生まれ変わったらもふもふ猫に囲まれて暮らしたいと言ったよ。だけど猫だけの世界に俺一人だけ人間なんだ！

人間界の前世をちらりと思い出した

  今日も赤色の三角屋根が可愛らしい煉瓦造りの自宅に辿り着く。

   庭には薔薇が咲き乱れている。それから色々な花や緑に癒される空間になっている。

「ただいま～」 と言いながら木製の玄関の扉を開けると、今日も。

「おかえりなさい～」

  猫の顔をしたキュートなお母さんがしゃもじを片手に出迎えてくれた。

  俺のお母さんなのになんて可愛らしいんだろうと毎回思ってしまう。ちくしょー可愛いぞ。

  なんて、考えていると、突然俺の頭の中に懐かしい顔が浮かんできた。

「母さん……」

「母さんってどうしたの猫太？」

「ううん、お母さん何でもないよ……」

  俺はキュートな猫のお母さんの顔見て答えた。

「そう、だったらいいんだけど、手を洗ってうがいをするのよ」

  お母さんはそう言ってパタパタと台所に戻っていった。

  俺はそのお母さんの後ろ姿をぼんやりと眺め、玄関でスニーカーを脱ぎ部屋に上がった。

  すると、その時、懐かしい前世での母の顔が浮かんできた。ちょっと丸顔で笑うと目が垂れるあの優しい母の顔が。

「母さん……」

  なんだか懐かしい気持ちが込み上げてきた。

  前世の母も俺におかえりなさいと言ってくれた。と、そこまで考えたところで、俺の前世の名前はなんだったかな？

   思い出せない。なぜだか思い出せない。まあ、今の俺は猫太なのだから思い出さなくても良いのかもしれないけれど。