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猫歌さんの楽しい日記のような文章と美味しそうなお菓子とそれから……

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「美味しそうでヨダレが垂れそうだよ~」

  その声に振り向くと、猫助は頬をゆるゆると緩めうっとりした表情になっている。そして、顔の前で両手の指を組んでいる。

  それに……。

「おい、猫助!!  ヨダレが垂れそうって既に垂れているよ」

  俺は呆れて溜め息をついた。

「あ、俺としたことが……だって、猫歌さんのノートにイチゴケーキやモンブランにそれから生クリームたっぷりのパンケーキなんて書かれているから美味しそうでつい」

  猫助はそう言いながらヨダレを肉球のあるもふもふなその手で拭った。

「本当に汚い奴だよな」

「信じられないよね。文章を読んでヨダレを垂らすなんてね」

  にゃんぴも呆れたようにちらりと猫助の横顔を眺めた。

「仕方ないだろう。美味しい食べ物は幸せとヨダレを運ぶんだからさ」

  なんてとんでもない言い訳をする猫助に呆れて言葉も出ない。

  その時、

  クスクスと笑い声が聞こえてきた。この声は猫歌さんの妖精のような声だ。

「ほら、猫歌さんにも笑われたぞ~」

  俺が言うと猫助は、

「だって、俺は食いしん坊なんだから仕方がないだろう」

  肉球のあるその可愛らしい手で頭を掻いた。


「笑ってしまってごめんなさい」

  猫歌さんはクスクス笑いながら謝った。

「猫歌さん、気にしないでください。この猫助が食いしん坊なんですからね」

「本当にごめんなさい」と猫歌さんは謝りながらもその肩は上下に揺れている。

「では、続きを読ませてくださいね」

  俺はそう言ってノートを捲った。

  その次のページも十歳の頃の猫歌さんの楽しそうに暮らしている内容が書かれていた。

  十歳の頃の猫歌さんは幸せに暮らしていたようだ。この先のページには何が書かれているのだろうか?

  楽しいことが書かれているのだろか。それとも辛いことが……。

  俺はどんどんページを捲った。
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