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おばぁとわたしとそしてお母さん

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「愛可ちゃん、最近お母さんとは会っている?」

「えっ!  お母さん……」

「うん、あの子どうしているのかなと思ってね」

  おばぁにとってはお母さんはいつまでも大切な娘なんだろうと思う。

「……会ってないよ。どこで何をしているんだろうね?」

「……そうか会ってないんだね」

  おばぁは寂しげな表情を見せるけれど、わたしはお母さんのことを思い出すと嫌な気持ちになる。

  部屋の中でお母さんの帰りを待っても待っても帰って来なかったあの頃の寂しかった記憶が甦り悲しくなるのだから。

「お母さんになんて会いたくないよ」

  わたしは、ぽつりと呟いた。

「……愛可ちゃんにとっては良いお母さんじゃなかったもんね。だけどね、わたしはあの子のことが気になるよ」

「……そっか、そうだよね」

  おばぁもお母さんと仲が良くなかったけれど、おばぁにとってはきっと大切な娘なんだろうなと思う。

「愛可ちゃんもわたしもあの子と分かり合える日が来るといいね」

「……うん、お母さんは優しくなかったけどわたしを産んでくれた大切な人なんだもんね」

    そうだよね。お母さんがいたからわたしがこの世にいるのだからいつかありがとうと歩み寄れたらいいなと思う。

「愛可もいろいろ大変なんだね。わたしもお母さんと仲良くなったから気になるよ。愛可も頑張るんだよ。あ、おばぁもね」

  それまで黙っていたきらりちゃんがにっこりと笑いわたしの顔とおばぁの顔を交互に見た。

「うん、そうだね。わたしもお母さんと仲良くしなくてはね」

「きらりちゃんはしっかりしているね。おばぁも愛可ちゃんを見習わなくてはね」

  わたしとおばぁは顔を見合わせた。

  そうだね。きらりちゃんに負けていられないね。わたしもいつかお母さんと笑い合えたらいいな。

「わたしの方が先輩だね」

「え?  先輩って何が?」

「それは、お母さんと歩み寄れた先輩に決まっているじゃな~い!」

  きらりちゃんは、ふんふんと鼻を鳴らし胸を張った。

「きらり先輩、そのお母さんと仲良くなれた極意を教えてください」

  おばぁがニヤリと笑いながら言った。

「ふふっ、おばぁ、ではこのきらり先輩が教えてあげますよ」

  きらりちゃんとおばぁはなぜだか先輩と後輩になっているではないか。いやいや教師と生徒かな?

「ちょっと、愛可もわたしの後輩なんだからね。分かっているのかな?」

  きらりちゃんはわたしの肩をぽんぽんと叩いた。

「……もう、きらりちゃんってば。分かったよ。きらり先輩だね」

「分かったのならよろしい愛可後輩」

  きらりちゃんはそう言ってニーッと笑った。とんでもない小学生なんだから……。

「きらり先輩、どうしたらお母さんと仲良くできるのでしょうか?」

「う~ん、それはだね……」

  きらりちゃんはそう言ったきり黙ってしまった。眉間に皺が寄っているよ。きらりちゃん。

「きらり先輩~教えてください」

「もう、愛可はうるさいよ。先輩が考えているんだからちょっと黙っててよ」

「分かったよ。きらり先輩」

  極意を教えてあげるなんて言ったのに頭を抱え考えているきらりちゃんのその姿がちょっと可愛らしくて、そして可笑しい。

「愛可ちゃんは可愛らしいきらりちゃんと友達になったんだね。良かったね」

  おばぁが笑顔をわたしに向けそして、うーんと考えているきらりちゃんを見た。

「うん、まあね。可愛らしいけど憎たらしくて困ってしまうけどね」

  きらりちゃんは、今もうーんうーんと唸りそして、「シンプルに自分の気持ちを伝えることだよ」と言ってにっこりと笑った。

「シンプルにですか?  きらり先輩」

「そうだよ。愛可やおばぁがお母さんに言いたいことや思っていることをシンプルに言えば良いと思います」

「きらりちゃんは本当にしっかりした子だね」

  おばぁが感心したように言った。

「ふふん、わたしはきらり先輩ですからしっかりしているんですよ」

  きらりちゃんは立ち上がり胸を張った。

  そんなきらりちゃんを見てわたしとおばぁは顔を見合せて笑った。

「あ、愛可におばぁ、笑ってる~酷いな」

  きらりちゃんは胸を張った状態のまま頬をぷくりと膨らませた。

「きらりちゃん。ごめんね」

  わたしとおばぁは手を顔の前で合わせて謝った。

「まあ、謝ってくれたから許してあげよう。なんてね……愛可がわたしにお母さんはきらりちゃんのことを大切な存在だと思っているはずなんだからねって言ってくれたよね」

「うん、言ったかも?」

「それで、わたし自分の思っていることをちらっとお母さんに言ったんだよ」

  きらりちゃんはニヒヒと笑いわたしの顔を見た。
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