笑顔になれる沖縄料理が食べたくて

なかじまあゆこ

文字の大きさ
上 下
110 / 111

大好きな沖縄料理を食べて笑顔になろう

しおりを挟む

  おばぁのソーミンチャンプルーは豚肉の旨みがじわじわと口の中に広がりそして、野菜がシャキシャキしていて美味しい。

  美味しくて幸せで笑みがこぼれる。

「やっぱり愛可さんのご飯を食べている時の笑顔は素晴らしいですね」

  その声に振り向くとふにゃふにゃふにゃーと緩み切った表情で美川さんはソーミンチャンプルーを食べていた。

「美川さんこそ幸せそうな笑顔ですよ」

「愛可さんのおばぁが作るソーミンチャンプルーは美味しいですからね」

「そんなに褒めてもらうとおばぁが泣いて喜びますよ」

「でも、本当に美味しいですからね。あ、そうだ、ソーミンチャンプルーを食べ終えたら俺のサーターアンダギーを食べさせてあげますよ」

「えっ!  また、サーターアンダギーですか?」

「何か問題でもありますか?」

  美川さんがギロリとわたしを睨む。

「……いえ問題はありません」

「それは良かった。ごちそうさまでした。美味しかった。さあ、サーターアンダギーが愛可さんときらりちゃんを待っているぞ。俺達は仲間ですからね」

  美川さんは立ち上がり、割り箸と食べ終えたフードパックをゴミ箱に捨てた。

  きらりちゃんは、「ソーミンチャンプルーの次はサーターアンダギーだよ」と喜んでいる。


  そして、わたし達は『幸せの運び屋』へと向かう。



「美川さん待ってください~」

「美川さん、待ってよ~」

  わたしときらりちゃんは小走りで足の速い美川さんを追いかける。

「はい?  どうしましたか?  愛可さんもきらりちゃんも歩くの遅いですね。ってか走っていますね」

  美川さんは振り返りながら言った。

「わたしの足が遅いのではなくて美川さんの歩く速度が速いんですよ」

「そうだよ、美川さんの歩く速度が速いんだよ」

  確か前にもこんなことがあったなと思い出した。

  きらりちゃんのお母さんである斎川さんが経営する『元気になれる食堂』に初めて行ったあの日も美川さんの背中をゼーゼーハーハーと息を切らしながら追いかけた。

  その『元気になれる食堂』で今隣を歩くきらりちゃんとも出会えた。中身の濃い数ヶ月だった。おばぁとお母さんとも再び会えたし……。

「愛可どうしたの?」

  きらりちゃんがわたしの顔を見た。

「ううん、きらりちゃんや美川さんと会った日のことを思い出していたんだ」

  わたしは、きらりちゃんの顔を見返し答えた。

「あの日の愛可は嫌なお姉さんだったね」

「それはこっちのセリフだよ~きらりちゃんこそ憎たらしい女の子だったんだから」

  わたし達は、なぬぬと睨み合う。

  美川さんはくるりとこちらに振り返り、「愛可さんときらりちゃんは良いコンビですよ」と言って笑顔になった。

「あ、美川さんが笑った~」

「わっ、美川さんが笑っているよ」

「お、俺が笑うのはそんなに面白いかな~」

  唇を尖らす美川さんを見てわたしときらりちゃんは笑った。

「笑顔は幸せを運んで来ますよ」

「そうだよ、美川さんは幸せの運び屋でしょ」

  美味しいものをたくさん食べて笑顔になろう。時には泣いてしまうこともあるかもしれないけれど、美味しいご飯を食べるとまた笑顔になれるはず。

「美川さんのサーターアンダギーと紫色の割烹着が楽しみですよ」

  笑顔になれる沖縄料理を食べましょう。

「完」

  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

一会のためによきことを

平蕾知初雪
ライト文芸
――8月、僕はずっと大好きだった〇〇ちゃんのお葬式に参列しました。 初恋の相手「〇〇ちゃん」が亡くなってからの約1年を書き連ねました。〇〇ちゃんにまつわる思い出と、最近知ったこと、もやもやすること、そして遺された僕・かめぱんと〇〇ちゃんが大好きだった人々のその後など。 〇〇ちゃんの死をきっかけに変わった人間関係、今〇〇ちゃんに想うこと、そして大切な人の死にどう向き合うべきか迷いまくる様子まで、恥ずかしいことも情けないことも全部書いて残しました。 ※今作はエッセイブログ風フィクションとなります。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

しんおに。~新説・鬼遊戯~

幹谷セイ
ライト文芸
オカルト好きな女子高生・談子の通う学校には、鬼が封印されているという伝説がある。 その謎を解き明かそうと、幼女の姿をした謎の生徒会長・綺羅姫と行動を共にするうちに、本当に封印された鬼を蘇らせてしまった。 学校は結界によって閉鎖され、中に閉じ込められた生徒たちは次々と魂を食われてゆく。 唯一、鬼を再び封印できる可能性を秘めた談子は、鬼を監視するために選び抜かれた、特殊能力を持つ生徒会役員たちと力を合わせてリアル鬼ごっこを繰り広げる!

キスで終わる物語

阿波野治
ライト文芸
国木田陽奈子はふとした偶然から、裕福な家庭の少女・小柳真綾と知り合い、小柳家でメイドとして住み込みで働くことになった。厳格なメイド長の琴音や、無口で無愛想なルームメイトの華菜などに囲まれて、戸惑いながらも新生活を送る。そんなある日、陽奈子は何者かから不可解な悪意を向けられ、その人物との対決を余儀なくされる。

希望が丘駅前商店街 in 『居酒屋とうてつ』とその周辺の人々

饕餮
ライト文芸
ここは東京郊外松平市にある商店街。 国会議員の重光幸太郎先生の地元である。 そんな商店街にある、『居酒屋とうてつ』やその周辺で繰り広げられる、一話完結型の面白おかしな商店街住人たちのひとこまです。 ★このお話は、鏡野ゆう様のお話 『政治家の嫁は秘書様』https://www.alphapolis.co.jp/novel/210140744/354151981 に出てくる重光先生の地元の商店街のお話です。当然の事ながら、鏡野ゆう様には許可をいただいております。他の住人に関してもそれぞれ許可をいただいてから書いています。 ★他にコラボしている作品 ・『桃と料理人』http://ncode.syosetu.com/n9554cb/ ・『青いヤツと特別国家公務員 - 希望が丘駅前商店街 -』http://ncode.syosetu.com/n5361cb/ ・『希望が丘駅前商店街~透明人間の憂鬱~』https://www.alphapolis.co.jp/novel/265100205/427152271 ・『希望が丘駅前商店街 ―姉さん。篠宮酒店は、今日も平常運転です。―』https://www.alphapolis.co.jp/novel/172101828/491152376 ・『日々是好日、希望が丘駅前商店街-神神飯店エソ、オソオセヨ(にいらっしゃいませ)』https://www.alphapolis.co.jp/novel/177101198/505152232 ・『希望が丘駅前商店街~看板娘は招き猫?喫茶トムトム元気に開店中~』https://ncode.syosetu.com/n7423cb/ ・『Blue Mallowへようこそ~希望が丘駅前商店街』https://ncode.syosetu.com/n2519cc/

Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説

宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。 美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!! 【2022/6/11完結】  その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。  そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。 「制覇、今日は五時からだから。来てね」  隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。  担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。 ◇ こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく…… ――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――

"わたし"が死んで、"私"が生まれた日。

青花美来
ライト文芸
目が覚めたら、病院のベッドの上だった。 大怪我を負っていた私は、その時全ての記憶を失っていた。 私はどうしてこんな怪我をしているのだろう。 私は一体、どんな人生を歩んできたのだろう。 忘れたままなんて、怖いから。 それがどんなに辛い記憶だったとしても、全てを思い出したい。 第5回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。ありがとうございました。

処理中です...