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両親が登場

両親が沖縄にやって来た

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「は~い、もしもし。え?  何?」

 電話はお母さんからだった。

「みどりちゃん、お母さんとお父さん夏休みに沖縄に行こうと思うのよ」

 電話の向こうから聞こえてくるお母さんの声は弾んでいる。

「そうなの。沖縄いいところだよ。楽しんでね」

「それでね、みどりちゃんが働いてるホテルに予約入れたのよ。ふふっ。みどりちゃんの仕事ぶりが見られるわ」

 なんてお母さんはとんでもない事をいう!


「えっ、来なくていいよ~」とわたしは言う。

 更にお母さんは……。


「真理子ちゃんのご両親も誘ったのよ。そしたら、お二人も沖縄に行くんですって! うふふ、楽しみだわ。みどりちゃんと真理子ちゃんの働いてる姿もついでに見られるしね」

 何故にこの年になって親に仕事ぶりを見せないとならないのよと思う。それに真理子のご両親まで誘ったなんて!

 それはそうと真理子、ピンチじゃない!

 あの仕事ぶりをご両親に見せたら強制的に地元に引き戻されてしまうかも……。


 翌朝。

 今日は、朝から朝食スタッフとして働いている。調理場でわたしと真理子は忙しく動き回る。

 野菜をカットする。

 真理子は、包丁でトマトを切ろうとして、ベチャリとトマトをぶっ潰してしまった。赤色のトマトの汁がダラーンとなっている。どうやるとああなってしまうのだろう?


 そんなこんなでわたしと真理子は今日も朝から慌ただしく働いた。


 午後になると、わたしの両親と真理子の両親が沖縄にやって来た。


「やだやだ、みどりちゃん、なんでみどりちゃんのお母さんはうちの両親を誘うかな?」

「知らないわよ~」

「みどりちゃんのせいだからね!」

「なんで、わたしのせいになるのよ」

「だって、みどりちゃんのお母さんがみどりちゃんを産んだから」

 何を言ってるんだかまったく意味が分からないよ。真理子……。

「真理子のご両親は寛大だったじゃん」

「そうなんだけど、お父さんが真理子~って泡を吹きながらわたしの沖縄行きを止めようとしたんだから」

 そうだった。確か、真理子の両親は会社を辞めたことに関しては寛大だったけれど、沖縄に移住することに関してはお父さんが、一人娘の真理子のことが心配で、真理子ーって泡を吹きながら……。

「プププッ」

「ちょっと、みどりちゃん何がおかしいの?」

 だって、だって、泡って……。


 泡だなんて笑っていると、

「みどりちゃん~元気だった~」とお母さんの甲高い声が聞こえてきた。

 ここは、ホテルのロビー。大きな声を出されると恥ずかしい。お母さんの後でお父さんはニコニコしている。

「まあね。元気だったよ」

「良かった。あ、真理子ちゃん、こんにちは」

 わたしの返事を聞くか聞かないうちに真理子に気づき、挨拶をするお母さん。

「こんにちは~」

 真理子は、にぱっと明るい笑顔でわたしの両親に挨拶をした。
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