笑顔になれる沖縄料理が食べたくて

なかじまあゆこ

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おばぁとじゃんけん

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  そして、今。わたしとおばぁは睨み合っている。そうなのだ。お母さんにどちらが電話をかけるかの真剣勝負なのだ。

「さあさあ。ジャンケン対決のお時間がやってきました。審判兼司会のきらりです」

  きらりちゃんはゴーヤをマイク代わりにして司会をしている。

「おばぁ、わたし負けないわよ」

「うふふ、愛可ちゃん。おばぁはねジャンケン強いんだよ」

  わたしとおばぁは火花を散らし合う。いい大人が何をしているのだろうかと思うけれどジャンケン真剣勝負なのだ。

「あはは、両者睨み合っていま~す!  さあ、勝つのは果たしておばぁか愛可なのか~」

  きらりちゃんはゴーヤを片手に楽しんでいるようだ。

  さあ、真剣勝負のジャンケン対決です。わたし勝つからね。

「さあ、わたしが合図を出すからジャンケンをするんだよ」

 と言ってゴーヤを振り回すきらりちゃんに、わたしとおばぁは、「は~い!」、「了解です」と返事をした。

  なんだかドキドキしてきた。だって、このジャンケンに負けるとお母さんに電話をしなくてはならないのだから。

「さあ、いっきま~す!  最初はグー」ときらりちゃんが発声した。

  わたしとおばぁはグーを同時に出した。

「ではでは、ジャンケンぽん!」

  きらりちゃんの「ぽん」の発声にわたし達は……。

  さあ、わたしの運命は果たしてどうなるのかな。

  わたしは、グーを出し、おばぁはパーを出した。

   って、ことはわたしの負けではないか……。

「……そ、そんな~」

   わたしは、がっかりして膝をついた。

「は~い、おばぁの勝ち~ぶ~ぶ~っ愛可の負けで~す!」

  きらりちゃんはゴーヤをマイクにしてジャンケンの結果発表をした。

「あんまりだよね」

「さあ、愛可、電話をかけるんだよ」

  がっくりして膝をつくわたしにきらりちゃんは容赦なく言い放つ。

「……分かったよ」


   わたしは渋々鞄からスマホを取り出した。

「愛可ってば自分のスマホをじっと眺めてどうしたのかな?」

  きらりちゃんがからかうような口調で言った。

「もう、きらりちゃんって意地悪だね」

  わたしは、ゴウヤをブンブン振り回しているきらりちゃんをギロリと睨んだ。

「わっ、愛可のその目怖いよ~早く電話をかけるんだよ」

「きらりちゃんが意地悪だからでしょ。分かったよ。かけるよ」

「頑張れ、愛可~負けるな愛可」

  きらりちゃんはスマホをブンブン振り回して応援してくれる。あんまり嬉しくないけれど……。

「愛可ちゃん、頑張ってね」

  その声に振り返るとおばぁがにっこりと微笑みを浮かべていた。

「が、頑張りま~す」

  わたしは、スマホの電話のマークをタップして、電話帳を開いた。そして、電話をかける相手の名前を探した。

  久しぶりに見る『お母さん』の文字にドキドキした。スマホを持つ手がほんの少し震えた。

  わたしは、『お母さん』と表示されている名前をタップした。
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