さや荘へようこそ!(あなたの罪は何?)

なかじまあゆこ

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第三章 田本和子

里子に

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  この日の夕飯は里子とキムチ鍋を食べた。キムチ、ニラ、長ネギ、きのこ、白菜、豆腐、豚のバラ肉などをたくさん入れた。野菜がたっぷり食べられるので栄養満点かな。

  わたし達は最近あったこと等を話して盛り上がった。

  里子が派遣切りされたことやルームシェアをしていた友達と喧嘩をしてしまったことやわたしのさや荘との出会い等を話した。

  さや荘のオーナーである森口さやさんの話に里子は興味を持ったようだ。

「へぇー、そのさやさんて不思議な人だね」

「うん、不思議な人だよ。なんていうか人間離れしたオーラが漂っているんだよ。それとわたしに負けないくらい美人なんだよね」

  わたしはさやさんの唇にキラキラと輝く赤リップと綺麗なアーモンド型の瞳を思い出しながら言った。

  森口さやさんのあの白目に濁りがなく黒目が大きくてとても綺麗なアーモンド型の目にぐいぐいと引き込まれ気がつくとわたしは賃貸借契約書に捺印をしていたのだから。

「それってなんだか……そのさやさんに魅入られたみたいだね」

  里子はキムチ鍋の豆腐を食べながら言った。

「……魅入られる。さやさんにわたしが……」

「うん、だって、そうでしょ?  和子ちゃんはそのさやさんの目にぐいぐい~と引き込まれたんだよね」

「うん、まあ確かに……」

  里子の言うようにさやさんのあの綺麗なアーモンド型の目に引き込まれた。天使のような笑顔にも悪魔のような笑顔にも見えるさやさんに……。

  そして、わたしは今、このさや荘で里子とキムチ鍋を食べている。なんだか不思議な気持ちになる。

  どうしてわたしはさや荘にいるのかな?

  どうしてわたしは里子とキムチ鍋を食べているのかな?

  キムチの香りがふわりと漂う。野菜や豚肉がグツグツグツグツと煮える。グツグツグツグツと煮えて湯気が立つ。

「そのさやさんて人に会ってみたいな。どんな人なのか興味が湧くよ」

  里子はお玉で豆腐をすくい取り皿に入れた。そして、美味しそうに食べた。

  わたしも白菜と豆腐をお玉ですくい取り皿に入れた。お鍋の湯気越しに見える里子の笑顔がなんだか……。

「和子ちゃん、どうしたの?」

「……里子」
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