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第一章 相田由美
過去を振り返ると
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中学時代のわたしは臆病者でずるい人間だった。人から良い人と思われたくていつもニコニコと笑っていた。
それと、この小さな箱みたいな空間で仲間外れにされることを何よりも恐れていた。
真紀ちゃんとほのかちゃんが友達でいてくれたのでわたしは幸せだった。この二人の友人を失いたくない。
その思いはとても強かった。強くてそれはもう強すぎたのかもしれない。
クラスに緑川麗奈がいた。麗奈とわたしは小学校の同窓生だった。小学生の時は仲が良かったけれど中学生になってからはすれ違った時に挨拶をする程度の仲になっていた。
中学三年生に進級した時に久しぶりに麗奈と同じクラスになった。
わたしは、二年生の時も同じクラスだった真紀ちゃんやほのかちゃんと言う友達がいたので麗奈のことは気に留めていなかった。
「由美ちゃん、久しぶり~同じクラスになったね」
肩をぽんと叩かれ振り返ると麗奈がニコニコと笑っていた。
「あ、麗奈ちゃん久しぶりだね」
わたしも笑い返したのだけど……。
中学時代はどうしていじめ傾向があるのかなと思う。
きっと、思春期でいろいろとストレスが溜まりいじめでストレスを発散しているのかもしれない。
そのいじめの標的にされたら堪ったもんじゃない。
わたしのクラスでもいじめがあった。そのいじめの標的になったのが麗奈だった。
「麗奈ちゃ~ん、あら可愛らしいペンケースだね。でも、麗奈ちゃんには似合わないんじゃな~い」
クラスの中心人物である田本和子がクスクスと笑いながら言った。
「そうよ、麗奈ちゃんには飛行機とかヘリコプターのペンケースが似合うんじゃな~い」
取り巻きの野川里子がケラケラと笑った。
麗奈の机の上には薔薇柄のペンケースが置かれていた。麗奈は俯き薔薇柄のペンケースをじっと見つめていた。
「それから麗奈ちゃんには麗奈って名前も似合わないよね」
田本和子が口元に手を当ててクスクスと笑った。
「そうよ、和子の方がその名前が似合うんじゃな~い」
取り巻きの野川里子が大きな声で笑った。
すると、クラスメイトの何人かがクスクスと笑った。
わたしは、意地悪な田本和子と野川里子が嫌いだった。
だけど、この二人に逆らうとわたしがいじめられてしまいそうで恐ろしくて何も言えなかった。
「そうよ、名前も薔薇柄のペンケースも麗奈ちゃんには似合わないのよ!」
「そうよ、和子の言う通りよ。真っ黒に日焼けした麗奈ちゃんには似合わないよね~」
「そうよ~男の子みたいな容姿のあなたが麗奈だなんて笑っちゃう~」
「こんなペンケースなんて必要ないよね~」
田本和子はそう言って麗奈の机の上にある薔薇柄のペンケースを掴み投げ捨てた。
強く投げ捨てられた薔薇柄のペンケースは床に転がった。
「ちょっと何するのよ!」
麗奈が椅子から立ち上がり薔薇柄のペンケースを拾おうとしたその時。
野川里子が薔薇柄のペンケースをぎゅぎゅーっと足で踏みつけた。
「里子ちゃん! 踏みつけるなんて酷いよ、お母さんに買ってもらった大切なペンケースなのに」
麗奈は歯を食いしばり悲しそうに野川里子を睨んだ。
「ふん! 似合わない物を持っているからよ」
そう言って野川里子は麗奈の薔薇柄のペンケースをもう一度ぎゅーっと踏みつけた。
「やめてよーー! 里子ちゃん酷いよ」
麗奈は取り返そうとして野川里子が踏みつけている薔薇柄のペンケースに手を伸ばした。
すると。
野川里子の足は手を伸ばした麗奈ちゃんのその手を踏みつけた。
「いっ! 痛いーーーーーっ!」
麗奈は大きな叫び声を上げた。
わたしもびっくりして声を上げそうになった。だけど、声は出なくて……。
その光景を見ていたクラスメイトはわたしを含め誰も麗奈を助けようとはしなかった。
野川里子はニヤリと笑い、麗奈の手を踏みつけながら田本和子の顔を見た。
すると、田本和子は「あら、麗奈ちゃん痛そうね」と言ってケラケラと笑った。
ニヤリ、ケラケラと笑う野川里子と田本和子の表情はまるで悪魔のようだった。
「あははっ、麗奈ちゃん返してほしいのね。じゃあ、返してあげるわよ~」
野川里子は踏みつけていた麗奈の手から足を退け、床に無惨に転がっている薔薇柄のペンケースに手を伸ばし拾ったかと思うと、ぽーいと投げた。
「あっ、そんな!」
「あははっ、返してあげたよ~」
野川里子はケラケラと笑う。
「良かったね。麗奈ちゃん」
田本和子は口元に手を当ててククッと笑った。
「酷いよ、あんまりだよ」
薔薇柄のペンケースを拾う麗奈の後ろ姿は辛くて悲しそうだった。
わたしの胸もぎゅっと痛んだ。だけど、わたしは麗奈に声をかけることもできなかった。こんな自分が大嫌いだ。
田本和子と野川里子、この二人は美しくて綺麗な人間の仮面を被った悪魔だと思った。
些細なことで麗奈がいじめの標的になった。田本和子と野川里子は和子と里子と言う名前が古臭くてダサくて嫌いだと話していることを耳にしたことがある。
中学時代のわたしは臆病者でずるい人間だった。人から良い人と思われたくていつもニコニコと笑っていた。
それと、この小さな箱みたいな空間で仲間外れにされることを何よりも恐れていた。
真紀ちゃんとほのかちゃんが友達でいてくれたのでわたしは幸せだった。この二人の友人を失いたくない。
その思いはとても強かった。強くてそれはもう強すぎたのかもしれない。
クラスに緑川麗奈がいた。麗奈とわたしは小学校の同窓生だった。小学生の時は仲が良かったけれど中学生になってからはすれ違った時に挨拶をする程度の仲になっていた。
中学三年生に進級した時に久しぶりに麗奈と同じクラスになった。
わたしは、二年生の時も同じクラスだった真紀ちゃんやほのかちゃんと言う友達がいたので麗奈のことは気に留めていなかった。
「由美ちゃん、久しぶり~同じクラスになったね」
肩をぽんと叩かれ振り返ると麗奈がニコニコと笑っていた。
「あ、麗奈ちゃん久しぶりだね」
わたしも笑い返したのだけど……。
中学時代はどうしていじめ傾向があるのかなと思う。
きっと、思春期でいろいろとストレスが溜まりいじめでストレスを発散しているのかもしれない。
そのいじめの標的にされたら堪ったもんじゃない。
わたしのクラスでもいじめがあった。そのいじめの標的になったのが麗奈だった。
「麗奈ちゃ~ん、あら可愛らしいペンケースだね。でも、麗奈ちゃんには似合わないんじゃな~い」
クラスの中心人物である田本和子がクスクスと笑いながら言った。
「そうよ、麗奈ちゃんには飛行機とかヘリコプターのペンケースが似合うんじゃな~い」
取り巻きの野川里子がケラケラと笑った。
麗奈の机の上には薔薇柄のペンケースが置かれていた。麗奈は俯き薔薇柄のペンケースをじっと見つめていた。
「それから麗奈ちゃんには麗奈って名前も似合わないよね」
田本和子が口元に手を当ててクスクスと笑った。
「そうよ、和子の方がその名前が似合うんじゃな~い」
取り巻きの野川里子が大きな声で笑った。
すると、クラスメイトの何人かがクスクスと笑った。
わたしは、意地悪な田本和子と野川里子が嫌いだった。
だけど、この二人に逆らうとわたしがいじめられてしまいそうで恐ろしくて何も言えなかった。
「そうよ、名前も薔薇柄のペンケースも麗奈ちゃんには似合わないのよ!」
「そうよ、和子の言う通りよ。真っ黒に日焼けした麗奈ちゃんには似合わないよね~」
「そうよ~男の子みたいな容姿のあなたが麗奈だなんて笑っちゃう~」
「こんなペンケースなんて必要ないよね~」
田本和子はそう言って麗奈の机の上にある薔薇柄のペンケースを掴み投げ捨てた。
強く投げ捨てられた薔薇柄のペンケースは床に転がった。
「ちょっと何するのよ!」
麗奈が椅子から立ち上がり薔薇柄のペンケースを拾おうとしたその時。
野川里子が薔薇柄のペンケースをぎゅぎゅーっと足で踏みつけた。
「里子ちゃん! 踏みつけるなんて酷いよ、お母さんに買ってもらった大切なペンケースなのに」
麗奈は歯を食いしばり悲しそうに野川里子を睨んだ。
「ふん! 似合わない物を持っているからよ」
そう言って野川里子は麗奈の薔薇柄のペンケースをもう一度ぎゅーっと踏みつけた。
「やめてよーー! 里子ちゃん酷いよ」
麗奈は取り返そうとして野川里子が踏みつけている薔薇柄のペンケースに手を伸ばした。
すると。
野川里子の足は手を伸ばした麗奈ちゃんのその手を踏みつけた。
「いっ! 痛いーーーーーっ!」
麗奈は大きな叫び声を上げた。
わたしもびっくりして声を上げそうになった。だけど、声は出なくて……。
その光景を見ていたクラスメイトはわたしを含め誰も麗奈を助けようとはしなかった。
野川里子はニヤリと笑い、麗奈の手を踏みつけながら田本和子の顔を見た。
すると、田本和子は「あら、麗奈ちゃん痛そうね」と言ってケラケラと笑った。
ニヤリ、ケラケラと笑う野川里子と田本和子の表情はまるで悪魔のようだった。
「あははっ、麗奈ちゃん返してほしいのね。じゃあ、返してあげるわよ~」
野川里子は踏みつけていた麗奈の手から足を退け、床に無惨に転がっている薔薇柄のペンケースに手を伸ばし拾ったかと思うと、ぽーいと投げた。
「あっ、そんな!」
「あははっ、返してあげたよ~」
野川里子はケラケラと笑う。
「良かったね。麗奈ちゃん」
田本和子は口元に手を当ててククッと笑った。
「酷いよ、あんまりだよ」
薔薇柄のペンケースを拾う麗奈の後ろ姿は辛くて悲しそうだった。
わたしの胸もぎゅっと痛んだ。だけど、わたしは麗奈に声をかけることもできなかった。こんな自分が大嫌いだ。
田本和子と野川里子、この二人は美しくて綺麗な人間の仮面を被った悪魔だと思った。
些細なことで麗奈がいじめの標的になった。田本和子と野川里子は和子と里子と言う名前が古臭くてダサくて嫌いだと話していることを耳にしたことがある。
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