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沖縄で働きます
ああ、大変だ
しおりを挟むこのあとも池垣さんはベッドメイキング清掃係の手順を説明し実践を交えて教えてくれた。
掃除機の後はお茶のティーパック等のアメニティグッズを補充。
ベッドメイキング。箱型になっているのでそのままマットレスに被せてベッドメイキング完了。
被せるタイプなので簡単よと池垣さんは言うけれど、初めてのことなので苦戦する。
それから、トイレとユニットバスの掃除。
歯ブラシやトイレットペーパー等の補充。
ああ、もう大変だ。
わたしも真理子もくたくたになった。
特にわたしはトイレ掃除が苦痛だった。やはり知らない人が使用したトイレというのは気持ち悪いなと思ってしまうが我慢をするしかない。
それから真理子的にと楽天的家の真理子はお決まりのように、てんてこまいになりベッドメイキングの際はシーツと一緒にずり落ちる。
トイレ掃除は気持ち悪い~と言って池垣さんに睨まれ泣く泣く頑張るが中々上手く出来ずに怒られる真理子だったのだ。
地べたに座り込むわたし達。
「あー疲れたーもうダメ」
「普段やらないことをするとダメ! 体が痛いよ~みどりちゃん」
真理子も言うように、普段やらないことをすると体に堪える。掃除機をかけ、トイレ、風呂場掃除。窓拭き等々一気にこれだけするのは年末の大掃除ぐらいだ。
「二人ともお疲れ様。よく頑張ったわね」
と池垣さんが声をかけてくれた。
「ありがとうございます」とわたし達は声は揃った。
「並木さん」
「はい、なんでしょうか?」
「あなたに、梅木さんを任せます」
「はあ? まり、梅木さんをわたしに任せる? なんでまたどういうことですか?」
どういうことなのかなと首を傾げるわたしとぼーっとしている真理子を交互に見て池垣さんはわざとらしいようなため息をつき、
「夏場で人手不足なのよ。掃除一つまともに出来ない梅木さん一人に構っていられないのよ。分かるでしょう?」
「はあ。分かりますが……」
「じゃあ、お願いね」
なんて、さっさと決めて笑顔になる池垣さん。
待ってくださいよ。こんなしょぼこい真理子の面倒をみることなんてできませんと言いたいのに言えない。
「あなた、しっかりしてそうだから、頼りにしているわよ」
と言ってわたしの肩を池垣さんはぽんと叩く。
「でも、わたしもまだ何も分からないですし……」と抵抗してみるものの。
「大丈夫よ~分からない時は聞いてくれて構わないからね」
わたしの訴えなんてまともに聞いていない。
「じゃあ、二人とも明日から頑張ってね!」
「はーい」とわたし達は返事をした。
池垣さんも酷いと思うが、わたしの隣で呑気に、にぱにぱ笑っている真理子にはもっと頭にくる。
「今日は初日なのでこれで業務は終了します」
良かった。今日は疲れたので部屋に戻って一眠りしよう。
「やったね!」
「ね、みどりちゃん!」
と喜びを分かち合っていると、
「あ、先に伝えておきますが慣れてきたら一部屋二十分から二十五分で仕上げるように目標ね! 一応ノルマね」
二十分から二十五分で……。中々大変な気がする。
池垣さんは何が嬉しくてわたしにどんどんプレッシャーを与えるのだろうか。
酷いではないか。
このあと部屋に戻ったわたしはベッドに飛び込んだ。
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