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平凡で幸せな時間

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  ぶどうとグラタンのことでこれだけ盛り上がれるなんて俺は幸せだなと思う。

  お父さんは新聞を読みながら時々俺とお姉ちゃんの顔を見てはニコニコしている。

「さあ、できたわよ~お待たせ」

  お母さんがお盆に載せて運んできた、湯気の立ったグラタンとサラダをお父さんの目の前に置いた。

「おっ、グラタンだ。美味しそうだね」

  お父さんはそう言いながらフォークを手に取った。

  そして、グラタンを口に運んだ。

「うわぁ~美味しいぞ。チーズが濃厚で美味しい。それにホワイトソースとマカロニがよく合っているぞ~」

  お父さんはグラタンをはふはふして食べている。

  俺達親子はやっぱりそっくりだなと思う。俺は、それが嬉しくて仕方がなかった。この家の子になれて良かったなと正直思う。

  お父さんの目の前にぶどうが盛られたお皿が置かれると、お姉ちゃんはサッと手を伸ばし食べた。どれだけ食べるんだと呆れてしまう。

  そんなお姉ちゃんの姿をじっと見ていると、

「猫太、なんか文句あるの?」と睨まれた。

「……も、文句なんてありません」

  俺はそう答えた。

「さあ、ぶどうを食べるぞ~」


  お父さんはぶどうが盛られたお皿に目を落とし、「えっ?  俺のぶどうが二粒しかないよ」と叫んだ。

  お姉ちゃんは、素知らぬ顔で口笛を吹きそれからぶどうを口に運んだ。

  とんでもないお姉ちゃんで呆れてしまう。

  だけど、こんな毎日に感謝する。
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