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大人の参観日
怪しげなサングラス
しおりを挟むお昼休みが終わりわたしと真理子は職場のホテルに戻る。両親達にゆっくりと沖縄を満喫してきてねと手を振る。
なのに……。
てっきり、観光に出掛けたと思ったのに。
箒で庭の掃除をしていると、何か視線を感じた。何か変だなとは思ったけれど、あまり気にも止めずにシャカシャカと庭掃除を続けた。
だがしかし、様子がおかしい。
「真理子、何か視線を感じない」
「わたしもそう思っていたよ」
わたしと真理子は小声で言い合う。
真理子と息を合わせて、くるりと後ろ振り返ると、怪しげなサングラスが四つ。
サングラス姿の男性二人に、女性二人……。
ああ、これは……。
わたしの両親と真理子の両親だ。やめてよね。そんな木の後ろに隠れて気がつかないとでも思っているのかな?
サングラスが四つ。木の後ろから見える。真っ黒なサングラス。誰かを思い出す。そうだ亜利子ちゃんを……。
沖縄そばを食い逃げした亜利子ちゃんの姿を思い出すと笑えてくる。四人の姿があの日の亜利子ちゃんと重なる。沖縄そばを食い逃げした亜利子ちゃんも真っ黒なサングラスをかけていた。
木の左側にわたしの父親と母親。右側に真理子の父親と母親。なんて滑稽な姿なんだろう。不審者として通報されても知らないよ。
わたしの隣に立っている真理子は、口をパクパクさせながら、箒を一生懸命動かしている。
「ねえ、真理子、あの四人気がついてないと思っているのかな?」
「たぶんそうだよ。あのサングラス何処で買ってきたのかな?」
真理子の気になるところは購入先なのか……。
「知らないわよ」
箒を動かしながら答える。
「みどりちゃん、あの四人は何をやっているのかな?」
「わたし達のことが気になり参観日中なんじゃないの」
「勘弁してほしいよね」
「どうする? あの親達」
「どうしよっか。みどりちゃん」
わたしと真理子は、箒をシャカシャカ動かしながら考える。
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