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第三章 田本和子
昔のわたし達は残酷だった
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「やっぱり里子も思い出したくないよね。あれはわたし達の黒歴史だよね……」
わたしは卒業アルバムを机の上に置きながら言った。
「うん、あの頃のわたし達は子供だったよね。麗奈ちゃんの苦しんでいる姿を見て喜んでいたなんて……」
「そうだよね。今思うとわたし達は残酷だったよね。でも済んだことなんだからクヨクヨしても仕方がないよね。里子、お茶飲む?」
「うん、飲む。ありがとう」
わたしは、「お腹も空いたでしょ? パンもあるから食べるよね」と言って台所に向かった。
麗奈のことは悪かったかなとは思うけれど遠い過去のことなのだから気にしないでおこう。わたしはやかんを火にかけ紅茶でも飲んで落ち着こうと思った。
今は、麗奈のことより里子の心配をしなくてはね。
わたしは、お盆に湯気の立つ紅茶のティーカップ二客とベーコンマヨネーズパンを二個載せ部屋に戻った。
「里子、お茶だよ~」
すると里子は机の上に置いてある卒業アルバムをじっと眺めていた。
「あ、和子ちゃん……」
里子は振り向いた。その顔は青ざめていた。
「なんだか顔色が悪いけど里子どうしたの?」
わたしは、テーブルの上にお盆を置きながら聞いた。
「うん、それが……この卒業アルバムがひとりでに動いたんだよ」
里子は卒業アルバムを指差して言った。その指先はブルブルと震えている。
「え? 卒業アルバムがひとりでに動いたってそんな馬鹿なことがあるわけないじゃない。里子疲れているんだよ。紅茶でも飲んで落ち着いたら」
わたしは薔薇柄の座布団に腰を下ろした。そして、ティーカップを手に取り紅茶を飲んだ。うん、紅茶が体をじわりと温めホッとする。
「和子ちゃん、嘘じゃないよ。本当に動いたんだからね」
里子は青ざめた顔でわたしの目の前に座った。
「卒業アルバムに足なんて生えていないんだから動くわけないでしょ?」
わたしは、ベーコンマヨネーズパンに手を伸ばし食べた。うん、ブラックペッパーがピリッときいていて美味しい。
「里子も食べなよ。美味しいよ」
「うん、ありがとう。いただきます」
里子はわたしにお礼を言ってベーコンマヨネーズパンを食べた。それから紅茶も飲んだ。
「里子、ベーコンマヨネーズパン美味しいでしょう?」
「うん、美味しいよ。卒業アルバムがひとりでに動いたのは気のせいだったのかな?」
里子は紅茶のティーカップに口をつけながら言った。
「そうだよ。卒業アルバムがひとりでに動くわけないもんね。気のせいだってば」
わたしは口元に手を当てて笑った。
わたしは卒業アルバムを机の上に置きながら言った。
「うん、あの頃のわたし達は子供だったよね。麗奈ちゃんの苦しんでいる姿を見て喜んでいたなんて……」
「そうだよね。今思うとわたし達は残酷だったよね。でも済んだことなんだからクヨクヨしても仕方がないよね。里子、お茶飲む?」
「うん、飲む。ありがとう」
わたしは、「お腹も空いたでしょ? パンもあるから食べるよね」と言って台所に向かった。
麗奈のことは悪かったかなとは思うけれど遠い過去のことなのだから気にしないでおこう。わたしはやかんを火にかけ紅茶でも飲んで落ち着こうと思った。
今は、麗奈のことより里子の心配をしなくてはね。
わたしは、お盆に湯気の立つ紅茶のティーカップ二客とベーコンマヨネーズパンを二個載せ部屋に戻った。
「里子、お茶だよ~」
すると里子は机の上に置いてある卒業アルバムをじっと眺めていた。
「あ、和子ちゃん……」
里子は振り向いた。その顔は青ざめていた。
「なんだか顔色が悪いけど里子どうしたの?」
わたしは、テーブルの上にお盆を置きながら聞いた。
「うん、それが……この卒業アルバムがひとりでに動いたんだよ」
里子は卒業アルバムを指差して言った。その指先はブルブルと震えている。
「え? 卒業アルバムがひとりでに動いたってそんな馬鹿なことがあるわけないじゃない。里子疲れているんだよ。紅茶でも飲んで落ち着いたら」
わたしは薔薇柄の座布団に腰を下ろした。そして、ティーカップを手に取り紅茶を飲んだ。うん、紅茶が体をじわりと温めホッとする。
「和子ちゃん、嘘じゃないよ。本当に動いたんだからね」
里子は青ざめた顔でわたしの目の前に座った。
「卒業アルバムに足なんて生えていないんだから動くわけないでしょ?」
わたしは、ベーコンマヨネーズパンに手を伸ばし食べた。うん、ブラックペッパーがピリッときいていて美味しい。
「里子も食べなよ。美味しいよ」
「うん、ありがとう。いただきます」
里子はわたしにお礼を言ってベーコンマヨネーズパンを食べた。それから紅茶も飲んだ。
「里子、ベーコンマヨネーズパン美味しいでしょう?」
「うん、美味しいよ。卒業アルバムがひとりでに動いたのは気のせいだったのかな?」
里子は紅茶のティーカップに口をつけながら言った。
「そうだよ。卒業アルバムがひとりでに動くわけないもんね。気のせいだってば」
わたしは口元に手を当てて笑った。
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