上 下
49 / 54
両親が登場

真理子と島唐辛子

しおりを挟む

 ゴホッ、ゴホッゴホッ。噎せ続けている真理子。

「ちょっと真理子大丈夫?」とわたし。

「真理子、あなた大丈夫!」と真理子母。

「真理子ちゃん……」とわたしのお母さん。

「真理子や~い、どうしたんだ?」と真理子父。

「真理子さん、大丈夫ですか?」とわたしのお父さん。

「く、くるひ~ひ~ひ~っ」

 真理子の顔は真っ赤だ。

「はい、真理子。水だよ」

 わたしは真理子に水を差し出す。

真理子は水を受けとり一気に飲み干し、「ふへぇ~辛かった」と言った。

 まったく真理子は……。子供みたいだ。


 真理子はようやく落ち着きを少取り戻して、水の注がれたグラスをテーブルの上に置き、わたしを睨んだ。

「みどりちゃん、これのどこが美味しいのよ。辛くて辛くてわたし死にそうになったんだからね!」

「真理子、誰がそんなに大量に島唐辛子を入れろと言ったのよ。それ、空っぽになってるじゃん。辛いに決まってるよ」

 真理子は、わたしをじっと恨めしそうに睨み、

「だって、みどりちゃんが、どばどばどは~と入れろって言ったじゃん。それがこんな~」

 何よそれ、そんなこと言ってないよと思う。

「真理子ちゃん、大丈夫?」

 わたしのお母さんが心配そうな顔で真理子に聞いた。

「はい、大丈夫です。ですけど、みどりちゃんが……」

 真理子は、うちのお母さんにわたしが悪いと同意させようとしているのだろか。

 すると、お母さんが、

「ごめんなさいね、真理子ちゃん。みどり謝りなさい」

 どうしてわたしのせいになるのかわからない。

「なんで、わたしが謝らないとならないのよ。真理子が勝手にどばどば~と大量に島唐辛子を入れたんだよ」

わたしが、そう言うと、今度は真理子のお母さんが、

「真理子、あんた。みどりちゃんのせいにしたら駄目でしょ」と言った。

 これではなんだかわたしと真理子は小学生の子供みたいだ。

「真理子、わたしがどばどば~と入れろと言わなければ良かったんだよね」

「うん」と真理子は答える。

 アホらしいけれどこの場を丸く治めるためには致し方ない。


 島唐辛子を入れすぎて赤い顔の真理子。うちの両親に真理子の両親。そしてわたし。ちょっと納得いかないこともあったけれど、みんなで楽しく笑って過ごす。

 そして、真理子は辛くて食べられなくなった沖縄そばの器を脇によけて、「は~い」と元気よく手を上げ店員さんを呼ぶ。

 やって来た店員さんに、「沖縄そば定食をお願いします」と言った。

 真理子……やっぱりあんたは不思議な人だ。沖縄そば定食以外の食べ物を再注文したらいいのになと思うけれど、これこそが真理子なんだよね。

 楽しかったお昼の時間もあと少しで終わる。その後は大変な仕事が待っているけれど頑張らないとね。

 真理子は笑顔で沖縄そばを食べている。わたし達はそんな真理子を微笑ましく眺めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

幼なじみはギャルになったけど、僕らは何も変わらない(はず)

菜っぱ
ライト文芸
ガリ勉チビメガネの、夕日(ゆうちゃん) 見た目元気系、中身ちょっぴりセンチメンタルギャル、咲(さきちゃん)   二人はどう見ても正反対なのに、高校生になってもなぜか仲の良い幼なじみを続けられている。 夕日はずっと子供みたいに仲良く親友でいたいと思っているけど、咲はそうは思っていないみたいでーーーー? 恋愛知能指数が低いチビメガネを、ギャルがどうにかこうにかしようと奮闘するお話。 基本ほのぼのですが、シリアス入ったりギャグ入ったりします。 R 15は保険です。痛い表現が入ることがあります。

二兎に追われる者、一兎に絞るのは難しい。

イカタコ
ライト文芸
 ある日突然、ごくごく普通の高校生・石口至のもとにクラスメイトの今見まみが泊まることとなる。  その数日後、至とクラスメイトの相坂ミユは、至とまみの関係を疑うようになり、急接近する。  その後に知り合ったミユの姉、マヤによって関係はさらに捻じれてゆく。  果たして、至は最終的にまみとミユのどちらを選ぶのか? それとも、違う女子に目移りしてしまうのか?  日常かつドロ沼なラブコメここにある。

風月庵にきてください 開店ガラガラ編

矢野 零時
ライト文芸
正夫のお父さんはお母さんと別れてソバ屋をやりだした。お父さんの方についていった正夫は、学校も変わり、ソバ屋の商売のことまで悩むことになった。 あ~、正夫とお父さんは一体どうなるのだろうか?

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

『飛ばない天使達の中』

segakiyui
ライト文芸
林東子は看護学生だ。小児科実習を迎えて不安が募る。これまで演じて来た『出来のいい看護学生』が演じ切れないかもしれない、という不安が。患者に自分の本性を暴かれるかもしれないという不安が。

雨が乾くまで

日々曖昧
ライト文芸
 元小学校教師のフリーター吉名楓はある大雨の夜、家の近くの公園でずぶ濡れの少年、立木雪に出会う。  雪の欠けてしまった記憶を取り戻す為に二人は共同生活を始めるが、その日々の中で楓は自分自身の過去とも対峙することになる。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...