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しおりを挟む最近のわたしには気になる家がある。それは雑草がぼうぼうと生えている家だ。もちろん雑草が好きだなんてことはなくて、その家に猫が通っている姿をよく見かけるからなんだ。
わたしは、小鳥浜ことり。猫が大好きな小学五年生。十一歳。
名字は小鳥浜なんだけど、名前にもことりが付くなんてなんだかちょっと恥ずかしいよと両親に文句を言ったことがある。
すると、お母さんは、
「だって、ことりちゃんって可愛らしい名前でしょう。それにわたし小学生の頃セキセイインコを飼っていたのよ~可愛かったわよ」
なんて言ってお母さんは口元に手を当ててうふふと笑う。
わたしはセキセイインコですか? お母さん‥‥‥。
お父さんはお母さんの隣でニコニコと笑っている。
「わたしセキセイインコじゃないもん。代わりにしないでよ」
わたしは頬をぷくっと膨らませ抗議をする。
なのにお父さんは「いいじゃないかことりって可愛いじゃないか」と言って笑うんだから嫌になる。
「うふふ、ことりちゃんって可愛らしい名前なんだから拗ねないのよ~」
お母さんはそう言ってうふふと可愛らしく笑うけれど、わたしはこの『ことり』という名前でちょっと困っているのだ。
だって、それは。
今日は梅雨の合間の晴れ間から覗いている太陽の日差しがキラキラと強い。もうすぐ訪れる夏を感じさせる。
わたしが夏よ早く来いと思いながら空を見上げていると、
「ピヨピヨおはよう~」と声をかけられた。
ピヨピヨなんて呼ばれて誰が返事なんてするもんか。
「お~い、小鳥がちゅんちゅん、ちんたら歩いてると遅刻するぞ」
そう言いながらわたしを横から追いこしたのは町田結太だ。コイツはわたしの家の左隣に住んでいる幼なじみだ。
昔はわたしの後を金魚のフンみたいにくっついて歩いていたクセに最近やたらと憎たらしくて生意気なんだ。
可愛らしい奴だったのに五年生になってからだんだん憎たらしくなってきた。
「小鳥がちゅんちゅんってわたしはスズメじゃな~い! ヒヨコでもな~い!」
わたしは頬を膨らませ結太を睨んだ。って反応してしまったよ。
「え? 違うのか。朝、ベランダでちゅんちゅん鳴いてるスズメと間違えたよ。じゃあな、ことり俺は先に行くよ」
結太は手を振りさっさと行ってしまった。
「ふん、何が俺だよ。四年生までは僕って言ってたくせに~」
わたしが地団駄を踏んでいたその時、
「ことりちゃ~ん、おはよう~また、結太にピヨピヨって言われていたの?」
その声に振り返ると、いつもぽわぽわしていて可愛らしい美紀香ちゃんが立っていた。今日もツインテールがよく似合っている。
「おはよう美紀香ちゃん。うん、結太の奴むかつくんだよ~」
わたしは頬をぷくっと膨らませた。もう結太の顔を思い出すだけで腹が立つ。
「あはは、またか~結太のことなんか気にしないで給食のことでも考えようよ」
美紀香ちゃんはくふふと口元に両手を当てて笑った。
「は? 朝から給食のことなんて考えるの~さっき朝ごはん食べたばっかだよ」
まったく美紀香ちゃんは食い意地が張っているんだから。
だけど、そんな美紀香ちゃんにわたしは癒される。紫美紀香はわたしの家の右隣に住む大好きな幼なじみだ。
だけど、この子もちょっと難があるんだよね。どんな難があるのかはまた後ほどね。
「だって、嫌なことをグチグチ考えるより楽しいことを考えたほうが人生楽しいよ」
「うん、たしかにそうだよね」
「今日の給食カレーだったらいいな」
「わたしは唐揚げがいいな」
「じゃあ、唐揚げカレーだったら最高だね」
美紀香ちゃんはそう言ってにんまりと笑った。
「うん、それだったらめちゃくちゃ嬉しいよ」
なんていつもの会話をしながらわたし達は通学路を歩く。
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