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第二章 中西真紀
中西真紀
しおりを挟むわたしは中西真紀。二十五歳だ。中学時代はショートカットで真っ黒に日焼けした女の子だった。そんなわたしは高校生になってから髪の毛を伸ばした。
髪の毛を伸ばしたのには理由はあるのだけど……。
森口さんが運んできてくれたチョコレートケーキを食べているとなぜだか昔の懐かしい記憶が蘇ってきた。
不思議に思いながらチョコレートケーキを口に運ぶ。濃厚なチョコレートの味が口いっぱいに広がる。うん、美味しい。
昔のことを思い出すのは由美と久しぶりに会ったからかもしれない。きっとそうに違いない。中学時代は良い思い出もあるけれど思い出したくないこともある。
そんなことを考えながらコーヒーを飲んでいると壁に貼られているチラシが目に入った。
あれは何だろう?
『さや荘にようこそ! お得な物件ですよ。なんとさやカフェのモーニングセットが無料で食べられますよ』
とそのチラシに書かれていた。
「さや荘に興味がありますか?」
わたしがチラシをじっと眺めていると突然真後ろから声を掛けられびっくりした。
その声に振り向くと森口さんがニコニコと笑っていた。
「あ、モーニングセットが無料で食べられるなんて珍しいなと思いまして」
「うふふ、珍しいですよね。わたし森口さやの美味しいモーニングセットが食べられますよ」
森口さんは口元に手を当ててうふふと笑っている。笑っている森口さんの唇に塗られている赤リップが綺麗だなと思いじっと眺めてしまった。
「そうなんですね。朝から森口さんのモーニングセットが食べられるなんて羨ましいですよ」
「うふふ、羨ましいですか? もしさや荘に興味があるようでしたらご案内しますよ」
森口さんのその言葉になんだかぐぐーっと引き込まれそうになった。
「わたし、さや荘に興味があります」
気がつくとわたしはとんでもないことを口走っていた。
「うふふ、さや荘にようこそかしらね」
森口さんはにんまりと笑った。
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