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第三章 田本和子
住むところがない
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「えっ! 里子だよね?」
そうなのだ。わたしの目の前には大人っぽくなった中学時代のクラスメイトだった野川里子が立っていた。なんだか少し痩せたように見える。最近の里子の様子は知らなかったけれど。
「そうだよ~和子ちゃん元気そうだね。ずっと会いたいなと思っていたんだよ」
里子はにっこりと微笑みを浮かべた。
「うん、わたしもだよ。里子元気にしてるかなと気になっていたよ。でも、里子なんだか疲れていない?」
「うん、ちょっといろいろあってね……」
里子は入口にある買い物カゴを手に取りながら言った。
「どうしたの?」
「うん、それがね。派遣で働いていたんだけどクビになってしまって……それでお金もないし住むところもなくなって」
里子はしょんぼりと俯いた。
「えっ! どうするのよ! 大変だね」
「うん、和子ちゃん、わたしどうしよう」
里子は助けを求めるような目でわたしの顔を見る。
「住むところがないってどういうことよ?」
「友達とルームシェアしてたんだけど喧嘩して飛び出してきたんだよ」
「……困ったよね。あ、そうだ、わたし今、二LDKのアパートに住んでいるんだけど一部屋あまってるから少しの間だったら置いてあげてもいいよ」
「和子ちゃ~ん、ありがとう~」
里子は飛び上がって喜んだ。
気がつくと里子と同居することになっていた。わたしってこんなにお人好しだったかな。
「いい部屋じゃない」
里子は部屋に入るなり言った。そして部屋の中を食い入るように見る。
「そうかしら。ってそんなに見ないでよ。あ、勝手に人の物を触らないでくれるかな~」
里子は居候のくせに勝手に机の引き出しを開けたりわたしの大切なぬいぐるみを触ったりしているのだから呆れる。
さっきまで泣きそうになっていたくせに。
「ごめんなさい。ついつい気になってしまって……あ、これは卒業アルバムじゃない?」
里子は勝手にわたしの本棚からアルバムを取り出し手に取りながら言った。
「だから人の物を触らないでって言ってるでしょ。ってちょっと待ってアルバムって?」
わたし卒業アルバムなんて持ってきたかな? なんだか心がざわざわする。嫌な気持ちになってきた。
「これ卒業アルバムだよね? 中学校の卒業アルバムだね。懐かしいな」
「ちょっと、里子それ!」
わたしは里子が手にしてる卒業アルバムをパッと奪い取った。
「えっ? 何よ? 和子ちゃんそんなに怒らなくてもいいじゃない」
驚いてきょとん顔の里子をわたしは睨みつけ、「怒っているんじゃないよ。中学校の卒業アルバムなんて実家の物置に置いたままのはずなんだけど!」
中学校の卒業アルバムを持つわたしの手はブルブルと震えた。
そうなのだ。わたしの目の前には大人っぽくなった中学時代のクラスメイトだった野川里子が立っていた。なんだか少し痩せたように見える。最近の里子の様子は知らなかったけれど。
「そうだよ~和子ちゃん元気そうだね。ずっと会いたいなと思っていたんだよ」
里子はにっこりと微笑みを浮かべた。
「うん、わたしもだよ。里子元気にしてるかなと気になっていたよ。でも、里子なんだか疲れていない?」
「うん、ちょっといろいろあってね……」
里子は入口にある買い物カゴを手に取りながら言った。
「どうしたの?」
「うん、それがね。派遣で働いていたんだけどクビになってしまって……それでお金もないし住むところもなくなって」
里子はしょんぼりと俯いた。
「えっ! どうするのよ! 大変だね」
「うん、和子ちゃん、わたしどうしよう」
里子は助けを求めるような目でわたしの顔を見る。
「住むところがないってどういうことよ?」
「友達とルームシェアしてたんだけど喧嘩して飛び出してきたんだよ」
「……困ったよね。あ、そうだ、わたし今、二LDKのアパートに住んでいるんだけど一部屋あまってるから少しの間だったら置いてあげてもいいよ」
「和子ちゃ~ん、ありがとう~」
里子は飛び上がって喜んだ。
気がつくと里子と同居することになっていた。わたしってこんなにお人好しだったかな。
「いい部屋じゃない」
里子は部屋に入るなり言った。そして部屋の中を食い入るように見る。
「そうかしら。ってそんなに見ないでよ。あ、勝手に人の物を触らないでくれるかな~」
里子は居候のくせに勝手に机の引き出しを開けたりわたしの大切なぬいぐるみを触ったりしているのだから呆れる。
さっきまで泣きそうになっていたくせに。
「ごめんなさい。ついつい気になってしまって……あ、これは卒業アルバムじゃない?」
里子は勝手にわたしの本棚からアルバムを取り出し手に取りながら言った。
「だから人の物を触らないでって言ってるでしょ。ってちょっと待ってアルバムって?」
わたし卒業アルバムなんて持ってきたかな? なんだか心がざわざわする。嫌な気持ちになってきた。
「これ卒業アルバムだよね? 中学校の卒業アルバムだね。懐かしいな」
「ちょっと、里子それ!」
わたしは里子が手にしてる卒業アルバムをパッと奪い取った。
「えっ? 何よ? 和子ちゃんそんなに怒らなくてもいいじゃない」
驚いてきょとん顔の里子をわたしは睨みつけ、「怒っているんじゃないよ。中学校の卒業アルバムなんて実家の物置に置いたままのはずなんだけど!」
中学校の卒業アルバムを持つわたしの手はブルブルと震えた。
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