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5 静香と三毛猫

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 学校からの帰り道。

「美紀香聞いてくれよ。なんと! 琴家がハーフツインテールの髪の毛をほどいたんだぜ」

 結太はお腹を抱え笑いながら言った。

「えっ! 静香が? どうしてそうなるの?」

 美紀香ちゃんは不思議そうに首を傾げた。

「知らないけどウッキーって叫んでるなって思って見ていたんだよ。そしたらさ三毛猫のゴムほどいてたんだよ。なっ、ことり」

 結太はそう言ってわたしに話を振った。

 「あ、うん、そうなんだよ。静香の話を聞かないで窓の外をぼんやり見ていたら怒ったんだよね」

 わたしは顔を真っ赤に上気させ鬼のように怒った静香の顔を思い出しながら答えた。

「あはは、また、なんか嫌味でも言われたんでしょう? 静香ってどうしてことりちゃんに絡んでくるんだろうね?」

「うん、どうしてかな? ハート柄のソックスが被った事件があったけどしつこいよ~」

 静香に『ねえ、ことりちゃん』と言われるともう条件反射でビックとする。わたしのことが嫌いなら話しかけなければいいのになと思う。

「あれなんじゃないの? 本当は琴家の奴はことりにかまってもらいたいんじゃない? 友達になりたいとか?」

「へっ?」

 わたしは思わずマヌケな声を出してしまった。だって、静香がわたしにかまってほしいなんてね。

「だってさ、いつも琴家の方からことりに話しかけてるよな。嫌味ばかりだけどね」

 結太はニッと笑いながら言った。

「まあ、確かにそうだけど……」

 静香の憎たらしい顔を思い浮かべるとどう考えても友達になりたいとか信じられない。

「もしかしたらあまのじゃくな子なんじゃないのかな? 誰かとちょっと似ているんじゃな~い」

 美紀香ちゃんがそう言ってちらっと結太の顔を見た。

 「はぁ? 美紀香なんで俺の顔を見るんだよ」

 結太は不満げに口を尖らせた。

「さあね、結太も素直じゃないからじゃな~い」と美紀香ちゃんは言ってクスッと笑った。

 わたしは、確かに結太は幼い頃と比べると素直じゃなくなったなと思った。

「それでわたしは思っているより静香に嫌われていないのかな?」

「う~ん、恐らく」
「たぶん」

 美紀香ちゃんと結太は顎に人差し指を当ててうーんと唸った。



 この日はランドセルを自室に放り投げると美紀香ちゃんとまゆかおばあちゃんの家に行った。

 つい最近行ったばかりなのに雑草がぼうぼうに生えているまゆかおばあちゃんの家が見えてくると久しぶりだなと思った。

まゆかおばあちゃんは家の前でしゃがみ込み牛柄ちゃんの頭を撫でていた。

「まゆかおばあちゃ~ん、遊びに来たよ~」

「まゆかおばあちゃんこんにちは~」

 わたし達の声にまゆかおばあちゃんは顔を上げた。

「ことりちゃんに美紀香ちゃん、こんにちは。遊びに来てくれたのね。お菓子あるよ」

 まゆかおばあちゃんはそう言うと牛柄ちゃんをひょいと抱っこして家に入った。

「お邪魔しま~す」とわたし達は挨拶をして家に上がった。

 今日もどことなく懐かしく感じるまゆかおばあちゃんの家の匂いがした。

「あ、ことりちゃんに美紀香ちゃんだ。こんにちはにゃん」

 ミケたんが三毛猫の姿で肉球のある可愛い右前足を上げ挨拶をした。

「ミケたんこんにちは~」
「こんにちは、ミケたん」

 わたし達も挨拶をする。やっぱりミケたんは静香の髪ゴムにちょっと似ているなと思った。

「ことりちゃん、美紀香ちゃんプレゼントだにゃん」

 ミケたんがにっぱーと可愛い笑顔を浮かべた。

「プレゼントなんだろう?」とわたしと美紀香ちゃんはニコニコ笑顔だ。

 すると、ミケたんの可愛らしい肉球のある手には……。
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