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第二章 中西真紀
2さや荘へようこそ
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「うふふ、さや荘にようこそ~」
どこかから声が聞こえてきた。
「も、森口さん!」
由美の目に怯えたような光があり肩が震えている。
「えっ? 森口さんって?」
由美の目はわたしの後ろ辺りを見ているようだ。
「も、森口さんがわたしを四階の部屋に閉じ込めたのよ。真紀ちゃんの後ろにいるわよ」
「森口さんが?」
わたしはそう言いながら後ろを振り返ると森口さんが立っていた。
「森口さん! どうしてわたしの部屋にいるんですか?」
森口さんはわたしの質問には答えずニヤリと笑いながら、「うふふ、さや荘にようこそ~あなたの罪は何ですか?」と言った。
そのニヤリと笑う森口さんの唇には赤リップがキラキラと輝いていた。
「何を言っているんですか? 部屋に勝手に入って来ないでくださいよ」
森口さんの様子はどこかおかしい。いつもの可愛らしい笑顔の森口さんと違う。
森口さんのニヤリと笑う表情を見ていると背中がゾクゾクしてきた。
「うふふ。わたしは恨みを晴らす代行をしてるのよ。さや荘にようこそ~」
森口さんは口角を上げて楽しそうに笑っている。
「恨みを晴らす代行ですか? それって何ですか?」
「わたしは罪人を成敗しているのよ。中西さんは罪人ですよ」
「……罪人を成敗って……わたしが罪人?」
森口さんはなんだか変だ。ちょっとヤバそうで恐ろしい。
「そうよ罪人ですよ。相田さんはあなたを恨んでいるわよ。そうよね相田さん」
そう言って森口さんは由美の顔を見た。
「それは……そうですけど……だけど、やっぱり真紀ちゃんはわたしの友達ですから」
「あら、そうなの? 変ね? 相田さんがわたしに中西さんを成敗してくださいって依頼したのにね」
「由美ちゃんが! まさか……」
「わたしは、真紀ちゃんに助けてもらいたかった。田本さん達からいじめられている麗奈ちゃんを一緒に救ってほしかった。だけど、真紀ちゃんは助けてくれなかった」
由美はわたしの顔を見て言った。
「……それはそうだけど、由美だって麗奈ちゃんを助けようとしなかったじゃない」
わたしは由美を睨んだ。だって、麗奈ちゃんを助けようなんて由美は言わなかった。
由美がいつも廊下側の後ろから二番目の席に座っている麗奈を心配そうに眺めていることには気がついていた。
だけど、由美は麗奈をチラチラと心配そうに眺めているだけで助けようなんて言ったことなんて一度もない。
わたしも麗奈のことは可哀想だなと思っていたけれど田本和子にいじめられるかもしれないと思うと助けることなんてできなかった。
わたしは、卑怯者かもしれない。でもそれは由美だって同罪のはずだ。
「由美ちゃんだって心配してるだけで麗奈ちゃんを助けようとしなかったんだからわたしと同じはずだよ」
「そうかもしれないね。ううん、わたしの方がむしろ……」
由美はそう言って涙をぽろりと流した。
「由美ちゃん」
「そうわたしの方が悪い子だったと思う。だって、麗奈ちゃんとわたしは小学生の頃は友達だったのに……わたしは助けようとしなかったんだから。真紀ちゃんのせいにしてごめんなさい」
由美はそう言ったかと思うとずるずると座り込み泣き崩れた。
わたしはそんな由美をぼーっと眺めた。
「うふふ、あなた達は罪人ですね」
森口さんは泣き崩れている由美とわたしを交互に見て笑った。
どこかから声が聞こえてきた。
「も、森口さん!」
由美の目に怯えたような光があり肩が震えている。
「えっ? 森口さんって?」
由美の目はわたしの後ろ辺りを見ているようだ。
「も、森口さんがわたしを四階の部屋に閉じ込めたのよ。真紀ちゃんの後ろにいるわよ」
「森口さんが?」
わたしはそう言いながら後ろを振り返ると森口さんが立っていた。
「森口さん! どうしてわたしの部屋にいるんですか?」
森口さんはわたしの質問には答えずニヤリと笑いながら、「うふふ、さや荘にようこそ~あなたの罪は何ですか?」と言った。
そのニヤリと笑う森口さんの唇には赤リップがキラキラと輝いていた。
「何を言っているんですか? 部屋に勝手に入って来ないでくださいよ」
森口さんの様子はどこかおかしい。いつもの可愛らしい笑顔の森口さんと違う。
森口さんのニヤリと笑う表情を見ていると背中がゾクゾクしてきた。
「うふふ。わたしは恨みを晴らす代行をしてるのよ。さや荘にようこそ~」
森口さんは口角を上げて楽しそうに笑っている。
「恨みを晴らす代行ですか? それって何ですか?」
「わたしは罪人を成敗しているのよ。中西さんは罪人ですよ」
「……罪人を成敗って……わたしが罪人?」
森口さんはなんだか変だ。ちょっとヤバそうで恐ろしい。
「そうよ罪人ですよ。相田さんはあなたを恨んでいるわよ。そうよね相田さん」
そう言って森口さんは由美の顔を見た。
「それは……そうですけど……だけど、やっぱり真紀ちゃんはわたしの友達ですから」
「あら、そうなの? 変ね? 相田さんがわたしに中西さんを成敗してくださいって依頼したのにね」
「由美ちゃんが! まさか……」
「わたしは、真紀ちゃんに助けてもらいたかった。田本さん達からいじめられている麗奈ちゃんを一緒に救ってほしかった。だけど、真紀ちゃんは助けてくれなかった」
由美はわたしの顔を見て言った。
「……それはそうだけど、由美だって麗奈ちゃんを助けようとしなかったじゃない」
わたしは由美を睨んだ。だって、麗奈ちゃんを助けようなんて由美は言わなかった。
由美がいつも廊下側の後ろから二番目の席に座っている麗奈を心配そうに眺めていることには気がついていた。
だけど、由美は麗奈をチラチラと心配そうに眺めているだけで助けようなんて言ったことなんて一度もない。
わたしも麗奈のことは可哀想だなと思っていたけれど田本和子にいじめられるかもしれないと思うと助けることなんてできなかった。
わたしは、卑怯者かもしれない。でもそれは由美だって同罪のはずだ。
「由美ちゃんだって心配してるだけで麗奈ちゃんを助けようとしなかったんだからわたしと同じはずだよ」
「そうかもしれないね。ううん、わたしの方がむしろ……」
由美はそう言って涙をぽろりと流した。
「由美ちゃん」
「そうわたしの方が悪い子だったと思う。だって、麗奈ちゃんとわたしは小学生の頃は友達だったのに……わたしは助けようとしなかったんだから。真紀ちゃんのせいにしてごめんなさい」
由美はそう言ったかと思うとずるずると座り込み泣き崩れた。
わたしはそんな由美をぼーっと眺めた。
「うふふ、あなた達は罪人ですね」
森口さんは泣き崩れている由美とわたしを交互に見て笑った。
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