込まれていき―― 初めての投稿です。色々と手探りですが楽しく書いていこうと思います。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...