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第二章 中西真紀
逃げよう
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「森口さん、どうして笑っているんですか?
由美は苦しんでいるんですよ」
わたしは嬉しそうにうふふと笑う森口さんをキッと睨みつけた。
「あらあら、相田さんを庇うんですね。逆恨みされたのに可笑しいですね~」
森口さんは赤リップがキラキラと輝いている唇の口角を上げて笑った。
「逆恨みされたってなんだって由美はわたしの友達ですから! それに森口さんには関係ないことですからね」
そうだよ。由美のことも麗奈のことだって森口さんには関係ないことなのだから構わないでほしい。
わたしは、座り込み泣き崩れている由美の腕を掴み、「逃げよう」と言った。
こんな怪しげなさや荘になんて一秒だっていたくない。
「真紀ちゃん!」
由美は顔を上げてわたしの顔を見た。
「さあ、由美ちゃん早く逃げようよ」
由美は立ち上がり「逃げられるかな?」と言った。
心配そうに顔を曇らせる由美の腕をわたしは強く引っ張り立ち上がらせた。
「さあ、由美ちゃん逃げるよ」
「うん、真紀ちゃん」
わたしと由美は玄関を出た。
「うふふ、逃げても無駄よ」
森口さんの不気味な声が聞こえてくるけれど相手にしない。頭のおかしい人がいますと警察にでも通報しなくては。
「真紀ちゃん……わたし」
由美が立ち止まろうとする。
「どうしたの? 早く逃げなきゃ森口さんが追いかけてくるよ」
「うん、それは分かっているけどわたしは四階の部屋にいるんだよ」
由美は悲痛な面持ちで言った。
「由美ちゃん、言ってる意味が分からないんだけど……」
だって、由美はここにいるのに四階の部屋にいるなんておかしいではないか。
「真紀ちゃん! 四階に来てわたしを助けて!」
由美はそう言って逆にわたしの腕を引っ張り歩き出したかと思うと階段を駆け上がった。
「ちょっと由美ちゃんってば」
わたしは由美に引きずられる形で階段を駆け上がる。
四階の部屋にいるなんて言っている意味がよく分からないけれど由美を助けたいなと思った。
今、わたしと由美は四階の二号室の前にいる。
「わたしはこの部屋の中にいるよ」
由美はそう言いながら二号室の玄関のドアをじっと眺めた。
「……そ、そんなバカなことがあるの?」
わたしも二号室の玄関のドアをじっと眺めた。由美が部屋の中にいるなんて有り得ない。そんなことは有り得ないはずだ。
だって、由美はわたしの隣に立っているのだから。
その時、部屋の中から。
ドンドンドンドンドンと玄関のドアを叩く音が聞こえてきた。
ドンドンドンドンドンドンドンと玄関のドアを激しく叩く音が鳴り響く。
「わたしがドアを叩いている」
「由美ちゃんが?」
わたしは由美の横顔をチラリと見た。玄関のドアを睨みつける由美のその表情に嘘はないようだ。
まさか、本当に由美はこの部屋の中にいるのだろうか? そんなことがあるのだろうかと思ったその時。
「相田さんに中西さん、逃がさないわよ」
森口さんの地の底から響くような声が聞こえてきた。
その声にゾクリとしながら振り返ると森口さんがニヤリと笑っていた。赤リップの塗られた唇がキラキラと輝いている。
由美は苦しんでいるんですよ」
わたしは嬉しそうにうふふと笑う森口さんをキッと睨みつけた。
「あらあら、相田さんを庇うんですね。逆恨みされたのに可笑しいですね~」
森口さんは赤リップがキラキラと輝いている唇の口角を上げて笑った。
「逆恨みされたってなんだって由美はわたしの友達ですから! それに森口さんには関係ないことですからね」
そうだよ。由美のことも麗奈のことだって森口さんには関係ないことなのだから構わないでほしい。
わたしは、座り込み泣き崩れている由美の腕を掴み、「逃げよう」と言った。
こんな怪しげなさや荘になんて一秒だっていたくない。
「真紀ちゃん!」
由美は顔を上げてわたしの顔を見た。
「さあ、由美ちゃん早く逃げようよ」
由美は立ち上がり「逃げられるかな?」と言った。
心配そうに顔を曇らせる由美の腕をわたしは強く引っ張り立ち上がらせた。
「さあ、由美ちゃん逃げるよ」
「うん、真紀ちゃん」
わたしと由美は玄関を出た。
「うふふ、逃げても無駄よ」
森口さんの不気味な声が聞こえてくるけれど相手にしない。頭のおかしい人がいますと警察にでも通報しなくては。
「真紀ちゃん……わたし」
由美が立ち止まろうとする。
「どうしたの? 早く逃げなきゃ森口さんが追いかけてくるよ」
「うん、それは分かっているけどわたしは四階の部屋にいるんだよ」
由美は悲痛な面持ちで言った。
「由美ちゃん、言ってる意味が分からないんだけど……」
だって、由美はここにいるのに四階の部屋にいるなんておかしいではないか。
「真紀ちゃん! 四階に来てわたしを助けて!」
由美はそう言って逆にわたしの腕を引っ張り歩き出したかと思うと階段を駆け上がった。
「ちょっと由美ちゃんってば」
わたしは由美に引きずられる形で階段を駆け上がる。
四階の部屋にいるなんて言っている意味がよく分からないけれど由美を助けたいなと思った。
今、わたしと由美は四階の二号室の前にいる。
「わたしはこの部屋の中にいるよ」
由美はそう言いながら二号室の玄関のドアをじっと眺めた。
「……そ、そんなバカなことがあるの?」
わたしも二号室の玄関のドアをじっと眺めた。由美が部屋の中にいるなんて有り得ない。そんなことは有り得ないはずだ。
だって、由美はわたしの隣に立っているのだから。
その時、部屋の中から。
ドンドンドンドンドンと玄関のドアを叩く音が聞こえてきた。
ドンドンドンドンドンドンドンと玄関のドアを激しく叩く音が鳴り響く。
「わたしがドアを叩いている」
「由美ちゃんが?」
わたしは由美の横顔をチラリと見た。玄関のドアを睨みつける由美のその表情に嘘はないようだ。
まさか、本当に由美はこの部屋の中にいるのだろうか? そんなことがあるのだろうかと思ったその時。
「相田さんに中西さん、逃がさないわよ」
森口さんの地の底から響くような声が聞こえてきた。
その声にゾクリとしながら振り返ると森口さんがニヤリと笑っていた。赤リップの塗られた唇がキラキラと輝いている。
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