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きらりちゃんに応援されて
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「そうなんだね」
「うん、愛可のおかげでもあるんだよ」
きらりちゃんはマンゴーにフォークを突き刺し食べた。
美味しそうに食べているきらりちゃんの無邪気な笑顔を眺めていると可愛らしくて癒された。
「わたしもお母さんとちゃんと話をしなきゃね」
わたしのお母さんは斎川さんとは違い優しい人ではなかった。けれど、あんな人でもわたしをこの世に産んでくれたたった一人のお母さんなのだから。
「愛可、頑張るんだよ」
きらりちゃんは花切りのマンゴーをフォークですくいパクパク食べた。
「うん、頑張る」
わたしはそう答え花形に切られたマンゴーをフォークですくい口に運んだ。柔らかくてまろやかなマンゴーは夏を詰め込んだ沖縄の夏の味がした。
お母さんと並んでマンゴーを食べたこともあるな。わたしは数少ないお母さんの笑顔をぼんやりと思い出していた。
『愛可、このマンゴー甘くてジューシーだね』
お母さんはそう言って笑った。
わたしも『うん、美味しいね。ほっぺたが落っこちそうだよ』
なんて言って笑い返したのだっただろうか。
またある時は、『このゴーヤチャンプルー美味しいね。このゴーヤのゴリゴリとした食感がまた良いね』
お母さんはゴーヤチャンプルーをぱくぱく食べてにっこりと微笑みを浮かべた。
懐かしいあの日をわたしは思い出していた。そして、あることに気がついた。
「ねえ、おばぁ、お母さんはゴーヤチャンプルーとマンゴーが好きだったかな?」
そうなのだ。遠い記憶探るとお母さんはおばぁのこの家でゴーヤチャンプルーとマンゴーを食べ美味しそうに笑顔を浮かべていた。
おばぁは少し考える様子を見せ、
「確か、そうだったね。あの子ゴーヤは苦いけどそこがまたいいと言っていたよ」と言った。
「そっか、お母さんもゴーヤチャンプルーやマンゴーが好きだったんだね」
「ふふっ、わたしってば無意識であの子が好きなものを料理していたのかしらね」
おばぁはマンゴーをフォークですくい美味しそうに食べた。
「ふ~ん、そっか。おばぁのゴーヤチャンプルーとマンゴーには愛可のお母さんの思い出が詰まっているんだね」
きらりちゃんがマンゴーをぱくぱく食べながら言った。
「ふふっ、そうかもね。また、あの子にも食べてもらいたいな」
「あ、それだ! 愛可のお母さんも呼びましょうよ。ってこの近くに住んでいるのかな?」
きらりちゃんは顎に手を当てて考えている。
「わたしはお母さんの住まい知らないけどおばぁは?」
「……携帯の電話番号しか分からないよ。わたしはなんて親なんでしょうね。確か引っ越ししたはずだよね」
おばぁはしょんぼりと俯いた。
「……お母さんに電話してみる?」
お母さんと何年も話をしていないのでどんな話をしたら良いのやらではあるけれど……。
「……そうだね。電話をしてみよう」
「そうしよう。おばぁが電話をかけるんだよね」
「えっ!? 愛可ちゃんがかけるんじゃないのかい?」
おばぁはびっくりしたように目を見開き言うのだから信じられない。
「ここは年長者のおばぁが電話をかけるのが普通だよね」
「いやいや娘の愛可ちゃんがかけるのが自然よ」
わたしとおばぁは譲り合いをしてしまう。だって、やっぱりお母さんに電話をかけるとなると積極的にはなれない。
「……やっぱりお母さんの親であるおばぁが電話をかけた方がいいよ」
なんておばぁと言い合っていると、
「わたしが代わりに電話をかけてあげようか」
きらりちゃんが立ち上がり胸を張った。
「あ、えっと……」
「そ、それはちょっと……」
本当はきらりちゃんに電話をかけてもらいたいなと思うけれど、それもなんだかなと思う。
「あれ? 電話かけて欲しくないの? あ、それならジャンケンで決めたら~」
「そ、それだよ。おばぁジャンケンで決めようよ」
わたしは、ポンと手を打った。
「うん、愛可のおかげでもあるんだよ」
きらりちゃんはマンゴーにフォークを突き刺し食べた。
美味しそうに食べているきらりちゃんの無邪気な笑顔を眺めていると可愛らしくて癒された。
「わたしもお母さんとちゃんと話をしなきゃね」
わたしのお母さんは斎川さんとは違い優しい人ではなかった。けれど、あんな人でもわたしをこの世に産んでくれたたった一人のお母さんなのだから。
「愛可、頑張るんだよ」
きらりちゃんは花切りのマンゴーをフォークですくいパクパク食べた。
「うん、頑張る」
わたしはそう答え花形に切られたマンゴーをフォークですくい口に運んだ。柔らかくてまろやかなマンゴーは夏を詰め込んだ沖縄の夏の味がした。
お母さんと並んでマンゴーを食べたこともあるな。わたしは数少ないお母さんの笑顔をぼんやりと思い出していた。
『愛可、このマンゴー甘くてジューシーだね』
お母さんはそう言って笑った。
わたしも『うん、美味しいね。ほっぺたが落っこちそうだよ』
なんて言って笑い返したのだっただろうか。
またある時は、『このゴーヤチャンプルー美味しいね。このゴーヤのゴリゴリとした食感がまた良いね』
お母さんはゴーヤチャンプルーをぱくぱく食べてにっこりと微笑みを浮かべた。
懐かしいあの日をわたしは思い出していた。そして、あることに気がついた。
「ねえ、おばぁ、お母さんはゴーヤチャンプルーとマンゴーが好きだったかな?」
そうなのだ。遠い記憶探るとお母さんはおばぁのこの家でゴーヤチャンプルーとマンゴーを食べ美味しそうに笑顔を浮かべていた。
おばぁは少し考える様子を見せ、
「確か、そうだったね。あの子ゴーヤは苦いけどそこがまたいいと言っていたよ」と言った。
「そっか、お母さんもゴーヤチャンプルーやマンゴーが好きだったんだね」
「ふふっ、わたしってば無意識であの子が好きなものを料理していたのかしらね」
おばぁはマンゴーをフォークですくい美味しそうに食べた。
「ふ~ん、そっか。おばぁのゴーヤチャンプルーとマンゴーには愛可のお母さんの思い出が詰まっているんだね」
きらりちゃんがマンゴーをぱくぱく食べながら言った。
「ふふっ、そうかもね。また、あの子にも食べてもらいたいな」
「あ、それだ! 愛可のお母さんも呼びましょうよ。ってこの近くに住んでいるのかな?」
きらりちゃんは顎に手を当てて考えている。
「わたしはお母さんの住まい知らないけどおばぁは?」
「……携帯の電話番号しか分からないよ。わたしはなんて親なんでしょうね。確か引っ越ししたはずだよね」
おばぁはしょんぼりと俯いた。
「……お母さんに電話してみる?」
お母さんと何年も話をしていないのでどんな話をしたら良いのやらではあるけれど……。
「……そうだね。電話をしてみよう」
「そうしよう。おばぁが電話をかけるんだよね」
「えっ!? 愛可ちゃんがかけるんじゃないのかい?」
おばぁはびっくりしたように目を見開き言うのだから信じられない。
「ここは年長者のおばぁが電話をかけるのが普通だよね」
「いやいや娘の愛可ちゃんがかけるのが自然よ」
わたしとおばぁは譲り合いをしてしまう。だって、やっぱりお母さんに電話をかけるとなると積極的にはなれない。
「……やっぱりお母さんの親であるおばぁが電話をかけた方がいいよ」
なんておばぁと言い合っていると、
「わたしが代わりに電話をかけてあげようか」
きらりちゃんが立ち上がり胸を張った。
「あ、えっと……」
「そ、それはちょっと……」
本当はきらりちゃんに電話をかけてもらいたいなと思うけれど、それもなんだかなと思う。
「あれ? 電話かけて欲しくないの? あ、それならジャンケンで決めたら~」
「そ、それだよ。おばぁジャンケンで決めようよ」
わたしは、ポンと手を打った。
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