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第四章 緑川麗奈
あなたの罪を思い出しなさい!!
しおりを挟むそして、森口さんは。
「田本和子さんの名前についてどう思いますか?」と言った。
「田本和子さんの名前ですか? それがどうかしましたか?」
「いいから答えなさい! 田本和子という名前に何を感じますか?」
森口さんはわたしの目をじっと見ている。森口さんに見つめられるとまるでわたしが罪人であるかのような感覚になってくる。
「……田本和子さんの名前は昭和初期っぽい名前だと思います……だけど別に何も感じませんが」
わたしは正直な気持ちを答えた。
「あら、そうなんですね。でも田本和子さんは和子という名前を気にしていますよ」
「それは、和子ちゃんは自分の名前が古めかしくて嫌いだからですよね?」
「まあ、それもありますが……緑川麗奈思い出しなさい! あなたの罪を思い出しなさい! あなたの罪を思い出しなさい!」
森口さんは呪文でも唱えるかのように罪を思い出しなさいと言った。
「一体何のことですか? 和子ちゃんが自分の名前が嫌いだからってわたしに意地悪をしたことは分かりますよ。ですがわたしが罪を犯したって意味不明ですよ」
そうだよ。田本和子が罪人というのであれば分かるけれど、どうしてわたしが罪人なのかはさっぱり分からない。
「幼稚園の頃のことを思い出しなさい!」
「幼稚園の頃のことをですか? そんな昔のことをですか?」
「そうよ。幼稚園の頃に緑川さんあなたは罪人になっているのよ」
そんな昔のことを思い出せと言われてもほとんど覚えていない。
「そんな昔のことなんて覚えていませんよ」
「覚えていなくても思い出しなさいよ。そうね、だったらヒントをあげるわよ。緑川さんあなたは幼稚園の頃に名前のことである少女の心に深い傷を与えたはずよ」
「え? わたしが誰かに……」
「そうよ。緑川さんあなたがよ」
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わたしは幼稚園の頃の遠い過去の記憶を手繰り寄せた。
わたしは幼稚園の制服が好きだった。それから可愛らしいフェルト帽子もお気に入りだった。あの頃のわたしは悩みもなく元気よく幼稚園に通っていた。
友達もいたし給食も好きだった。
だけど、二十五歳になった今は友達の名前もほとんど覚えていない。
と、そこまで考えたところで名前に引っかかった。そうだ、名前といえば……。
あの子の名前を思い出した。
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