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扉が開くかもしれない

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「店員さんも困ると思います。でも、どうしても教えてほしいのです」

  俺はそれはもう必死になりお願いをした。

「……それはあなたが人間だから知りたいのですか?」

  アメリカンショートヘアの店員さんのグリーン色に輝くその吸い込まれそうな綺麗な目が俺を見ている。

「俺が人間だからもありますけどそれだけじゃなくて……俺の前世でのお母さんがその人間の女の子なのかもしれなくて」

  俺は本当のことを言った。三毛猫に言いつけられる心配はあったけれど、このアメリカンショートヘアの店員さんはなぜだか信じられると思ったのだ。

「……あなたは前世の記憶があるのですか?」


  アメリカンショートヘアの店員さんは目を大きく見開き言った。

「はい。この世界に生まれてくる前の前世も俺は人間でした」

「そうだったんですね」

「はい」

「それで、前世のあなたのお母さんがどうしてこの緑町にいると思ったんですか?」

「……それは、夢で見たんです。でもそれは夢ではなくて前世のお母さんの心の叫び声かなと思うんです」

   俺はどこまで話してもいいのか迷ったけれどきちんと話した方がいいのかなと判断した。

「夢でですか?  そうでしたか……」

「はい。あれは、俺が見た世界……いえ、過去と現在が混じり合ったあの世界は実際にあったと思います」

  そうきっと、お母さんがあの世界を造り出し俺に助けを求めたのだろう。
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