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5 静香と三毛猫

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 翌日。この日もセミがミーンミーンとうるさく鳴いていた。

 美紀香ちゃんとまたねと手を振り合いわたしは五年一組の自分の席に座る。

 ランドセルからいつものように筆記用具を取り出し机の上に置く。

 顔を上げると取り巻きの女子に囲まれている静香と目が合った。ウゲッ。

 と思っていると静香はこちらに向かってツカツカと歩いてきた。わぁ。ウゲッ、ウゲッ。

「おはようことりちゃん」

 今日も静香はいつものように満開の薔薇の花のような美しい微笑みを浮かべわたしの席の前に立つ。

 本日の静香のヘアスタイルはハーフツインテールだ。ゴムは、今日も三毛猫だった。わたしは髪の毛は結わえずストレートヘアをまっすぐ下ろしている。

「おはよう静香ちゃん」と挨拶を返す。
「ねえ、昨日のアイス美味しかった?」

 何を言うのかなと思っていたらアイスのことだった。

「うん、美味しかったよ」
「ねえ、チョコモナカアイス美味しかったよ。ことりちゃんまさか静香の真似してチョコモナカアイスなんて食べていないよね?」

 ゲゲゲッ……。食べてしまった。

「あれ? ことりちゃん眉間に皺なんて寄せてどうしたの? その顔はまさかかな?」



 静香は意地悪い顔でクスッと笑う。

「そ、それは……」

 わたしはチョコモナカアイスなんて食べてないよと言いそうになった。

 だけど、昨日わたしはチョコモナカアイスを食べた。正直に答えたくないけれど、ウソをつくのも嫌だ。

 わたしがなんて答えようかなと悩んでいると静香が「食べたんでしょう?」と言った。

 くそーっ! お姉ちゃんがみかんバーを食べちゃうからだよと泣きそうになる。

「ねえ、ことりちゃんってばどっちなのかな?」

 静香の大きな目がわたしをじっと見る。

 わたしは悔しいけれど正直に「食べたよ」と答えた。

 すると、静香は勝ち誇ったように「やっぱり~また、静香の真似をしたんだね」と言った。

 馬鹿らしいから相手にしたくないのに。

「真似なんてしてないよ!」

 わたしは筆箱の中からシャープペンシルを取り出しながら声を荒げて答えてしまった。

「ことりちゃんて静香の真似ばっかりするんだから~」

 静香がわざとらしく大きな声を出したので取り巻きの女子達が、こっちを見た。

「ことりちゃんてっばまた静香ちゃんの真似したんだって~」

「素直にわたし達のグループに入れてくださいって言えばいいのにね」

 なんて口々に言ってわたしをチラチラ見て笑う。

 めちゃくちゃ馬鹿らしい。

 
「ねえ、ことりちゃんチョコモナカアイスめちゃくちゃ美味しかったよね? バニラアイスの中に入ってるチョコがパリッとしていて最高だね」

 静香は何が嬉しいのか満面の笑みを浮かべて言った。

 わたしはもう返事する気もおきないので机に頬杖つき窓の外を見た。

 外は葉っぱが太陽の光を浴びてキラキラ輝き綺麗だなと感じた。

「ちょっと、ことりちゃん聞いてるの?」

 静香が大きな声を出しわたしの机を両手でバンバンと叩いた。

 今日は髪を結わえていないのでほどけないやとわたしはぼんやり考えた。

「窓の外はキラキラ輝いて綺麗だなと思ったんだよ」と言ってわたしはにっこりと笑った。

「窓の外のことなんて聞いてないよ!」

 静香はわたしの机をもう一度両手でバンバンと叩いた。

 そして、静香はハーフツインテールに結わえた三毛猫のゴムを「ウッキー」と吠えたかと思うとほどいた。
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