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第一章 相田由美
麗奈の気持ちは
しおりを挟むだけど、わたしは麗奈の顔写真を塗りつぶしたかったわけじゃない。
麗奈の顔を塗りつぶすとわたしの心が真っ黒になり悪魔の仲間入りをしたのかとそんなことを思いながらわたしは、卒業アルバムを眺めた。
辛かった卒業式の嫌な記憶ジワジワと甦ってきた。
「相田さんがいじめの主犯じゃなくても麗奈さんは相田さんに顔写真を塗りつぶされたことが何よりも辛かったんだと思いますよ」
森口さんはわたしの顔をじっと見つめそれからうふふと笑った。
「わたしに顔写真を塗りつぶされたことが……」
「そうよ。麗奈さんは相田さんあなたと友達になりたかったんだと思うわよ」
「……麗奈がわたしと友達にですか?」
「そうですよ。麗奈さんは相田さんと友達になりたかったんですよ。そんな麗奈さんの気持ちに気づかぬままだったあなたは挙げ句の果て麗奈さんの顔写真を塗りつぶしたんですからね」
「……そんな」
わたしは麗奈のことを傷つけた。わたしが思ってた以上に麗奈を傷つけていた。
その時。
麗奈の顔写真を真っ黒に塗りつぶした卒業アルバムがびゅーーーーーーん! とわたしに向かって飛んできた。
「麗奈ごめんなさい! あなたのことを傷つけてごめんなさいーーーー! 本当にごめんなさいーーーー!」
わたしは叫びながら飛んできた卒業アルバムを避けた。
卒業アルバムはわたしの足元にドスンと落ちた。そして、ぺらりぺらりとひとりでに捲れ麗奈の顔写真を真っ黒に塗りつぶしたページが開かれた。
「あっ、麗奈ごめんなさい。麗奈ごめんなさい。わたしを許して、麗奈わたしを許してよ」
気がつくとわたしの頬から涙がこぼれ落ちていた。ぽとぽとぽと涙がこぼれる。
涙が流れて止まらない。
涙がぽたぽたと流れて止まらない。
卒業アルバムの中の真っ黒に塗りつぶされた麗奈の顔写真が悲しいよ辛いよと言っているように見えた。
そして、麗奈の真っ黒に塗りつぶされた顔写真が由美ちゃんあなたが憎いと叫んでいるのではと思いドキドキして恐怖を感じた。
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