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2 わたしときらりちゃん
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「おやおや喧嘩かい? 喧嘩するほど仲良しなのかい。豆腐チャンプルーとグァバ茶だね」
雑貨屋のおばぁが店の奥から出てきて食券を手に取りながら言った。
「仲良しと違うよ」
「仲良しと違いますよ」
わたしときらりちゃんはほぼ同時に言った。
「あははっ。息もぴったりだね」
「ぴったりじゃありません」、「ぴったりじゃないよ」わたしときらりちゃんはまたまたほぼ同時に言ってしまった。
「仲良くするんだよ。では、美味しい豆腐チャンプルーとグァバ茶をお待ちください」
雑貨屋のおばぁはクスクス笑いながら店の奥に戻った。
「愛可と仲良し扱いされたよ。信じられないよ」
「そ、それはこっちのセリフだよ」
「ふーん、さっきは仲良くしようねと言ったくせにね~」
きらりちゃんはふんと鼻で笑い憎たらしい。
「さっきはそう言ったけど……」
わたしは気が変わったと答えようとしたのだけど、きらりちゃんに笑顔になってもらわなければならないことを思い出し、
「あ、うん。仲良くしようよ」
わたしは無理して笑顔を作った。
「勝手にしたら。わたしは宿題をするんだからね」
目の前の小学生が憎たらしい。憎たらしくてイライラするのだけどなぜだかきらりちゃんを眺めていると昔のわたしと重なる。
薄暗い部屋の中で宿題をしていたあの頃のわたしと……。
「ねえ、愛可って暇なの?」
きらりちゃんが宿題をする手を止めて聞いてきた。
「え、あ、まあ暇かな……うん、そうかもね」
「ふーん、そうなんだね。じゃあ可哀想だからたまにだったら遊んであげてもいいよ」
「遊んでくれるんだね。う、嬉しいな」
なんだか小学生の女の子に同情されているみたいで腑に落ちないのだけど、これも一歩前進したと思えば良いのだねとわたしは自分を納得させる。
「どういたしまして~」
ああ、やっぱり腹が立つけれどここはグッと抑えなければならない。
「……ありがとう。きらりちゃん」
わたしはニコニコ笑顔を浮かべて見せた。
「ふん、分かってくれたらいいのよ」
きらりちゃんが得意げに笑いシャーペンをくるくる回す。わたしはムッとしながらくるくる回るシャーペンときらりちゃんの憎たらしいけれど可愛い顔を眺めた。
その時、「お待たせ~豆腐チャンプルーとグァバ茶だよ」
おばぁの元気な声が聞こえてきた。
きらりちゃんの目の前には美味しそうな豆腐チャンプルーと大盛ご飯が置かれ、わたしの目の前にはグァバ茶が置かれた。
先程豆腐チャンプルーを食べたばかりだというのにわたしも豆腐チャンプルーを食べたくなってしまった。
「愛可、じっと見ないでよ。これはわたしの豆腐チャンプルーなんだからね」
「見てないもんね」
「見てるじゃない。ウソつき~わたしの豆腐チャンプルーを見てヨダレを垂らしそうになっているよね」
「うっ! それは……」
確かにきらりちゃんの言う通りかもしれない。だからこそ悔しいのだーーー!!
「ふん、図星だよね」
きらりちゃんは勝ち誇ったような顔をでわたしを見る。なんて生意気な小学生なんだ。
「……」
「どうやらわたしの勝ちだね」
きらりちゃんはふふんと笑いそれから、「愛可、豆腐チャンプルー分けてあげようか」と言った。
「えっ! 分けてくれるの?」
「うん、おばぁ、取り皿とお箸をくださ~い」
雑貨屋のおばぁが店の奥から出てきて食券を手に取りながら言った。
「仲良しと違うよ」
「仲良しと違いますよ」
わたしときらりちゃんはほぼ同時に言った。
「あははっ。息もぴったりだね」
「ぴったりじゃありません」、「ぴったりじゃないよ」わたしときらりちゃんはまたまたほぼ同時に言ってしまった。
「仲良くするんだよ。では、美味しい豆腐チャンプルーとグァバ茶をお待ちください」
雑貨屋のおばぁはクスクス笑いながら店の奥に戻った。
「愛可と仲良し扱いされたよ。信じられないよ」
「そ、それはこっちのセリフだよ」
「ふーん、さっきは仲良くしようねと言ったくせにね~」
きらりちゃんはふんと鼻で笑い憎たらしい。
「さっきはそう言ったけど……」
わたしは気が変わったと答えようとしたのだけど、きらりちゃんに笑顔になってもらわなければならないことを思い出し、
「あ、うん。仲良くしようよ」
わたしは無理して笑顔を作った。
「勝手にしたら。わたしは宿題をするんだからね」
目の前の小学生が憎たらしい。憎たらしくてイライラするのだけどなぜだかきらりちゃんを眺めていると昔のわたしと重なる。
薄暗い部屋の中で宿題をしていたあの頃のわたしと……。
「ねえ、愛可って暇なの?」
きらりちゃんが宿題をする手を止めて聞いてきた。
「え、あ、まあ暇かな……うん、そうかもね」
「ふーん、そうなんだね。じゃあ可哀想だからたまにだったら遊んであげてもいいよ」
「遊んでくれるんだね。う、嬉しいな」
なんだか小学生の女の子に同情されているみたいで腑に落ちないのだけど、これも一歩前進したと思えば良いのだねとわたしは自分を納得させる。
「どういたしまして~」
ああ、やっぱり腹が立つけれどここはグッと抑えなければならない。
「……ありがとう。きらりちゃん」
わたしはニコニコ笑顔を浮かべて見せた。
「ふん、分かってくれたらいいのよ」
きらりちゃんが得意げに笑いシャーペンをくるくる回す。わたしはムッとしながらくるくる回るシャーペンときらりちゃんの憎たらしいけれど可愛い顔を眺めた。
その時、「お待たせ~豆腐チャンプルーとグァバ茶だよ」
おばぁの元気な声が聞こえてきた。
きらりちゃんの目の前には美味しそうな豆腐チャンプルーと大盛ご飯が置かれ、わたしの目の前にはグァバ茶が置かれた。
先程豆腐チャンプルーを食べたばかりだというのにわたしも豆腐チャンプルーを食べたくなってしまった。
「愛可、じっと見ないでよ。これはわたしの豆腐チャンプルーなんだからね」
「見てないもんね」
「見てるじゃない。ウソつき~わたしの豆腐チャンプルーを見てヨダレを垂らしそうになっているよね」
「うっ! それは……」
確かにきらりちゃんの言う通りかもしれない。だからこそ悔しいのだーーー!!
「ふん、図星だよね」
きらりちゃんは勝ち誇ったような顔をでわたしを見る。なんて生意気な小学生なんだ。
「……」
「どうやらわたしの勝ちだね」
きらりちゃんはふふんと笑いそれから、「愛可、豆腐チャンプルー分けてあげようか」と言った。
「えっ! 分けてくれるの?」
「うん、おばぁ、取り皿とお箸をくださ~い」
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