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つくも神

三毛猫の正体

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「こ、こんにちは……」

  わたしは思わず挨拶を返した。だけど、三毛猫のぬいぐるみが喋るなんて信じられない。

「やっと目を覚ますことができたにゃん」

  三毛猫のぬいぐるみは肉球のある小さな手を口に当ててふわわぁーと大きなあくびをする。わたしは、その可愛らしい仕草に胸がキュンとする。しかもにゃんだって。って呑気にキュンとしている場合ではない。

「ど、どうして喋るの?  それに動いているよね」

「はいにゃん。わたし眠りから覚めたにゃん。お目覚めだにゃん」

  そう言ったかと思うと三毛猫のぬいぐるみは棚の上からぴょーんと飛び降り見事にスチャと着地した。

「わっ!  カッコいい着地だ~」

 わたしはパチパチと拍手をしてしまう。

「にゃはは、目覚めたとたん褒められたにゃん」

  三毛猫のぬいぐるみは得意げに胸を張った。それに二本足で立っている。

「あ、あ、あなたは何者かな?  ムササビちゃんの仲間かな?」

「う~ん、ムササビちゃんとちょっと違うかな。まあ、似たようなものだけどね。 ムササビちゃんは普通のあやかしでわたしはつくも神のあやかしだにゃん」

  三毛猫は首を橫に傾けながら言った。



  「はぁ?  つくも神って何かな?」

「つくも神は長い年月を経た物や道具に宿った精霊だにゃん」

「長い年月を経た物や道具に宿った精霊?」

  わたしは意味がわからず首を傾げる。

「簡単に言えばわたしはこの三毛猫のぬいぐるみ宿った精霊だにゃん」

  わたしは得意げな表情の三毛猫のぬいぐるみをじっと見て「それってそのぬいぐるみに取り憑いているの?」と尋ねた。

「ち、違うにゃ~ん!

    つくも神らしい三毛猫のぬいぐるみはぷりぷり怒りわたしを睨む。可愛らしいけれど、その顔はちょっと怖いよ。

「わたしは百年間大切にされていたこの三毛猫のぬいぐるみに宿ったつくも神なんだからにゃん」

「はぁ?  そうなんだね。どうもレトロなぬいぐるみだなと思っていたら百年間経ってるんだね」

「そうだよ。わたしレトロ可愛いでしょ?」

  三毛猫のぬいぐるみはえっへんと胸を張る。

「うん、可愛いね……それでどうして可愛らしいつくも神さんは今目覚めたのかな?」

「わかんにゃいけどあなたが起こしてくれたんだにゃん。お姉さんお名前は?  わたしはミケだよ」

  そう言ってミケはぺこっとおじきをした。やっぱりその姿はとても可愛らしい。

「わたしは花宮真歌です。ミケちゃんよろしくね」

  わたしもぺこりとおじきをした。

「真歌ちゃん起こしてくれてありがとうにゃん。さあ、はりきって暴れるにゃん」

「え!  暴れるって……」

  わたしはびっくりして身構えてしまう。

「うにゃ、この世界で楽しむってことだよ」

ミケは不思議そうに首を傾げきょとんとする。

「なんだ、暴れるなんて言うからびっくりしたよ」

  わたしはほっと胸を撫で下ろした。
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