さや荘へようこそ!(あなたの罪は何?)

なかじまあゆこ

文字の大きさ
上 下
39 / 74
第二章 中西真紀

2さや荘へようこそ

しおりを挟む
「うふふ、さや荘にようこそ~」

  どこかから声が聞こえてきた。

「も、森口さん!」

  由美の目に怯えたような光があり肩が震えている。

「えっ?  森口さんって?」

  由美の目はわたしの後ろ辺りを見ているようだ。

「も、森口さんがわたしを四階の部屋に閉じ込めたのよ。真紀ちゃんの後ろにいるわよ」

「森口さんが?」

  わたしはそう言いながら後ろを振り返ると森口さんが立っていた。

「森口さん!  どうしてわたしの部屋にいるんですか?」

  森口さんはわたしの質問には答えずニヤリと笑いながら、「うふふ、さや荘にようこそ~あなたの罪は何ですか?」と言った。

  そのニヤリと笑う森口さんの唇には赤リップがキラキラと輝いていた。

「何を言っているんですか?  部屋に勝手に入って来ないでくださいよ」

  森口さんの様子はどこかおかしい。いつもの可愛らしい笑顔の森口さんと違う。

  森口さんのニヤリと笑う表情を見ていると背中がゾクゾクしてきた。


「うふふ。わたしは恨みを晴らす代行をしてるのよ。さや荘にようこそ~」

  森口さんは口角を上げて楽しそうに笑っている。

「恨みを晴らす代行ですか?  それって何ですか?」

「わたしは罪人を成敗しているのよ。中西さんは罪人ですよ」

「……罪人を成敗って……わたしが罪人?」

  森口さんはなんだか変だ。ちょっとヤバそうで恐ろしい。

「そうよ罪人ですよ。相田さんはあなたを恨んでいるわよ。そうよね相田さん」

  そう言って森口さんは由美の顔を見た。

「それは……そうですけど……だけど、やっぱり真紀ちゃんはわたしの友達ですから」

「あら、そうなの?  変ね?  相田さんがわたしに中西さんを成敗してくださいって依頼したのにね」

「由美ちゃんが!  まさか……」

「わたしは、真紀ちゃんに助けてもらいたかった。田本さん達からいじめられている麗奈ちゃんを一緒に救ってほしかった。だけど、真紀ちゃんは助けてくれなかった」

  由美はわたしの顔を見て言った。

「……それはそうだけど、由美だって麗奈ちゃんを助けようとしなかったじゃない」

  わたしは由美を睨んだ。だって、麗奈ちゃんを助けようなんて由美は言わなかった。



  由美がいつも廊下側の後ろから二番目の席に座っている麗奈を心配そうに眺めていることには気がついていた。

  だけど、由美は麗奈をチラチラと心配そうに眺めているだけで助けようなんて言ったことなんて一度もない。

  わたしも麗奈のことは可哀想だなと思っていたけれど田本和子にいじめられるかもしれないと思うと助けることなんてできなかった。

  わたしは、卑怯者かもしれない。でもそれは由美だって同罪のはずだ。

「由美ちゃんだって心配してるだけで麗奈ちゃんを助けようとしなかったんだからわたしと同じはずだよ」

「そうかもしれないね。ううん、わたしの方がむしろ……」

  由美はそう言って涙をぽろりと流した。

「由美ちゃん」

「そうわたしの方が悪い子だったと思う。だって、麗奈ちゃんとわたしは小学生の頃は友達だったのに……わたしは助けようとしなかったんだから。真紀ちゃんのせいにしてごめんなさい」

  由美はそう言ったかと思うとずるずると座り込み泣き崩れた。

  わたしはそんな由美をぼーっと眺めた。

「うふふ、あなた達は罪人ですね」

  森口さんは泣き崩れている由美とわたしを交互に見て笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最終死発電車

真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。 直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。 外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。 生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。 「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!

あの子が追いかけてくる

なかじまあゆこ
ホラー
雪降る洋館に閉じ込められた!! 幼い日にしたことがわたしを追いかけてくる。そんな夢を見る未央。 ある日、古本屋で買った本を捲っていると 『退屈しているあなたへ』『人生の息抜きを』一人一泊五千円で雪降る洋館に宿泊できますと書かれたチラシが挟まっていた。 そのチラシを見た未央と偶然再会した中学時代の同級生京香は雪降る洋館へ行くことにした。 大雪が降り帰れなくなる。雪降る洋館に閉じ込められるなんて思っていなかった未央は果たして……。 ホラー&ミステリになります。悪意、妬み、嫉妬などをホラーという形で書いてみました。最後まで読んで頂くとそうだったんだと思って頂けるかもしれません。 2018年エブリスタ優秀作品です。

怪奇蒐集帳(短編集)

naomikoryo
ホラー
【★◆毎朝6時30分更新◆★】この世には、知ってはいけない話がある。  怪談、都市伝説、語り継がれる呪い——  どれもがただの作り話かもしれない。  だが、それでも時々、**「本物」**が紛れ込むことがある。  本書は、そんな“見つけてしまった”怪異を集めた一冊である。  最後のページを閉じるとき、あなたは“何か”に気づくことになるだろう——。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

二人称・短編ホラー小説集 『あなた』

シルヴァ・レイシオン
ホラー
普通の小説に読み飽きたそこの『あなた』 そんな『あなた』にオススメします、二人称と言う「没入感」+ホラーの旋律にて、是非、戦慄してみて下さい・・・・・・ ※このシリーズ、短編ホラー・二人称小説『あなた』は、色んな"視点"のホラーを書きます。  様々な「死」「痛み」「苦しみ」「悲しみ」「因果」などを描きますので本当に苦手な方、なんらかのトラウマ、偏見などがある人はご遠慮下さい。  小説としては珍しい「二人称」視点をベースにしていきますので、例えば洗脳されやすいような方もご観覧注意、願います。

あやかし雑草カフェ社員寮 ~社長、離婚してくださいっ!~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 令和のはじめ。  めでたいはずの10連休を目前に仕事をクビになった、のどか。  同期と呑んだくれていたのだが、目を覚ますと、そこは見知らぬ会社のロビーで。  酔った弾みで、イケメンだが、ちょっと苦手な取引先の社長、成瀬貴弘とうっかり婚姻届を出してしまっていた。  休み明けまでは正式に受理されないと聞いたのどかは、10連休中になんとか婚姻届を撤回してもらおうと頑張る。  職だけでなく、住む場所も失っていたのどかに、貴弘は住まいを提供してくれるが、そこは草ぼうぼうの庭がある一軒家で。  おまけにイケメンのあやかしまで住んでいた。  庭にあふれる雑草を使い、雑草カフェをやろうと思うのどかだったが――。

ママが呼んでいる

杏樹まじゅ
ホラー
鐘が鳴る。夜が来る。──ママが彼らを呼んでいる。 京都の大学に通う九条マコト(くじょうまこと)と恋人の新田ヒナ(あらたひな)は或る日、所属するオカルトサークルの仲間と、島根にあるという小さな寒村、真理弥村(まりやむら)に向かう。隠れキリシタンの末裔が暮らすというその村には百年前まで、教会に人身御供を捧げていたという伝承があるのだった。その時、教会の鐘が大きな音を立てて鳴り響く。そして二人は目撃する。彼らを待ち受ける、村の「夜」の姿を──。

処理中です...