65 / 74
第四章 緑川麗奈
卒業アルバム
しおりを挟むそれから一週間後のよく晴れた日。わたしはさや荘に引っ越した。
どうして自分がさや荘の住人になったのかよく分からない、このさや荘にぐぐーっと惹かれここに住みたいと強く思い気がつくと賃貸借契約書にハンコを押していたのだった。
さや荘には不思議な力がある。ううん、森口さんに不思議な力があると言った方が正解だろうか……。
今日からわたしはこのさや荘の住人になるのだ。
「さや荘、今日からよろしくね」
わたしは新しい住処に挨拶をした。すると、こちらこそよろしくと部屋が挨拶を返したように感じ不思議な気持ちになった。
きっと気のせいだよねとわたしは笑い部屋の中に山積みにされたダンボールを片付けることにした。引越しなんて何年ぶりかなと思いながらわたしは荷物を解いた。
その時、分厚いハードカバーの卒業アルバムが目に入った。
これは……。
どうしてこの卒業アルバムがダンボールに入っているのだろうか?
嫌な思い出がたくさん詰まっている卒業アルバムなんて見たくなくて実家の押入れの奥にあるはずなのに……。
それにこの卒業アルバムは本当は捨ててしまいたかった。そんな卒業アルバムがダンボールの中に入っているなんて信じられないのだった。
わたしは卒業アルバムから目を逸らし他のことを考えようとしたけれど駄目だった。あの卒業式の嫌な思い出がジワジワと溢れてくるのだった。
あの光景は今も忘れられなくてわたしの心の中に暗い影を落としている。
「皆、卒業アルバムのクラスの個人写真のページを開いて~」
と言った田本和子は口の端をにーっと吊り上げた。その表情は意地悪そのものだった。
田本和子が何を言い出すのかとわたしはドキドキした。
すると田本和子は、「では、その卒業アルバムの個人写真の中にいらない人が一人写っていると思うんだけどその人をこの黒マジックで消そうよ!」
なんてとんでもない話なんだろかと思った。田本和子は黒色のマジックを握っている。何をするのよ。その黒マジックで何をしようと言うのだろか?
わたしの心臓の音はドキドキドキドキと大きく響く。
田本和子「さあ、消すわよ」と言って黒マジックでグニグニ~とある人物の顔を塗りつぶした。
そうなのだ。ある人物とはこのわたし緑川麗奈だったのだ。
やっぱりと思ったのと同時にやめて---とわたしの心は叫び声を上げていた。
卒業するからもういいじゃない。田本和子はどうしてここまで意地悪なのだろうかと思った。
わたしはこの一年間悔しくて辛かった。ずっと耐えてきたのに。ずっと耐えてきたんだよ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
あの子が追いかけてくる
なかじまあゆこ
ホラー
雪降る洋館に閉じ込められた!!
幼い日にしたことがわたしを追いかけてくる。そんな夢を見る未央。
ある日、古本屋で買った本を捲っていると
『退屈しているあなたへ』『人生の息抜きを』一人一泊五千円で雪降る洋館に宿泊できますと書かれたチラシが挟まっていた。
そのチラシを見た未央と偶然再会した中学時代の同級生京香は雪降る洋館へ行くことにした。
大雪が降り帰れなくなる。雪降る洋館に閉じ込められるなんて思っていなかった未央は果たして……。
ホラー&ミステリになります。悪意、妬み、嫉妬などをホラーという形で書いてみました。最後まで読んで頂くとそうだったんだと思って頂けるかもしれません。
2018年エブリスタ優秀作品です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
朧《おぼろ》怪談【恐怖体験見聞録】
その子四十路
ホラー
しょっちゅう死にかけているせいか、作者はときどき、奇妙な体験をする。
幽霊・妖怪・オカルト・ヒトコワ・不思議な話……
日常に潜む、胸をざわめかせる怪異──
作者の実体験と、体験者から取材した実話をもとに執筆した怪談短編集。
『ゴーゴン(仮題)』
名前も知らない兵士
ホラー
高校卒業後にモデルを目指して上京した私は、芸能事務所が借り上げた1LDKのマンションに居住していた。すでに契約を結び若年で不自由ない住処があるのは恵まれていた。何とか生活が落ち着いて、一年が過ぎた頃だろうか……またアイツがやってきた……
その日、私は頭部にかすかな蠢き(うごめき)を覚えて目を覚ました。
「……やっぱり何か頭の方で動いてる」
モデル業を営む私ことカンダは、頭部に居住する二頭の蛇と生きている。
成長した蛇は私を蝕み、彼らが起きている時、私はどうしようもない衝動に駆られてしまう。
生活に限界を感じ始めた頃、私は同級生と再会する。
同級生の彼は、小学生の時、ソレを見てしまった人だった。
私は今の生活がおびやかされると思い、彼を蛇の餌食にすることに決める。
ill〜怪異特務課事件簿〜
錦木
ホラー
現実の常識が通用しない『怪異』絡みの事件を扱う「怪異特務課」。
ミステリアスで冷徹な捜査官・名護、真面目である事情により怪異と深くつながる体質となってしまった捜査官・戸草。
とある秘密を共有する二人は協力して怪奇事件の捜査を行う。
オレンジ色の世界に閉じ込められたわたしの笑顔と恐怖
なかじまあゆこ
ホラー
恐怖の同窓会が始まります。
オレンジ色の提灯に灯る明かりが怖い! 泊まりの同窓会に行った亜沙美は……ここから抜け出すことが出来るのか!帰れるの?
東京都町田市に住んでいる二十五歳の亜沙美は最近嫌な夢を見る。 オレンジ色の提灯に明かりがぽつんと灯りオレンジ色の暖簾には『ご飯屋』と書かれた定食屋。 包丁を握るわたしの手から血がぽたりぽたりと流れ落ちる。この夢に何か隠れているのだろうか? 学生時代のわたしと現在のわたしが交差する。学生時代住んでいたあるのは自然だけの小さな町に同窓会で泊まりで行った亜沙美は……嫌な予感がした。 ツインテールの美奈が企画した同窓会はどこか異様な雰囲気が漂っていた。亜沙美に次々恐怖が迫る。 早く帰りたい。この異様な世界から脱出することは出来るのか。 最後まで読んで頂けるとわかって頂けるかもしれないです。 よろしくお願いします(^-^)/

【完結】禁忌index コトリバコの記録
藍沢 理
ホラー
都市伝説検証サイト『エニグマ・リサーチ』管理人・佐藤慎一が失踪した。彼の友人・高橋健太は、佐藤が残した暗号化ファイル「kotodama.zip」を発見する。
ファイルには、AI怪談生成ブログ「コトリバコ」、自己啓発オンラインサロン「言霊の会」、そして福岡県██村に伝わる「神鳴り様」伝承に関する、膨大な情報が収められていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる