さや荘へようこそ!(あなたの罪は何?)

なかじまあゆこ

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第一章 相田由美

さや荘にようこそ!

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「さや荘にようこそ!  相田由美さん」

   森口さんはそう言って笑った。

  あまりにもの恐ろしさに身の毛がよだつ。

「さや荘にようこそ!  相田由美さん」

「……」

  ニタリと笑う森口さんのその顔が恐ろしくて声も出ない。

「あら、相田由美さん返事もないのかしら?」

「あ、あ、あなたは何者なんですか?」

  わたしは喉から声を絞り出し聞いた。

「何者なんですかって?  わたしは森口さやよ」

  森口さんは首を傾げクスッと笑った。

「……でも……さっきから話していたのは森口さんですよね?」

「そうよ、わたしよ。相田由美さん、あなたの罪は何ですか?  ってわたしが聞いたのよ」

 森口さんはにっこりと笑いさや荘と書かれている鍵を振り回した。

  森口さんはニヤリと笑っている。



  にっこりと笑う森口さんの顔は可愛らしいけれど恐い。森口さんは一体何者なんだろうか?

「ねえ、相田さん、麗奈さんはどんな気持ちだったのかしらね?  相田さんに無視されて挙げ句の果てには卒業アルバムの写真を塗りつぶされるんだからね」

  森口さんはニヤリと笑いそれから寂しそうに顔を歪めた。

  わたしはなんて答えたらいいのか言葉が出てこなかった。

「あなたは地獄に落ちるといいのよ!  もう這い上がってこれない深い深い地獄の底に落ちるといいのよ!」

   森口さんはそう言いながら一歩一歩わたしにジリジリジリジリ近づいてくる。

「ねえ、相田さん答えられないんだね!  麗奈さんの辛くて苦しいどうしようもない気持ちなんて分からないもんね」

  森口さんはまた一歩わたしに近づいてきた。ジリジリジリジリと近づいてくる。

「あ、謝っても遅いかもしれないけどわたしは後悔している。どうして麗奈ちゃんの顔写真を塗りつぶしてしまったのかなと……」

  そう、わたしは後悔している。大人になってからもふと麗奈の悲しい表情を思い出しては胸がぎゅっと締めつけられる。

「ふーん、後悔しているんだね。そうなのね相田さんは後悔しているんだね」

  また一歩わたしにジリジリジリジリと近づいてくる森口さんはついにわたしの目の前に辿り着きぴたりと足を止めた。

「も、森口さん……」

「相田さん、罪を認めても許してあげないわよ」

  森口さんの赤リップを塗ったキラキラと輝く唇は耳元近くまで裂けた状態で目は吊り上がり恐ろしい形相だ。

「……どうして?  どうして森口さんが怒っているんですか?  どうして……わたし森口さんには何も……」

  森口さんの目はわたしを睨みつけている。麗奈にわたしは酷いことをした。けれど森口さんには何もしていないのに……。

  どうして、そんなに恨みのこもった眼差しでわたしを見るのだろうか?

「森口さん……」

「相田さん、 教えてほしいのかな?」

  そう言った森口さんはわたしの首に手を伸ばした。

「いゃっ!  も、森口さん……」

  森口さんの伸ばしたその手がわたしの首に触れた。

「いゃっ!  やめてよ」

  森口さんの耳元近くまで裂けた唇がニヤリと笑う。

「うふふ、やめてほしいんだ。麗奈さんも心の中でやめて、やめて、やめて、やめてって叫んでいたと思うわよ。でも相田さんはやめなかった!」

「……それは……仕方がなくて」

「仕方がなくてですって!  そんないいわけをしてもダメですよ」

   森口さんのアーモンド形の綺麗な目がピカッと光った。

「ごめんなさいーーー!  ゆ、許してーーー!」
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