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おばぁの家の縁側で

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「真っ赤なハイビスカスの花が綺麗だね」

「うん、綺麗だね」

  わたしときらりちゃんは縁側に座り足をぷらぷらさせながら庭の景色を見ていた。

「そういえば、おじぃの家の縁側で花火をしたな~懐かしいな」

「あ、わたしもおばぁのこの庭で小学生の夏休みに花火をしたよ」

  わたしときらりちゃんは遠い過去の夏を思い出した。おばぁとどっちが線香花火を長持ちさせることができるかなと競争したな。

「ふーん、愛可も花火をしたんだね」

「うん、線香花火とか楽しかったな。ってきらりちゃんってば小学生なのになんだか大人みたいだよね」

「うん、わたしは小学生だけど悩める子供だからね。お母さんの仕事が忙しくておじぃの家にしばらく行ってないもんね」

「……そっか」

「愛可、そんな寂しそうな顔しないでよ。あ、わたしも五年生になったんだから一人でおじぃの家に行けるかも」

  きらりちゃんはそう言ってにんまりと笑った。

「お待たせ。あらあらきらりちゃんは一人でおじいさんのお家に行くことを考えているのね」

  おばぁがお盆にさんぴん茶とサーターアンダギーを載せ縁側にやって来た。

「あ、はい。わたしも五年生になったからしっかりしなきゃと思って。あ、サーターアンダギーですね」

  きらりちゃんは、そう言って笑った。

「ふふっ、きらりちゃんはとってもしっかりしてるわね」

  おばぁがちらりとわたしの顔を見るのだから困ってしまう。わたしは、大人だけどしっかりしていませんよ……。

「えへへ、そうですか?  それにしてもサーターアンダギーを見るとあの紫色の割烹着の人を思い出すよ」

  きらりちゃんの言葉におばぁは首を傾げた
。紫色の割烹着の人なんて言っても分からないよ。

「紫色の割烹着の人?  そうそう、さんぴん茶とサーターアンダギーを食べてね」

  おばぁは、さんぴん茶とサーターアンダギーをわたし達の横に置いた。

「やったーありがとうございます。食べよっと」

「おばぁ、いただきます」


  わたし達は縁側に座りおばぁのサーターアンダギーを食べた。美川さんのサーターアンダギーとはまた違った味がした。

「おばぁ、縁側でサーターアンダギーを食べてさんぴん茶を飲むと夏休みを思い出すよ」

「そうかいな。おばぁも愛可ちゃんが美味しいって食べてくれたことを思い出すよ。ここにいるきらりちゃんと同じくらいの年齢だったよね」

  おばぁは懐かしそうに微笑む。

「うん、そうだね」

  懐かしいおばぁの真夏の太陽みたいに輝いている笑顔とサーターアンダギーや美味しかったご飯。そして、お母さんとのあまり楽しくなかった日々も思い出されその嫌な思いを振り払う。

  さんぴん茶をゴクゴク飲むと喉がスッキリした。

「お昼はゴーヤチャンプルーを作ろうと思っているんだけど食べるかい」

  おばぁは、わたしときらりちゃんの顔を交互に見て言った。

「は~い!  食べる~」

  きらりちゃんが元気よく答えた。

「わたしも食べる~」

  そういえば船の中でゴーヤ弁当を食べたけれどまあいいか、何度食べてもゴーヤチャンプルーは美味しいのだからね。


  それから庭の景色を眺めながらサーターアンダギーを食べさんぴん茶を飲んだ。

  幼かった懐かしいあの日々が甦ってきたような不思議な感覚に陥る。

  小学生のわたしが今のわたしに『愛可ちゃ~ん、遊ぼう』と声をかけてきて、今のわたしが『うん、愛可ちゃん、遊ぼうね』なんて笑って答える。

  この庭を駆け回る幼い日のわたし。そんな幼い日のわたしを追いかける今のわたし。

  あの頃が懐かしくてそして、寂しくていろんな思いが込み上げてくる。大好きなおばぁの笑顔と不機嫌そうなお母さんの顔にそれから、笑ったり泣いたりしているわたし自身の顔。

  おばぁの家に来て過去の出来事が鮮やかに思い出された。

「愛可、どうしたの?  ぼーっとしちゃって」

「あ、えっ!  あ、うん、なんだか懐かしいなと思ってね」

  わたしは、きらりちゃんの顔見てにっこりと笑った。
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