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5 静香と三毛猫
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しおりを挟むニコニコ笑顔のミケたんの肉球のある可愛らしい手にはセミがのっかっていたのだ。
「うわぁ~!」
「ひぇ~!」
わたしと美紀香ちゃんはびっくりして大声で叫んだ。
「んにゃん? わたしのプレゼント嬉しくないの?」
ミケたんは首を横に傾げきょとん顔だ。その表情はめちゃくちゃ可愛らしいけれど、肉球のある手にはセミがのっかっている。
しかも動いているよ。
「セミなんていらないよ」
「気持ち悪いよ」
わたしと美紀香ちゃんがそう言うとミケたんの表情はみるみるうちに曇り鳴きそうになっている。
「あんまりだよ。せっかくのプレゼントにゃのに……」
ミケたんは肉球のある可愛らしい手のひらにのっかっているセミに目を落とし言った。
「気持ちは有り難いけど虫は苦手だよ」とわたしは言った。
「わたしも苦手だよ」
美紀香ちゃんも顔の前で手を合わせ謝った。
「そっかにゃん。だったら仕方ないや。セミを自然に返してくるにゃん」
ミケたんはそう言ってにゃんにゃんにゃんと庭に向かった。
「助かった」
「良かったね……」
わたしと美紀香ちゃんは顔を見合わせ胸を撫で下ろした。
セミなんて触れないよ。
「でもさ、わたし達ダンゴムシを丸めて遊んでいたよね」
美紀香ちゃんが縁側の庭の木にセミを返すミケたんを眺めながら言った。
「うん、そうだったね。なんか丸まって楽しいもんね。触れる虫と触れない虫がいるよね」
「そうそうカタツムリなんて触れないよ~」
「だよね。でも、カタツムリは虫じゃないらしいよ。あれは貝の仲間なんだって」
「へぇ! そうなんだ。知らなかった~」
美紀香ちゃんは目を丸くした。
「蝶々も綺麗なのにつまむと指に粉がつくから苦手だよ」
「わたしも苦手~初めて触った時うひゃってびっくりしたもん」
なんて話をしていると、まゆかおばあちゃんが「お菓子よ~お待たせ」と言ってやって来た。
「やった~お菓子だにゃ~ん」
ミケたんが庭から走って来た。食いしん坊な猫さんだ。
まゆかおばあちゃんは木製のテーブルにみたらし団子とジャスミンティーを並べた。
「わっ、団子、みたらし団子だにゃ~ん。わたしみたらし団子大好きにゃん」
ミケたんはそう言ったのとほぼ同時にみたらし団子に手を伸ばしていた。その姿はいつの間にか三毛猫から着物姿の女の子になっていた。
「う~ん、美味しいにゃん」
ミケたんは大きな口を開けてみたらし団子をぱくぱく食べている。
「ねえ、美紀香ちゃんあの子二百歳なんだよね?」
「うん、そうだったよね……絶対見えないよね?」
わたし達は幸せそうにみたらし団子を頬張るミケたんをじっと見ながら言った。
「ん? ことりちゃんに美紀香ちゃんどうしたにゃん? このみたらし団子美味しいにゃんよ。食べてみたらにゃん」
ミケたんはまるで自分の家かのように両手を大きく広げにゃんまりと笑った。
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