上 下
11 / 40
4 いざ、雑草がぼうぼうに生えているおばあちゃんの家へ

1

しおりを挟む

 授業が終わり、ランドセルに教科書を詰め込みウキウキしていると、

「ことりちゃ~ん、帰ろう~」と隣のクラスの美紀香ちゃんがやって来た。

「うん、帰ろ~」

 わたしは元気よく返事をして教室を出る。

「雑草がぼうぼうに生えているおばあちゃん家《ち》の喋る猫が楽しみ~」

 美紀香ちゃんがわたしの耳に口を近づけて言った。

「ちょっと怖いけどね。でも、美紀香ちゃんがいるから心強いかな」

「うふふ、頼りにしてくれてありがとう~」

 美紀香ちゃんはニッと笑った。

「うん、これからも仲良くしてね」

 わたしは美紀香ちゃんの顔を見てにっこりと笑った。

 そんな話をしながらわたし達は下校した。

 一度家に帰りランドセルを二階の自室に放り投げすぐに玄関のドアを開け外に出る。お母さんは今日もパートで留守だ。

「さあ、行こうか」とすでにわたしの家の前で猫柄のトートバッグを肩にかけ待っている美紀香ちゃんに言った。

「うん、行こう~」

 美紀香ちゃんは元気よく返事をした。

 
  おばあちゃんの家は今日も雑草がぼうぼうに生えていた。

「猫ちゃんいるかな~?」、「いるといいね」と、わたしと美紀香ちゃんはおばあちゃんの家の前で言い合い辺りをキョロキョロと見回した。

 わたしは昨日、おばあちゃんの家から逃げ出したのでとちょっと気まずいかなと思いながら。

 その時、背後に気配を感じた。





 誰だろう? 猫かなと思い振り返ると。

 真っ白なランニングシャツに派手なオレンジ色のハーフパンツを穿き、牛柄ちゃんと似た猫柄のサンダルを履いているおばあちゃんが立っていた。今日ピンク色じゃない。色違いかな。

「お嬢ちゃんまた来たんだね」

 おばあちゃんはそう言ってうっしっしと笑った。

「あの、昨日は突然帰ってごめんなさい!」

 わたしはぺこりと頭を下げた。

「それはかまわないけど心配したよ」

「ちょっと用事が‥‥‥じゃなくて猫ちゃんが喋ってびっくりして逃げちゃいました」

 わたしは正直に言ってみた。

「あ、そのことかい。うちに通う猫ちゃんは話し好きなのよね」

 なんて言っておばあちゃんはうっしっしなんて笑ってる。

「えっ! おばあちゃん知っていたんですか?」

「そりゃうちに通ってる猫ちゃんだからね」

 おばあちゃんは今度はワッハハと豪快に笑った。

 わたしと美紀香ちゃんは顔を見合わせた。
 
「はぁ、そうなんですね。猫ちゃんが喋るなんて怖くありませんか? それに、その‥‥‥人間の女の子に化けたし‥‥‥」

 そうだった。あの三毛猫は喋るだけではなく人間の女の子に化けたことを思い出しまたちょっとゾクゾクする。

「あはは、三毛猫ちゃんは人間に化けるずっと生きている猫ちゃんらしいわよ」

 おばあちゃんはそう言ってうっしっしと笑った。

「ずっと生きている猫ーーー!」

 わたしと美紀香ちゃんはほぼ同時に叫んだ。

「あらあらそんなにびっくりしたのね。こんなところで立ち話もあれだから中に入ってね。あ、お友達のお嬢ちゃんもどうぞ~」

 おばあちゃんはそう言ってにんまりと笑ったかと思うとさっさと玄関の引き戸を開け家の中へ入ってしまった。

 わたしと美紀香ちゃんは顔を見合わせ、「行こうか」と言い合った。

 そして、わたし達は玄関で「お邪魔しま~す」と声を揃えて挨拶をし靴を脱ぎ家に上がった。

 昨日は縁側から入ったのでまた違う感覚だ。田舎のおばあちゃんの家の匂いと少し似ていた。

 それはそうとおばあちゃんの家の中は物であふれかえっている。

 先ず、玄関に何人分なのかな? と思ってしまう靴やサンダルに園芸用品、廊下には新聞紙の束やペットボトルやタッパ類が所狭しと置かれていた。

「おばあちゃんの家散らかってるね」

 美紀香ちゃんがわたしの耳元に口を近づけて言った。

「うん、物がいっぱいだね」とわたしも小声で返事をする。

 まあ、わたしもお母さんに片づけなさいと怒られているので人のことは言えないけれど、それにしても同じ物がたくさんあるなと思って眺めた。

 おばあちゃんは掃除が苦手というより物を捨てたくないのかなと思った。

「お嬢ちゃん達~麦茶とお菓子よ」

 おばあちゃんの声が部屋の奥から聞こえてきた。

 わたし達は「は~い」と声を揃えて返事をした。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おかたづけこびとのミサちゃん

みのる
児童書・童話
とあるお片付けの大好きなこびとさんのお話です。

氷鬼司のあやかし退治

桜桃-サクランボ-
児童書・童話
 日々、あやかしに追いかけられてしまう女子中学生、神崎詩織(かんざきしおり)。  氷鬼家の跡取りであり、天才と周りが認めているほどの実力がある男子中学生の氷鬼司(ひょうきつかさ)は、まだ、詩織が小さかった頃、あやかしに追いかけられていた時、顔に狐の面をつけ助けた。  これからは僕が君を守るよと、その時に約束する。  二人は一年くらいで別れることになってしまったが、二人が中学生になり再開。だが、詩織は自身を助けてくれた男の子が司とは知らない。  それでも、司はあやかしに追いかけられ続けている詩織を守る。  そんな時、カラス天狗が現れ、二人は命の危険にさらされてしまった。  狐面を付けた司を見た詩織は、過去の男の子の面影と重なる。  過去の約束は、二人をつなぎ止める素敵な約束。この約束が果たされた時、二人の想いはきっとつながる。  一人ぼっちだった詩織と、他人に興味なく冷たいと言われている司が繰り広げる、和風現代ファンタジーここに開幕!!

クール王子はワケアリいとこ

緋村燐
児童書・童話
おじさんが再婚した事で新しく出来たいとこ。 同じ中学に入学してきた上に、引っ越し終わるまでうちに住む!? 学校ではクール王子なんて呼ばれている皓也。 でも彼には秘密があって……。 オオカミに変身!? オオカミ人間!? え? じゃなくて吸血鬼!? 気になるいとこは、ミステリアスでもふもふなヴァンパイアでした。 第15回絵本・児童書大賞にて奨励賞を頂きました。 野いちご様 ベリーズカフェ様 魔法のiらんど様 エブリスタ様 にも掲載しています。

とあるぬいぐるみのいきかた

みのる
児童書・童話
どっかで聞いたような(?)ぬいぐるみのあゆみです。

なんでおれとあそんでくれないの?

みのる
児童書・童話
斗真くんにはお兄ちゃんと、お兄ちゃんと同い年のいとこが2人おりました。 ひとりだけ歳の違う斗真くんは、お兄ちゃん達から何故か何をするにも『おじゃまむし扱い』。

どうかわたしのお兄ちゃんを生き返らせて

なかじまあゆこ
児童書・童話
最悪な結末が……。 わたしの大好きなお兄ちゃんは、もうこの世にいない。 大好きだった死んだお兄ちゃんに戻ってきてもらいたくて、史砂(ふみさ)は展望台の下で毎日、「お兄ちゃんが戻ってきますように」と祈っている。そんな時、真っ白な人影を見た史砂。 それから暫くすると史砂の耳に悪魔の囁き声が聞こえてきて「お前のお兄ちゃんを生き返らせてほしいのであれば友達を犠牲にしろ」と言うのだけど。史砂は戸惑いを隠せない。 黒いカラスが史砂を襲う。その理由は? 本当は何が隠されているのかもしれない。どんどん迫り来る恐怖。そして、涙……。 最後まで読んでもらえると分かる内容になっています。どんでん返しがあるかもしれないです。 兄妹愛のホラーヒューマンそしてカラスが恐ろしい恐怖です。よろしくお願いします(^-^)/

化け猫ミッケと黒い天使

ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。 そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。 彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。 次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。 そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。

図書室はアヤカシ討伐司令室! 〜黒鎌鼬の呪唄〜

yolu
児童書・童話
凌(りょう)が住む帝天(だいてん)町には、古くからの言い伝えがある。 『黄昏刻のつむじ風に巻かれると呪われる』──── 小学6年の凌にとって、中学2年の兄・新(あらた)はかっこいいヒーロー。 凌は霊感が強いことで、幽霊がはっきり見えてしまう。 そのたびに涙が滲んで足がすくむのに、兄は勇敢に守ってくれるからだ。 そんな兄と野球観戦した帰り道、噂のつむじ風が2人を覆う。 ただの噂と思っていたのに、風は兄の右足に黒い手となって絡みついた。 言い伝えを調べると、それは1週間後に死ぬ呪い── 凌は兄を救うべく、図書室の司書の先生から教わったおまじないで、鬼を召喚! 見た目は同い年の少年だが、年齢は自称170歳だという。 彼とのちぐはぐな学校生活を送りながら、呪いの正体を調べていると、同じクラスの蜜花(みつか)の姉・百合花(ゆりか)にも呪いにかかり…… 凌と、鬼の冴鬼、そして密花の、年齢差158歳の3人で呪いに立ち向かう──!

処理中です...