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四話目 ポークたまごおにぎりと美川さん
しおりを挟む幸せの運び屋で働き始めて一ヶ月が経った。きらりちゃんとも仲良くなれた。それから他の現場というのか『元気になれる食堂』以外の食堂などでもわたしは笑顔でご飯を食べたりしているのだった。
「うん、やっぱり斎川さんの沖縄そばは美味しいな」
「そうだね。わたしのお母さんが作った沖縄そばだもん。美味しいよ」
そして今わたしときらりちゃんは『元気になれる食堂』で向かい合い沖縄そばを食べている。最近のわたしは仕事ではなくプライベートできらりちゃんに会いに来ている。
「きらりちゃんちょっと変わったね」
「まあね。愛可のおかげかな」
きらりちゃんはにっこりと笑い頭を掻いた。
「うふふ。それは嬉しいな」
わたしはきらりちゃんの顔をじっと見て笑った。
「愛可、調子に乗らないでよね」
きらりちゃんは口では文句を言っているけれどなんだか嬉しそうだ。だって、口元に微笑みを作っているよ。わたしは見逃さないからね。
「きらりちゃんは可愛いね」
「愛可って本当に気持ち悪いね」
きらりちゃんは口を尖らせている。
これ以上言うと怒るからやめておこう。わたしはうふふと笑いながら沖縄そばを食べた。
「愛可さん、きらりと仲良くしてくれてありがとうございます」
紫色の割烹着を着た斎川さんがお盆にグァバ茶とサーターアンダギーを載せてやって来た。最近、斎川さんはわたしを愛可さんと名前で呼んでくれるようになった。
「いえいえ、とんでもないですよ」
「そうだよ。わたしが仲良くしてあげてるんだよ。愛可は友達がいなくて寂しそうなんだもん」
「こら! きらりちゃん。愛可さんに失礼よ」
斎川さんはテーブルにグァバ茶とサーターアンダギーの盛られたお皿を置きながら言った。
「だって、本当のことだもん。ねっ、愛可そうだよね」
きらりちゃんはわたしの顔を見てニッと笑った。
「あはは、まあそれもそうかな。う~ん、でもきらりちゃんちょっと酷いよ」
わたしは頬をぷくっと膨らませた。
「そうかな~? 酷いかな」
「愛可さん。きらりが本当にすみません。さあさあ、お菓子でも食べてね。午後から出かけるんでしょ」
「うん。出かけるよ。友達がいない美川さんと遊んであげるんだもん」
きらりちゃんはサーターアンダギーに手を伸ばし口に運んだ。
「もう、きらりちゃんは美川さんにも失礼なんだから」
斎川さんはそう言いながらもその表情は柔らかい。やはりきらりちゃんが斎川さんの料理を美味しそうに食べているから嬉しいのだろう。
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