高尾山で立ち寄ったカフェにはつくも神のぬいぐるみとムササビやもふもふがいました

なかじまあゆこ

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高尾山のムササビカフェ食堂でお仕事ですよ

ムササビの知り合いかな

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「あの子どこかで見たことがあるんだよね」

  ムササビがピッチャーからグラスに水を注ぎながらチラチラと窓辺の席に座る女の子に視線を向け言った。

「以前来店したことがあるのかな?」
「う~ん、初めてだと思うんだけどどこかで見たような気がするんだよね」

  ムササビは水をグラスに注ぎ終えお盆に載せた。

「じゃあ、わたし確認ついでにお水を持っていくね」

  ムササビはポニーテールを揺らしお客さんの席へと向かった。

「ムササビの奴騒動を起こすんじゃないだろうな」

  高男さんがお客さんの席に向かうムササビの後ろ姿をじっと見ながら言った。

「え?  ムササビちゃん騒動なんて起こさないですよね」
「そうだにゃん。ムササビちゃんはいい子だもん」

  わたしとミケはそう言ったのだけど、高男さんは眉間に皺を寄せている。そんな高男さんの表情を見ているとちょっと心配になる。

  それに『あの子どこかで見たことがあるんだよね』と言ったムササビの言葉が気になってきた。

  わたし達三人はお客さんのテーブルにたどり着いたムササビをじっと眺めた。



  不安に思いながらムササビとお客さんの様子をわたし達は見守る。

  すると、その時。

「あなたはもしかして!?」とムササビの大きな声が聞こえてきた。

『ムササビちゃんどうしたんだろう?』とわたし達三人は不安げな顔でお互いを見る。

「え?  もしかしてってなあに?」

  お客さんの女の子も大きな声を出す。

  わたし達三人は益々心配になり眉間に皺を寄せお互いの顔を見る。

  ムササビとお客さんの女の子はお互いの顔をじっと見ている。そんな二人のは間には不穏な空気が流れている。

「なんか嫌な予感がするね」

  高男さんが小声で言いわたしとミケの顔を交互に見る。

「ちょっと心配になりますね」
「かなり心配かもにゃん」

  わたしとミケはそう答え視線を再びムササビとお客さんの女の子に向ける。

  すると、ムササビが……。

「あなたは憎たらしいオチビでしょ?」と言った。

「は?  憎たらしいオチビですって!」

  お客さんの女の子も言い返す。

「そうよ!  絶対にあなたはあのオチビだよ。思い出しただけでムカムカしてきたよ」

  ムササビのその声に怒りと苛立ちが含まれている。

「わっ!  思い出した!  あなたこそ年下なのに憎たらしい子だよね。しかもオチビって失礼だよ」

  お客さんの女の子もかなり興奮しているようだ。これは騒動が起こりそうだよ。
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