わたし雑草がぼうぼうと生えているおばあちゃんの家にお邪魔します!(猫と不思議な生き物が住みついています)

なかじまあゆこ

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2 雑草がぼうぼうの家へようこそ!

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 急いで朝食を食べ、ランドセルを背負い「行ってきまーす」と元気よく挨拶をして玄関の扉を開け外に出る。

「おはようことりちゃん」

 美紀香ちゃんが隣の家から出てきてわたしに手を振る。

「おはよう、美紀香ちゃん」

 わたしも笑顔で手を振る。いつもと同じ朝だ。

「今日の給食何かな?」
「あ、美紀香ちゃんってばまた朝から給食の話だ~」
「だって、学校へ行く楽しみは給食なんだも~ん」

 美紀香ちゃんはにんまりと笑う。

「あはは、美紀香ちゃんらしいね。朝ご飯食べたばかりなのにね」

「朝はね卵ふりかけご飯と納豆を食べたよ」

「わっ、納豆いいな。わたしはトーストと目玉焼きだよ~」

 なんていつもの会話をしながら登校する。

 その時。

「あ、ことりがちゅんちゅんと、大食い娘美紀香だ。おはよう~じゃあな」

 結太が朝の挨拶をして後ろからわたし達を追い越す。

 「あ、ことりがちゅんちゅんじゃな~い!」
「大食い娘じゃな~い!」

 わたしと美紀香ちゃんは口々に結太の黒いランドセルを背負う背中に向かって文句を言う。

「あはは、本当のことだろう。じゃあな~」

 結太は振り向かず走り出した。

「結太の奴相変わらず憎たらしいね」
「ほんとにね。まだ遅刻しないのに走ってるしさ」

 わたし達は結太の背中に向かってあかんべーをした。

 その時、三毛猫がわたし達の目の前を横切った。


 わたしはドキッとした。三毛猫は大好きなのにあの喋り人間の姿になる三毛猫を思い出してしまう。

 と、言うか今、わたし達の目の前を横切った三毛猫は正にあの三毛猫だよ。

「ことりちゃんどうしたの?」

「えっ?」

 美紀香ちゃんはわたしより一歩先を歩き振り返りながら「ことりちゃんなんか固まってるよ。どうしたの? 学校に行かないの?」と言った。

「えっと三毛猫が‥‥‥」
「三毛猫? 行ってしまったね」
「うん」

 わたしは美紀香ちゃんに昨日の出来事を話そうかどうしようか迷った。だって、三毛猫が喋ったやましてや人間の女の子の姿になったなんて言ったら笑われそうなんだもん。

 いやいや、美紀香ちゃんは人のことを笑ったり馬鹿にする子じゃない。それはわかっている。

 でも‥‥‥。

「ねえ、ことりちゃんってばさっきからブツブツ喋っているけど何を言ってるの?」

 美紀香ちゃんは不思議そうに首を傾げわたしをじっと見ている。

「あ、えっと、例えばね三毛猫が人間の言葉を話すと言ったら美紀香ちゃんは笑う? 信じられない?」

 わたしは思いきって聞いてみた。

 すると、美紀香ちゃんは目を大きく見開いた。びっくりしているようだ。

「あ、あはは、やっぱり信じられないしあり得ないよね?」

 わたしは、ほっぺたをぽりぽり掻きながら言った。

「う、うん。びっくりしたよ。だけど、三毛猫と話せたら楽しいなって思うよ」

 美紀香ちゃんはぴかぴか輝く太陽みたいな笑みを浮かべた。



 わたしが思っていた返事とちょっと違っていた。馬鹿にはしないと思っていたけれど、きっと、『もう、ことりちゃんってば変なこと言わないでよ~』と言われると思っていた。

 だけど、目の前にいる美紀香ちゃんは、「猫ちゃんと話ができたら幸せだろうな?」と言って目をキラキラ輝かせているんだもん。

「美紀香ちゃん! 今日の放課後雑草がぼうぼうに生えているおばあちゃんの家に行こうよ」

 わたしは思わずそう言ってしまった。

 喋る三毛猫のことをめちゃくちゃ怖がっていたのにわたしは単純だ。美紀香ちゃんが喋る猫に興味を持っているとわかった途端これだもんね。

「えっ! おばあちゃんの家にどうして?」

 美紀香ちゃんは不思議そうに首を横に傾げた。

「それはそのおばあちゃんと仲良くなったんだよ。それと‥‥‥、人間の言葉を話すかもしれない猫がいるんだよ」

 わたしは、今度こそ馬鹿にされないかと心配になりながらチラリと美紀香ちゃんの顔を見た。

 だけど、美紀香ちゃんは「う~ん、ちょっと信じられないけど気になる~行こう!」と言ってにっこりと笑った。

「じゃあ、決定ね!」

 美紀香ちゃんの気が変わらないうちに決定しておかないとね。

 今日の給食と放課後雑草がぼうぼうに生えているおばあちゃんの家に行くことが楽しみだ。

 えへへ、朝から放課後が楽しみだ。
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