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うわー遅刻だ

遅刻だ

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 慌てて制服に着がえたわたしと真理子。

 時計の針は既に午前九時十三分を指していた。遅刻をしますと前もって電話連絡をしておいた方が良かったのかもしれないが、焦りすぎて頭が働かなかった。

 もう、今日は朝から寝過ごすは、ケガをするしで最悪なスタートだ。

 「急ごう~真理子」

 「うん。みどりちゃん」

 階段を一段飛ばしで駆け上がる。息が切れる。ケガをした足もズキズキと痛む。

 ようやく、ベッドメイキング係控え室の扉の前に辿り着いた。扉を開けるのが怖い。この扉の向こうに悪魔が待ち構えているような気がしてドキドキする。

 「真理子、お先にどうぞ」

 「いえいえ、みどりちゃんがお先にどうぞ」

 とわたし達は譲り合う。というか押し付け合う。

 きっと、みどりちゃんの担当だとかなんとか真理子は、言うのが目に見えているので、これ以上譲り合いをするのはやめて、今回もわたしが扉を開いた。


 そして、開いた扉の先には、掃除道具一式がどーんと置かれていた。それから視線を更に奥に進めると、鬼の形相になっているベッドメイキング主任の池垣さんと目が合った。

 池垣さんはわたしと目が合うなり、

 「並木さん、梅木さん! あんた達~今何時だと思っているの」

 と大きな声を出して怒った。

 「九時十五分です」

 真理子は、聞かれた通り今の時刻を答えた。

 一体、何を考えているんだ! 真理子! 池垣さんの怒りを更に買いそうだよ。

 「梅木さん! あなたね……」

 池垣さんの怒りと呆れがまじりあったような雄叫びを聞くことになってしまった。

 
 「あなた達はどういうつもりなのかしらね」

 池垣さんの大きな声が部屋中に響き渡った。

 「すみません」とわたしと真理子は謝る。

 「まだ、勤務三日目ですよね。本当に気が弛んでいますよ」

 「はい。すみません……」

 「まったく、困ったものね」

 池垣さんは本当に呆れたわという表情をしている。

 まだまだ、仕事を始めたばかりなのに、さっそく信用を落としてしまったのかと思うと気持ちが沈む。

 項垂れるわたし達を見て池垣さんは、

 「バックレたのかもしれないと、心配したでしよ! 今回は、とりあえず来てくれたから許します!」

 「すみません。ありがとうございます~」と言い笑顔を見せたわたし達に池垣さんは、

 「特に梅木さん、あなた頑張ってくださいよ。それから並木さん、この前言ったように梅木さんを任せますよ!」

 なんて言うのだった……。
 
 先日わたしに言った梅木さんを任せますよ! あれはやっぱり本気だったんだ……。

 この絆創膏を貼ることにしか能がない真理子をわたしに任せるなんて。池垣さんは一体何を考えているんだろう。

 わたしが心の中でブツブツ文句を言っていると、池垣さんは腰に両手を当てて、

 「並木さん、何か不満でもありますか?」と言ってくる。

 「いえ……。特には」

 遅刻をした手前、わたしは反論することができない。

 真理子の様子をちらっと横目で見ると、小首を傾げてキョトンとしたポーズだ。

 もう、どうすればいいのよ。勘弁してほしい。

 
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