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1 異世界の扉を開く前のわたし
しおりを挟むわたしは空気の読めない女子高生だ。クラスメイトからは満里奈ちゃんは変わっていると言われている。
内気な性格なのに時々思ったことをぽろりと言ってしまい相手を怒らせてしまうことも多々ある。わたしの唯一の友達は猫のマナだけだ。
わたし川本満里奈はなんてツマラナイ女子高生生活を送っているのだろうかと思うと溜め息が出る。
「あ~こんなツマラナイ毎日から抜け出したいよ」
思わず声に出してしまった。
「あ、満里奈ちゃん、とっくに学校から帰ったはずなのにまだ制服姿でうろうろしていたんだね」
その声に振り返るとスーツ姿の唯奈ちゃんが立っていた。
「ふん、ほっといてよ」
わたしは、唯奈ちゃんの心配を押し売りしたような顔にイライラしてそっぽを向いた。
「満里奈ちゃんはもう高校生だからわたしが心配することもないと思うんだけどね」
「じゃあ、心配しなければいいじゃん」
「うん、そうなんだけど、ほら、わたし満里奈ちゃんの高校の先生だからね……」
「……唯奈ちゃんが学校の先生だなんて全然似合わないよ」
「そ、そんなこと言わないでよ。わたしこれでも一生懸命頑張っているんだから」
唯奈ちゃんはそう言って悲しげな表情を浮かべわたしの顔じっと見た。
「唯奈ちゃんの夢は歌手になることだったんじゃないの? 高校の先生なんて似合わないし夢を諦めた唯奈ちゃんなんて格好よくないよ」
「……満里奈ちゃん、大人になると夢だけでは生きていけないのよ」
唯奈ちゃんのその言葉に愕然とした。わたしは夢を追いかけていた唯奈ちゃんに憧れていたのに……。
それなのに唯奈ちゃんはツマラナイ大人になった。
川下唯奈はわたしのお母さんのお兄さんの娘でわたしの従姉だ。この春からめでたく(わたしはがっかりしたけど)教員になった。
唯奈ちゃんはわたしが小さい頃よく遊んでくれた。友達の少ないわたしにとって大切な存在であり憧れのお姉さんだった。
そして、歌を歌う唯奈ちゃんの姿がそれはもう格好良かった。きっと将来歌手になるんだろうなと思っていた。
それが夢を諦めてわたしの高校の先生になったのだからがっかりした。
わたしが黙っていると唯奈ちゃんが、「満里奈ちゃん気をつけて帰るのよ」と言った。
なんだか唯奈ちゃんが教師みたいに見えて嫌だなと思った。まあ、教師なんだけどね。
わたしは頬をぷくぷく膨らませた。そんなわたしの顔を唯奈良ちゃんはじっと見てぽんぽんと優しく頭を撫でた。
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