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第一章 相田由美
昔の友達とさやカフェへ
しおりを挟む真紀ちゃんはわたしの顔を見つめてニコニコと笑っている。その笑顔を見ているとあの卒業アルバムが頭の中に浮かんでくる。
思い出したくない記憶が浮かんでは消える……。
ぽつりぽつり浮かんでは消える……。
「由美ちゃんどうしたの?」
「あ、ぼーっとしてたね。ごめんね」
「変な由美ちゃん。あ、ねえ時間があれば今からお茶しない? ちょうどカフェの前じゃん」
「……あ、うん」
わたしは答えながら窓の外から店内をチラリと見た。森口さんのテーブルを拭いている姿が目に入った。
「よし、決まり~入ろう」
真紀ちゃんはそう言いながらさやカフェの扉を開いた。
カランコロンとドアベルが鳴った。
「さやカフェへようこそ~」
森口さんは両手を広げ微笑みを浮かべた。その口元には赤リップがキラキラと輝いていた。
「あら、相田さんじゃない。それから……」
「お邪魔します。友達と来ました」
「うふふ、ありがとうございます。お好きな席にどうぞ~」
森口さんはにっこりと微笑み綺麗な黒髪を揺らしホールに戻り、すぐにお盆にグラスを載せて戻ってきた。
「お冷です。ご注文が決まりましたらお呼びくださいね」
森口さんは、グラスをわたし達の前に置きパタパタと黒髪を揺らしホールに戻った。
「木の温もりが感じられる良い雰囲気のカフェだね。さっき、相田さんって呼ばれていたけど由美ちゃんあの店員さんと知り合いなの?」
真紀ちゃんは店内を見渡しながら言った。
「うん……このカフェの良い香りに誘われて気がついたら入っていたんだよ。その時、森口さん、あ、あの店員さんね、と話をして……」
わたしは、このさやカフェの四階に住んでいることを話すことになぜだか戸惑いを覚えてしまった。
「ふーん、そうなんだね。わかるよ~わたしもカフェ好きだから。あ、美味しそうだね」
真紀ちゃんはメニューに手を伸ばし楽しそうに眺めている。
真紀ちゃんはエビピラフとコーヒーを注文し、わたしはホットココアとチョコレートケーキを注文した。
「あま~い! ホットココアとチョコレートケーキ美味しいけど甘すぎたかも~」
「由美ちゃんってばホットココアとチョコレートケーキって飲み物も食べ物も甘いもんね。でもまあそれも有りじゃない」
真紀ちゃんはうふふと笑いながらエビピラフを食べた。
「うん、わたし甘いもの好きだもんね」
わたしは、ぷくりと頬を膨らませチョコレートケーキを食べココアを飲んだ。甘いけれどホッとした。
「由美ちゃん、なんだか強がりみたいだぞ」
こうして真紀ちゃんと話をして食事をしていると学生時代にタイムスリップしたように感じられる。
真紀ちゃんは美味しそうにエビピラフを食べている。一緒にお弁当を食べたあの日が懐かしい。
それと……。
幸せな気持ちと嫌な気持ちがくるくると絡まり合った。思い出したくないことがある。
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