さや荘へようこそ!(あなたの罪は何?)

なかじまあゆこ

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第一章 相田由美

あなたを助けない

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「相田さん、悪いけど許してあげないわよ!」

  森口さんのアーモンド形の目が恨みをこめわたしをギロリと睨む。そして、わたしの首に触れたその手に力が入る。

「いっ、いやっ!  やめてーーーーー!」

  わたしは森口さんのその手から逃れようとするも体が動かない。

  わたしはどうなるの……。

  誰か、誰か助けて……。

  お願いだからわたしを助けて、ねえ、誰かわたしを助けてーーーーーー!

「あははっーーーーーーー!  相田さん、誰も助けに来ないわよ。そうよ、誰もあなたを助けない。誰もあなたを助けないのよ相田さん」

  わたしの首に触れた指がわたしの喉を締め付ける。息ができない。助けて、助けて、助けて、誰か助けてーーーーー!

「あははっーーーーっ!  麗奈さんの気持ちが少しは分かったかな?  相田さん分かったかな?」

 森口さんの笑い声が聞こえる。首を絞められ苦しくて意識が遠のきそうになる。

  麗奈の気持ちが少しは分かった気がする……。



  麗奈の辛くて悲しくてどうしようもないその気持ちが少しは分かった気がする……。薄れていく意識の中でわたしは……麗奈ごめんねと謝っていた。

  謝っても麗奈が苦しんだ過去を変えることはできない。ごめんね、ごめんね、ごめんなさい。麗奈を庇うこともできなくて皆と一緒に無視してごめんなさい。

  ごめんなさい、ごめんなさいと謝り続けた。そして、わたしの目の前は真っ暗になり意識が遠のいた。


「相田さん、相田さん大丈夫ですか?」

  誰かがわたしの名前を呼んでいる。この声は誰だろうか?  よく知っている声だと思う。そうよく知っている声なのだ。

  わたしはその声にゾクッと震えながらゆっくりと目を開けた。  

  森口さんが心配そうにわたしの顔を見下ろしていた。

「ひっ!」と思わず声を上げてしまった。

  わたしは慌てて飛び起きた。

「うふふ、相田さんってば気を失うんだからびっくりしましたよ」

  森口さんは何もなかったかのように赤リップの唇をキラキラと輝かせ笑みを浮かべている。

  森口さんがわたしの首を絞めたのは夢だったのかと思ってしまうほど愛らしい笑顔を浮かべている。だけど首が痛い。
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