88 / 111
美川さんとおばさん
しおりを挟む紫色のスーツ姿の美川さんときらりちゃんがバチバチ睨み合い火花を散らしているそんな姿がなんだか微笑ましくてわたしは、クスクスと笑いながら眺めた。
「あら、よしお君いらっしゃい。お嬢さんと喧嘩なんてしてるのね」
おばさんはクスクスと笑いながら美川さんを見ている。
「あ、森浜さん、こんにちは」
この二人は知り合いだったの? ってしかも美川さんのことをよしお君と呼んでいるではないか。一体どういうことなのかなとわたしは首を傾げた。
「よしお君もサーターアンダギーを食べる?」
おばさんは、サーターアンダギーを盛ったカゴを差し出した。
「おっ、俺の大好物なサーターアンダギーじゃないですか。もちろんいただきますよ」
美川さんはそう言ってサーターアンダギーの盛られているカゴに手を伸ばした。
そして、手に取ったサーターアンダギーを食べた美川さんは、「美味しい。これはめちゃくちゃ美味しいですよ~」と言った。
その顔はふにゃふにゃふにゃーと緩み切った。
「うふふ、そんなに喜んでもらえると嬉しいわよ」
おばさんは嬉しそうに頬を緩めた。
「あの……美川さんとおばさんは知り合い何ですか?」
「そうですよ。俺が旅行で座間味島に来た時にこの森浜食堂さんと出会って料理がめちゃくちゃ美味しくて何回も来てるうちに森浜のおばさんと仲良くなったんですよ」
美川さんはそう言いながら三個目のサーターアンダギーを口に運びゆるーりゆるーりと頬を緩めた。
「そうだったんですか」
「うふふ、そうなのよ。よしお君は普段とっても怖い顔をしているのにご飯を食べるとふにゃふにゃ~と頬が緩んで、そのギャップが可笑しくてわたしが声をかけたのよ」
おばさんは、口元に手を当ててうふふと笑った。
「あはは、とっても怖い顔は余計ですよ」
美川さんは四個目のサーターアンダギーに手を伸ばした。そして、美川さんのその顔はふにゃふにゃふにゃーと緩んだのだった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
パパー!紳士服売り場にいた家族の男性は夫だった…子供を抱きかかえて幸せそう…なら、こちらも幸せになりましょう
白崎アイド
大衆娯楽
夫のシャツを買いに紳士服売り場で買い物をしていた私。
ネクタイも揃えてあげようと売り場へと向かえば、仲良く買い物をする男女の姿があった。
微笑ましく思うその姿を見ていると、振り向いた男性は夫だった…
魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は世界に1人のトリプルジョブに至る~
ぐうのすけ
ファンタジー
赤目達也(アカメタツヤ)は少女を育てる為に冒険者を辞めた。
そして時が流れ少女が高校の寮に住む事になり冒険者に復帰した。
30代になった達也は更なる力を手に入れておりバズり散らかす。
カクヨムで先行投稿中
タイトル名が少し違います。
魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は黒魔法と白魔法を覚え世界にただ1人のトリプルジョブに至る~
https://kakuyomu.jp/works/16818093076031328255
婚活のサラリーマン
NAOTA
ライト文芸
気がつけば36才になっていた私は、婚活を始めた。
アラフォーサラリーマンが、なかなかうまくいかない婚活に奔走する、少しだけハードボイルドなストーリー。
(この小説はカクヨム様、ノベルデイズ様にも投稿させていただいています。)
ゼフィルス、結婚は嫌よ
多谷昇太
ライト文芸
あるエッセーで「わたしは結婚しない。男に家庭に社会に(女とはかくあるべしと決めつける社会に)縛られ、決めつけられたくはない。わたしは100%、自分自身を生き抜く。生き抜いてみせる。これだけのことをこうしてエッセーで云ったからには、それだけの‘覚悟’がある。わ、た、し、は、結婚しない!」というちょっと眉に唾つけて見なければ信じられないほどの、すさまじい覚悟を述べた方がおられました。ご自分の写真付きでしたが、その写真を拝見してなおびっくり。髪の毛を長く伸ばした(お世辞ではなく)超美人だったからです。年令は28くらいだったかと記憶していますが定かではありません。1990年前後のことでした。これに感心のあまり書こうと思い立ったのがこの拙著「ぜフィルス、結婚は嫌よ」でした。ゼフィルスとは彼の巨匠手治虫先生の作品「ゼフィルス」から名をお借りしたのです。御作品では(男への)復讐の女神ゼフィルスということでしたが。とにかく、この端倪すべかざる女性をエッセーで知って思い立った作品です。先に一度(ラジオ)シナリオにしてNHKの公募に応募したのですが力たらずに入選しませんでした。今回20年近くを経てあらためて小説にしてみようと思い立ちました。主人公の名前は惑香、エッセーの主のようにできるだけ美しいイメージを出そうとして考えた名前です。作中にも記しましたが「みずからの美しさにと惑う」ほどの美貌の主ということです。その美しさは単に外形のみならず…? どうぞ作品内でご確認ください。手前味噌ですがラストは(たぶん)感動的だと思いますのでぜひどうぞ。
百々五十六の小問集合
百々 五十六
ライト文芸
不定期に短編を上げるよ
ランキング頑張りたい!!!
作品内で、章分けが必要ないような作品は全て、ここに入れていきます。
毎日投稿頑張るのでぜひぜひ、いいね、しおり、お気に入り登録、よろしくお願いします。
一葉恋慕・明治編
多谷昇太
ライト文芸
一葉恋慕(大森での邂逅編)」の続きです。こんどは私が明治時代にワープして来ました。一葉さんや母おたきさん、妹邦子さんがどう暮らしてらっしゃるのか…のぞき根性で拝見しに行って来ました…などと、冗談ですが、とにかく一葉女史の本懐に迫りたくて女史の往時を描いてみようと思ったのです。こんどは前回の「私」こと車上生活者は登場しませんのでご安心を。ただ、このシリーズのラストのラストに、思わぬ形で「私」と大森での邂逅を描いては見せますので、その折り、その有りさまをどうかご確認なさってください。では明治の世をお楽しみください。著者多谷昇太より。
隣の古道具屋さん
雪那 由多
ライト文芸
祖父から受け継いだ喫茶店・渡り鳥の隣には佐倉古道具店がある。
幼馴染の香月は日々古道具の修復に励み、俺、渡瀬朔夜は従妹であり、この喫茶店のオーナーでもある七緒と一緒に古くからの常連しか立ち寄らない喫茶店を切り盛りしている。
そんな隣の古道具店では時々不思議な古道具が舞い込んでくる。
修行の身の香月と共にそんな不思議を目の当たりにしながらも一つ一つ壊れた古道具を修復するように不思議と向き合う少し不思議な日常の出来事。
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる