14 / 198
つくも神
お客さんがやって来た
しおりを挟む
「いらっしゃいませ~」
わたし達四人は声を合わせてお客さんを迎え入れる。遂にお客さんが来店したんだと思うと胸がドキドキしてきた。
入って来たのは髪の毛がサラサラで切れ長の涼しげな目元が印象的な女性だった。
「わっ、クールビューティなお客さんだね」
ムササビはそう言ったかと思うとお盆にお冷やとおしぼりを載せお客さんの元へと向かう。
お客さんが腰を下ろしたのは先程わたしが座った大きな窓がある眺めの良い窓辺の二人掛けの席だった。
「あの席人気があるんですよ」
「窓から見える景色が素敵で落ち着きますもんね」
「へぇ~真歌ちゃんもあの席に座ったんだね。いいな~」
ミケが羨ましそうに言った。
「お客さんが帰ったらミケちゃんも座ってみたらいいよ」
なんて話をしていると、ムササビがポニーテールを揺らしながらこちらに戻ってきた。
「高男さん、懐かしい思い出の味定食をお願いしま~す」
ムササビはお客さんからオーダーを取ってきたようだ。
「おっ、懐かしい思い出の味定食だね」
高男さんは白い歯を見せてニッと笑う。
「懐かしい思い出の味定食かなんか良いネーミングですね。なんか気になる」
一体どんな料理なのかなと興味が湧く。
「お客さんが懐かしいなと思う料理をお出しするんですよ」
高男さんはフフッと笑い厨房の冷蔵庫を開けた。
「お客さんが懐かしいなと思う料理を出す? それってお客さんに聞いてきたんですか?」
わたしが疑問に思い首を傾げていると、ムササビが「高男さんは人の食べたいものを感じ取る能力があるみたいだよ」とムササビが言った。
「え!?」
それってめちゃくちゃ凄いよ。
高男さんに視線を向けると冷蔵庫から取り出した食材を厨房の作業台に並べている。それは、小松菜に油揚げそれから、卵、豚のバラ肉、薄力粉などだ。
果たして何を作ろうとしているのだろうか。
「何を作るのか楽しみだね」
「わたし食べたくなっちゃう」
「わたしもなんでもいいから食べたいにゃん」
わたし達三人がそう言い合っていると、高男さんが、「おいおい君達はさっき賄いのとろろ蕎麦を食べたばかりじゃないか」と呆れた声を出す。
「わたしは食べてないにゃん。お腹が空いたよ。棚の上からみんなの美味しそうに食べる姿を指をくわえて見ていたんだからね」
ミケが手をブンブン振り回しアピールする。
「そうだったね……」
「わたしもご飯食べたいにゃん。食べたいたら食べたいんだってばにゃん」
「おいおい、今はお客さんの料理を作らなければならないだよ。後で作ってあげるから大人しくしているんだぞ」
高男さんが優しい声で言ったけれどミケは我慢できないようだ。
「わたしは今ご飯が食べたいにゃん」
ミケの顔は泣きそうな表情になっている。
「もう、困った奴だな。じゃあ、今回は特別にミケの分も作ってあげるよ」
高男さんがそう言うとミケは「やった~嬉しいにゃん!」と言って高男さんに飛びつく。
「おい、ミケ離れてくれよ。料理ができないじゃないか」
「わかった~ご飯作ってもらわないと困るから離れてあげるにゃん」
ミケは高男さんから離れ「にゃははご飯のお時間だ」と言って満面の笑みを浮かべた。
わたし達四人は声を合わせてお客さんを迎え入れる。遂にお客さんが来店したんだと思うと胸がドキドキしてきた。
入って来たのは髪の毛がサラサラで切れ長の涼しげな目元が印象的な女性だった。
「わっ、クールビューティなお客さんだね」
ムササビはそう言ったかと思うとお盆にお冷やとおしぼりを載せお客さんの元へと向かう。
お客さんが腰を下ろしたのは先程わたしが座った大きな窓がある眺めの良い窓辺の二人掛けの席だった。
「あの席人気があるんですよ」
「窓から見える景色が素敵で落ち着きますもんね」
「へぇ~真歌ちゃんもあの席に座ったんだね。いいな~」
ミケが羨ましそうに言った。
「お客さんが帰ったらミケちゃんも座ってみたらいいよ」
なんて話をしていると、ムササビがポニーテールを揺らしながらこちらに戻ってきた。
「高男さん、懐かしい思い出の味定食をお願いしま~す」
ムササビはお客さんからオーダーを取ってきたようだ。
「おっ、懐かしい思い出の味定食だね」
高男さんは白い歯を見せてニッと笑う。
「懐かしい思い出の味定食かなんか良いネーミングですね。なんか気になる」
一体どんな料理なのかなと興味が湧く。
「お客さんが懐かしいなと思う料理をお出しするんですよ」
高男さんはフフッと笑い厨房の冷蔵庫を開けた。
「お客さんが懐かしいなと思う料理を出す? それってお客さんに聞いてきたんですか?」
わたしが疑問に思い首を傾げていると、ムササビが「高男さんは人の食べたいものを感じ取る能力があるみたいだよ」とムササビが言った。
「え!?」
それってめちゃくちゃ凄いよ。
高男さんに視線を向けると冷蔵庫から取り出した食材を厨房の作業台に並べている。それは、小松菜に油揚げそれから、卵、豚のバラ肉、薄力粉などだ。
果たして何を作ろうとしているのだろうか。
「何を作るのか楽しみだね」
「わたし食べたくなっちゃう」
「わたしもなんでもいいから食べたいにゃん」
わたし達三人がそう言い合っていると、高男さんが、「おいおい君達はさっき賄いのとろろ蕎麦を食べたばかりじゃないか」と呆れた声を出す。
「わたしは食べてないにゃん。お腹が空いたよ。棚の上からみんなの美味しそうに食べる姿を指をくわえて見ていたんだからね」
ミケが手をブンブン振り回しアピールする。
「そうだったね……」
「わたしもご飯食べたいにゃん。食べたいたら食べたいんだってばにゃん」
「おいおい、今はお客さんの料理を作らなければならないだよ。後で作ってあげるから大人しくしているんだぞ」
高男さんが優しい声で言ったけれどミケは我慢できないようだ。
「わたしは今ご飯が食べたいにゃん」
ミケの顔は泣きそうな表情になっている。
「もう、困った奴だな。じゃあ、今回は特別にミケの分も作ってあげるよ」
高男さんがそう言うとミケは「やった~嬉しいにゃん!」と言って高男さんに飛びつく。
「おい、ミケ離れてくれよ。料理ができないじゃないか」
「わかった~ご飯作ってもらわないと困るから離れてあげるにゃん」
ミケは高男さんから離れ「にゃははご飯のお時間だ」と言って満面の笑みを浮かべた。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
【完結】生贄娘と呪われ神の契約婚
乙原ゆん
キャラ文芸
生け贄として崖に身を投じた少女は、呪われし神の伴侶となる――。
二年前から不作が続く村のため、自ら志願し生け贄となった香世。
しかし、守り神の姿は言い伝えられているものとは違い、黒い子犬の姿だった。
生け贄など不要という子犬――白麗は、香世に、残念ながら今の自分に村を救う力はないと告げる。
それでも諦められない香世に、白麗は契約結婚を提案するが――。
これは、契約で神の妻となった香世が、亡き父に教わった薬草茶で夫となった神を救い、本当の意味で夫婦となる物語。
耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
汐埼ゆたか
キャラ文芸
准教授の藤波怜(ふじなみ れい)が一人静かに暮らす一軒家。
そこに迷い猫のように住み着いた女の子。
名前はミネ。
どこから来たのか分からない彼女は、“女性”と呼ぶにはあどけなく、“少女”と呼ぶには美しい
ゆるりと始まった二人暮らし。
クールなのに優しい怜と天然で素直なミネ。
そんな二人の間に、目には見えない特別な何かが、静かに、穏やかに降り積もっていくのだった。
*****
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
※他サイト掲載
お狐様とひと月ごはん 〜屋敷神のあやかしさんにお嫁入り?〜
織部ソマリ
キャラ文芸
『美詞(みこと)、あんた失業中だから暇でしょう? しばらく田舎のおばあちゃん家に行ってくれない?』
◆突然の母からの連絡は、亡き祖母のお願い事を果たす為だった。その願いとは『庭の祠のお狐様を、ひと月ご所望のごはんでもてなしてほしい』というもの。そして早速、山奥のお屋敷へ向かった美詞の前に現れたのは、真っ白い平安時代のような装束を着た――銀髪狐耳の男!?
◆彼の名は銀(しろがね)『家護りの妖狐』である彼は、十年に一度『世話人』から食事をいただき力を回復・補充させるのだという。今回の『世話人』は美詞。
しかし世話人は、百年に一度だけ『お狐様の嫁』となる習わしで、美詞はその百年目の世話人だった。嫁は望まないと言う銀だったが、どれだけ美味しい食事を作っても力が回復しない。逆に衰えるばかり。
そして美詞は決意する。ひと月の間だけの、期間限定の嫁入りを――。
◆三百年生きたお狐様と、妖狐見習いの子狐たち。それに竈神や台所用品の付喪神たちと、美味しいごはんを作って過ごす、賑やかで優しいひと月のお話。
◆『第3回キャラ文芸大賞』奨励賞をいただきました!ありがとうございました!

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~
ma-no
ファンタジー
神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。
その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。
世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。
そして何故かハンターになって、王様に即位!?
この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。
注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。
R指定は念の為です。
登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。
「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。
一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。
花好きカムイがもたらす『しあわせ』~サフォークの丘 スミレ・ガーデンの片隅で~
市來茉莉(茉莉恵)
キャラ文芸
【私にしか見えない彼は、アイヌの置き土産。急に店が繁盛していく】
父が経営している北国ガーデンカフェ。ガーデナーの舞は庭の手入れを担当しているが、いまにも閉店しそうな毎日……
ある日、黒髪が虹色に光るミステリアスな男性が森から現れる。なのに彼が見えるのは舞だけのよう? でも彼が遊びに来るたびに、不思議と店が繁盛していく
繁盛すればトラブルもつきもの。 庭で不思議なことが巻き起こる
この人は幽霊? 森の精霊? それとも……?
徐々にアイヌとカムイの真相へと近づいていきます
★第四回キャラ文芸大賞 奨励賞 いただきました★
※舞の仕事はガーデナー、札幌の公園『花のコタン』の園芸職人。
自立した人生を目指す日々。
ある日、父が突然、ガーデンカフェを経営すると言い出した。
男手ひとつで育ててくれた父を放っておけない舞は仕事を辞め、都市札幌から羊ばかりの士別市へ。父の店にあるメドウガーデンの手入れをすることになる。
※アイヌの叙事詩 神様の物語を伝えるカムイ・ユーカラの内容については、専門の書籍を参照にしている部分もあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる