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うわー遅刻だ

客室清掃

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 窓を開けたままだと暑いので、窓を閉めてエアコンを入れた。わぁ涼しい生きかえる。

 ホテルの客室清掃はテキパキ丁寧にしかも決められた時間内が鉄則らしい。

 十五時になるとお客様のチェックインが始まるからだと池垣さんに説明された。

 とりあえずはゴミの回収を頑張らないと!

 「みどりちゃん~」

 もう何よ、人が気合を入れているときに真理子は泣きそうな声でわたしを呼ぶのだから。

 「もう、真理子なあに?」

 「見てみて」

 真理子が指差すゴミ箱を面倒くさいなと思いながら、視線を向けると。


 何これ?

 ゴミ箱の中には腐った果物類が大量に入っていた。

 悪臭だ~。

 これは酷い。茶色になったリンゴ、黒い斑点が大量についてるマンゴー、腐ったみかんには青カビが生えている。他にも潰れた果物が色々入っているみたいだ。

 「これ、気持ち悪いね」

 「気持ち悪いよ~みどりちゃんが捨ててよ」

 「何でよ、真理子が捨てなよ~」

 「嫌だ~」

 なんて押し付け合いをしていたら仕事が終わらない。

 「じゃあ、ジャンケンポンで決めよ」

 「よし、分かった! みどりちゃんには負けないぞ!」

 「こっちの台詞だ~じゃあ、一回勝負ね!」

 ジャンケン~

 ポーン。


 さあ、この気持ち悪~い腐った果物を捨てるのは、わたしみどりか、真理子かどちらになるのか運命の時だ!

 ジャンケンの結果は……。

 チャララン。

 わたしが、パーで、真理子は……。チョキだ!!

 ま、負けた。悔しいよ!

 「やった~勝ったぞ!」

 真理子は万歳三唱をしている。

 「負けた~」

 がっくり膝をつき敗北感を味わうわたしみどり……。

 それにしても、こんな気持ち悪い腐った果物を置いて帰る人の気が知れない。

えいゃ、えいゃ、えいゃとわたしは声を出す。

 「何やってんの? みどりちゃん」

 「何をって、ゴミを拾っているんでしょ!」

 真理子の奴はわたしのゴミを拾っている姿を見てニヤニヤしている。

 酷いじゃないの、ずるいじゃないのと怒り爆発だ。

 ジャンケンで負けたのはわたしなんだけれど……。

 ゴミ箱の中にある腐った果物は、ゴミ箱にべったりとくっついている。

 手にビニール手袋、これでべったりとくっついている果物のカスをとっている。

 あ~もう嫌にらなる。えいゃ~臭い、臭い、臭いよ。

 なんともいえない悪臭だ。鼻が腐りそうだよ。
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