さや荘へようこそ!(あなたの罪は何?)

なかじまあゆこ

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第四章 緑川麗奈

名前とあなたの罪

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  そうなのだ。わたしが思い出した名前は和子という名前だった。

  わたしの頭の中に和子、和子、和子、和子という名前が浮かんだ。

  和子ちゃんって名前の女の子が幼稚園のうさぎ組にいた。そう和子ちゃんって名前の女の子が……。

「緑川麗奈、やっと思い出したんだね」

  森口さんはニヤリと笑った。その唇は赤リップでキラキラと輝いていた。

「……わ、わたしは和子ちゃんって名前の女の子にあんたの名前ってダサいねと言いました。すると、その女の子は突然泣き出しました」

  和子ちゃんがあまりにも激しく泣くものだから鬱陶しくてわたしは、

『わたしは麗奈って名前よ。可愛いでしょ?  和子ちゃんみたいにダサい名前にならなくて良かった~』

  そう言ってわたしはあっかんべーをした。

  その時の和子ちゃんの顔は苦痛に歪んでいたことを思い出した。

「ほらね、やっぱりあなたは罪人だよね?」

  森口さんはそう言ってわたしを睨んだ。

  あの時の和子ちゃんってまかさ……。

「和子ちゃんってまさかあの田本和子じゃないよね?」


  わたしは違うよと言ってもらいたくて次の言葉をじっと待った。

  だけど。


「そうよ。あなたは和子って名前をダサいと言って笑った。その笑われた和子ちゃんは、田本和子だよ」

「……全然気がつかなかった……そんなことってあるんだ」

  わたしは呆然とした。

「緑川麗奈、全ての始まりはあなたなのよ。あなたが罪を犯したから田本和子はあなたをいじめたのよ。もちろん田本和子も幼稚園の頃に和子って名前を笑ったのがあなただとは覚えていないけどね」

  森口さんは鋭い目つきでわたしを睨んだ。

「……そんなことってあるんだ」

  わたしは、膝を突きその場に座り込んだ。

「田本和子はあなたの言ったことでトラウマになったのよ。和子って名前がダサいと思ってより嫌いになった。そして、中学三年生のあの教室であなたの綺麗な名前に嫉妬してあなたをいじめたのよ」

「……自分の蒔いた種だって言うんですか?」

「そうよ、緑川麗奈さん。それとあの卒業式の教室であなたの顔写真をマジックで真っ黒に塗りつぶした時は自分の和子って名前をダサいと言って笑った幼稚園のうさぎ組の女の子があなただっていうことに気がついていたみたいよ」

  森口さんはそう言って口元に手を当てて笑った。

  そして、森口さんは、「罪人達よさや荘にようこそ。わたしが罪人を成敗してあげるわよ」と言った。

  そして、気がつくと森口さんは玄関から出ていき、わたしはこのさや荘に閉じ込めらたみたいだ。

   そんなことってあるんだ……。
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