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沖縄で働きます
新しい職場へその前に
しおりを挟むさあ、そろそろ本来の目的地に向かわないと!
腹ごしらえもできて満足だ。
「真理子~そろそろ行こうかっ」
「うん。国際通り楽しみだね」
「あ、国際通りね。この次にしようよ」
「なんで、な~んで~酷くないみどりちゃん!」
「だって、もう十四時になるよ。今から国際通りなんて寄ってたら夜になってしまうかもしれないじゃない」
真理子がお土産さんを物色して、道路が混んでいてバスが中々動かないと夜になってしまう。それではまずいでしょう。仕事は今日からではないけれど。
「そんなー楽しみにしていたのにー」
「これから沖縄に住むんだよ。いつでも行けるよ」
「そうだけど、騙したね。みどりちゃん!」
真理子はわたしをキッと睨む。
「なんという言いがかりを」
本当は半分図星だけど。だってお昼は食べる必要あるもんねとわたしは心の中で舌を出す。
真理子は渋々だけど、今日は国際通りに行くことを諦めてくれた。
じゃあ、行こう!
食べ終えた器を食器返却口に戻すと、
「ありがとうございました」と元気な大きな声でおばちゃんが挨拶をしてくれた。
わたし達は元気な声に見送られ、扉を開いた。すると扉を開いた先に懐かしい顔があった。
あ、この顔は、以前、沖縄に旅行で来たときにお世話になった作業着のおじさんこと宮代さんではないか!
宮代さんもわたし達に気づいた様子で、目を大きく見開いていた。
「宮代さんですよね?」
と、わたしが聞くと、
「お嬢ちゃん達! 沖縄そばを食い逃げされたお嬢ちゃん達だよね、名前がえーと」
「並木みどりです」
「梅木真理子です」
とわたし達は元気に言った。
「そうそう、そうだったね。並木さんに梅木さん。また、旅行で来たのかな?」
「いえ、今回は旅行ではなくて沖縄に仕事で来たんです!」
「仕事かい、出張かな?」
「違いますよーわたし達この沖縄で働くんですよー」
と真理子が自信満々な表情で答えた。
「えっ! 何と沖縄で働くのかい」
宮代さんは目を丸くしてる。もの凄く驚いているみたいだ。
「はい、ホテルの従業員として働きます」
とわたし。
「そうなんです! もう楽しみで」
と真理子。
「いやあーびっくりだね。沖縄を気に入ってくれたのかな? 嬉しいけど大変だよ。頑張ってね」
「はい」と返事をするわたしと真理子の声は揃った。
「また、会えたらいいね。おじさんは、毎日ここで食事してるからさー」
「はい、また、ここにも食べにきます!」
とわたしと真理子。
宮代さんと連絡先を交換して、お店の扉の前で別れた。「頑張れよ~」と宮代さんは大きな笑顔で手を振ってくれた。
昨年旅行の時に『沖縄そばを食い逃げ事件』に遭った、その際宮代さんは情報を提供してくれた上に、食い逃げ犯まで一緒に追いかけてくれた。
また、会えたら良いなあと思っていたら本当に会えた。
日本だけでも何億人という人が住んでいて出逢えるのはほんの僅かな人達だけだ。その中で出逢えた奇跡。人生は奇跡の連続だ。
この沖縄に来ることになったのも何かの奇跡かな。
さあ、頑張って働かないと! わたしは拳を強く握った。
「真理子、行こう!」
「うん。みどりちゃん行こう!」
わたし達は、歩きだした。
この先、何が待っているかは分からないけれど、とりあえず前に進もう。
今までとは違った自分になるために。これからの未来に期待をして。
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