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お菓子屋とおばぁ
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「ここですよ。着きましたよ」
今日も歩くのが速い美川さんがピタリと立ち止まりその建物を指差しながら言った。
わたしときらりちゃんはゼーゼーと息を切らしながら追いついた。
そのお菓子屋さんは昔ながらの懐かしさが漂っていた。わぁ、なんだか良い雰囲気だな。お店の横には自動販売機が二台並んでいて看板には『おばあちゃんのお菓子屋』とレトロぽい文字で書かれていた。
「わ~い! お菓子屋さんだね。何を食べようかな? お腹が空いたな」
きらりちゃんは弾んだ声を出して言った。
「あはは、きらりちゃんってばさっきサーターアンダギーを食べたばかりなのにね」
わたしはクスクスと笑いながら言った。それはそうときらりちゃんがだんだん小学生らしくなってきてわたしは嬉しくなる。
「うん、食べたけどね。お菓子屋さんの看板を見るとお腹が空いてくるんだもん。愛可もそうじゃないの?」
「まあ、そうかもね」
「お~い、君達店に入るぞ」
美川さんが手を上下に振り手招きをした。
店内に入ると棚にところせましと駄菓子が並べられていた。
わっ、これは懐かしい。なんだかこの空間だけ時間が止まっているかのようで昔にタイムスリップしたような感覚になった。
「良い雰囲気のお店ですね」
「そうですよね。俺もこのお菓子屋さん好きなんですよね。懐かしくて子供時代に戻ったというか俺が生まれる前の時代にタイムスリップしたみたいで」
「あ、わたしもそう思いましたよ」
美川さんもわたしと同じことを感じていたんだなと思いながら店内を見渡した。
昔食べたことのある駄菓子や見たことのない駄菓子などいろいろ置いてあり楽しい気分になる。値札も手書きで書かれておりレトロぽくてなんだか和むのだ。
きらりちゃんなんて駄菓子を手に取り微笑みを浮かべいる。
駄菓子屋さんは懐かしくて和みそして、込み上げてくるものがある。そんなことを考えながら店内を見渡していると、店内の奥から人が出てきた。
「いらっしゃい」
店の奥から出てきたのは七十代くらいのおばぁだった。
「美味しそうなお菓子がたくさんありますね」
美川さんがお菓子屋さんのおばぁに声をかけた。
「お菓子はたくさんあるけどね……」
お菓子屋さんのおばぁの声はなんだか沈んだ声だった。
「この塩せんべい美味しそうだな。あ、亀の甲の揚げせんもいいな」
美川さんは眉間に皺を寄せながらも楽しそうにお菓子を手に取っている。
おばぁはレジの横の椅子に腰を下ろした。
「あ、ちんすこうもあるね」
わたしは、ゴーヤ、チョコチップ、黒糖、紅芋味などのちんすこうを眺めながら言った。
「あ、本当だ~わたし、チョコチップと黒糖のちんすこうを食べようかな?」
きらりちゃんはそう言ったかと思うと駄菓子用の小さな買い物かごにちんすこうを放り込んだ。
わたしもちんすこうが食べたくなり駄菓子用の小さなかごを手に取った。
店内にあるたくさんの駄菓子を眺めているとワクワクして幼い頃に戻ったような気持ちになる。
わたしは店内をぐるりと周り小さな買い物かごに駄菓子をぽいぽいと入れた。駄菓子を買い物かごに入れると懐かしさがふわふわと甦ってくるようだ。
「あ、愛可ってばたくさん買うんだね」
「うん。ってちょっときらりちゃんこそたくさん買ったね」
だって、小さな買い物かごの中に溢れそうになるくらいのお菓子が入っているのだから。わたしは可笑しくてクスッと笑ってしまった。
「だって、美味しそうなんだもん」
きらりちゃんはそう言ってニヤリと笑った。
「そうだよね。あれもこれも全部食べたくなるよね」
わたしときらりちゃんは顔を見合わせて笑い合った。なんだか幼い頃にタイムスリップしたみたいだ。
「お嬢さん達、駄菓子が好きなのかい?」
おばぁがわたし達に声をかけてきた。
わたし達は振り返り「はい、駄菓子好きですよ」、「駄菓子大好き~」とほぼ同時にわたしときらりちゃんは答えた。
「それは嬉しいね。駄菓子も喜んでいるよ」
おばぁの沈んでいた表情がぱっと明るくなりよっこらしょと立ち上がり近くにある駄菓子を手に取った。
「最近は駄菓子を買いに来てくれる子が少なくなっていたんだよ」
「そうなんですね。わたしは子供の頃たまに駄菓子屋さんに行きましたよ。時間が経つのも忘れてじっくり選んでいました」
懐かしいあの頃の思い出がふわふわと浮かび頬が緩んだ。わたしにも幸せな時間があったんだな。楽しいことも辛いこともいろいろあるのが人生なんだけれどやはり楽しい時間を積み重ねていきたいな。
わたしはおばぁの皺の刻まれた顔と小さな買い物かごに入っている駄菓子を交互に眺めた。
おばぁはこの店で子供達に長い間夢を売っていたんだね。
今日も歩くのが速い美川さんがピタリと立ち止まりその建物を指差しながら言った。
わたしときらりちゃんはゼーゼーと息を切らしながら追いついた。
そのお菓子屋さんは昔ながらの懐かしさが漂っていた。わぁ、なんだか良い雰囲気だな。お店の横には自動販売機が二台並んでいて看板には『おばあちゃんのお菓子屋』とレトロぽい文字で書かれていた。
「わ~い! お菓子屋さんだね。何を食べようかな? お腹が空いたな」
きらりちゃんは弾んだ声を出して言った。
「あはは、きらりちゃんってばさっきサーターアンダギーを食べたばかりなのにね」
わたしはクスクスと笑いながら言った。それはそうときらりちゃんがだんだん小学生らしくなってきてわたしは嬉しくなる。
「うん、食べたけどね。お菓子屋さんの看板を見るとお腹が空いてくるんだもん。愛可もそうじゃないの?」
「まあ、そうかもね」
「お~い、君達店に入るぞ」
美川さんが手を上下に振り手招きをした。
店内に入ると棚にところせましと駄菓子が並べられていた。
わっ、これは懐かしい。なんだかこの空間だけ時間が止まっているかのようで昔にタイムスリップしたような感覚になった。
「良い雰囲気のお店ですね」
「そうですよね。俺もこのお菓子屋さん好きなんですよね。懐かしくて子供時代に戻ったというか俺が生まれる前の時代にタイムスリップしたみたいで」
「あ、わたしもそう思いましたよ」
美川さんもわたしと同じことを感じていたんだなと思いながら店内を見渡した。
昔食べたことのある駄菓子や見たことのない駄菓子などいろいろ置いてあり楽しい気分になる。値札も手書きで書かれておりレトロぽくてなんだか和むのだ。
きらりちゃんなんて駄菓子を手に取り微笑みを浮かべいる。
駄菓子屋さんは懐かしくて和みそして、込み上げてくるものがある。そんなことを考えながら店内を見渡していると、店内の奥から人が出てきた。
「いらっしゃい」
店の奥から出てきたのは七十代くらいのおばぁだった。
「美味しそうなお菓子がたくさんありますね」
美川さんがお菓子屋さんのおばぁに声をかけた。
「お菓子はたくさんあるけどね……」
お菓子屋さんのおばぁの声はなんだか沈んだ声だった。
「この塩せんべい美味しそうだな。あ、亀の甲の揚げせんもいいな」
美川さんは眉間に皺を寄せながらも楽しそうにお菓子を手に取っている。
おばぁはレジの横の椅子に腰を下ろした。
「あ、ちんすこうもあるね」
わたしは、ゴーヤ、チョコチップ、黒糖、紅芋味などのちんすこうを眺めながら言った。
「あ、本当だ~わたし、チョコチップと黒糖のちんすこうを食べようかな?」
きらりちゃんはそう言ったかと思うと駄菓子用の小さな買い物かごにちんすこうを放り込んだ。
わたしもちんすこうが食べたくなり駄菓子用の小さなかごを手に取った。
店内にあるたくさんの駄菓子を眺めているとワクワクして幼い頃に戻ったような気持ちになる。
わたしは店内をぐるりと周り小さな買い物かごに駄菓子をぽいぽいと入れた。駄菓子を買い物かごに入れると懐かしさがふわふわと甦ってくるようだ。
「あ、愛可ってばたくさん買うんだね」
「うん。ってちょっときらりちゃんこそたくさん買ったね」
だって、小さな買い物かごの中に溢れそうになるくらいのお菓子が入っているのだから。わたしは可笑しくてクスッと笑ってしまった。
「だって、美味しそうなんだもん」
きらりちゃんはそう言ってニヤリと笑った。
「そうだよね。あれもこれも全部食べたくなるよね」
わたしときらりちゃんは顔を見合わせて笑い合った。なんだか幼い頃にタイムスリップしたみたいだ。
「お嬢さん達、駄菓子が好きなのかい?」
おばぁがわたし達に声をかけてきた。
わたし達は振り返り「はい、駄菓子好きですよ」、「駄菓子大好き~」とほぼ同時にわたしときらりちゃんは答えた。
「それは嬉しいね。駄菓子も喜んでいるよ」
おばぁの沈んでいた表情がぱっと明るくなりよっこらしょと立ち上がり近くにある駄菓子を手に取った。
「最近は駄菓子を買いに来てくれる子が少なくなっていたんだよ」
「そうなんですね。わたしは子供の頃たまに駄菓子屋さんに行きましたよ。時間が経つのも忘れてじっくり選んでいました」
懐かしいあの頃の思い出がふわふわと浮かび頬が緩んだ。わたしにも幸せな時間があったんだな。楽しいことも辛いこともいろいろあるのが人生なんだけれどやはり楽しい時間を積み重ねていきたいな。
わたしはおばぁの皺の刻まれた顔と小さな買い物かごに入っている駄菓子を交互に眺めた。
おばぁはこの店で子供達に長い間夢を売っていたんだね。
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