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この夢の世界から……
しおりを挟むお母さんがこれから言おうとしている言葉を聞きたいけれど聞きたくない。なぜだかそんな気持ちになる。
『……あのお母さん』
『太郎? どうしたの? お母さんね、この世界ではない別の世界で生まれ変わったみたいなのよ。でも、その世界が……』
お母さんはそこまで言ってしばらくの間沈黙した。
そして、息を大きく吐きすぅーと吐き出した。
『わたしその世界で閉じ込められているのよ』
『えっ!? 閉じ込められているってそれはどういうことなんだよ?』
俺はそう聞きながら胸がドキドキしてきた。
『うん、猫がたくさんいる世界なんだけどね……って言うか猫しかいないのかも。不思議な世界でしょ?』
お母さんは、そう言って眉根を寄せた。
そのお母さんが言っている猫がたくさんいる世界は俺が今世で住んでいるあの世界と同じではないのかなと思えてきた。
『ねえ、母さんそれってその猫がたくさんいる猫しかいない世界ってまさか』
と俺が聞いた。
『猫が住んでいる緑町というところなんだけど』
と、お母さんが言ったその時、稲妻のような光がピカッと俺の前に光った。あまりにもその光が眩しくて俺は目を瞑った。
そして、その眩しさから解放され目をそっと開けると、良く知っている天井が目に入った。ここは猫しか住んでいない俺の部屋だった。
「母さん、ねえ、母さん。どこにいるんだ?」
母さんと呼んでも返事はなかったしそれに……母さんの姿は見当たらなかったのだ。
あれはやっぱり夢だったのだろう?
だけど、お母さんが作ってくれた煮汁が染み込んだほくほくなじゃがいもの味を忘れることはできない。
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