奈良町には食いしん坊な神様と狛犬が住んでいます!

なかじまあゆこ

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みんなで食べるご飯は美味しい

優しい笑顔

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「あ、はい。夕飯にそうですね」

  わたしはそう返事をしながら華夜ちゃんの背中をじっと眺めた。華夜ちゃんは通学カバンから筆記用具を取り出しているみたいだ。

  そんな華夜ちゃんの背中に向かって声を掛けようと思うのだけどなかなか言葉が出てこない。ただ、夕飯を一緒に食べない?  と言うだけなのに……。

  簡単なことなんだけれど内弁慶なわたしにとってはそうでもない。

  おばあちゃんが美味しいご飯を作ってくれるんだよと言いたいのに華夜ちゃんの返事を聞くのが怖い。断れたらどうしようと悩んでしまう。

  わたしは馬鹿みたいだ。断られたらそれはそれでいいじゃないと思うのに……。

「奈夜ちゃん、頑張って!」と狛子と狛助も応援してくれる。わたしは神様と狛犬達のそんな気持ちが嬉しくて勇気を出した。

「華夜ちゃん」とわたしは呼びかけた。

「ん?  なあに?  奈夜ちゃん」

  華夜ちゃんがくるりとこちらに振り返った。その華夜ちゃん表情はやっぱり太陽みたいにぽかぽかあたたかく感じた。

「あ、その、えっと……」

「奈夜ちゃんどうしたの?」

  華夜ちゃんはニコニコと笑いながら首を横に傾げた。

「あ、ゆう……」
「えっ?  ゆう?」

  早く言わなきゃ華夜ちゃんに呆れられてしまうじゃない。どうしよう。そう思いながらわたしは、膝の上で握る拳にぎゅっと力を入れる。

「奈夜ちゃん頑張って!」と狛子と狛助が口を揃えて言った。

  そんな二人(二匹)に視線を向けるとニコッと笑っていた。

  それと校長先生の椅子にでーんと座っている神様もにっこりと微笑みを浮かべている。その神様の切れ長の澄んだ目が『頑張れよ』と応援してくれているように見えた。

 わたしは膝の上で強く握っていた拳によし!  とありったけ力を込める。

  そして、「華夜ちゃん、良かったらわたしの家で夕飯を一緒に食べない?」と一気に言った。

 やったー!  言えた。それだけで満足だ。わたしは心の中でガッツポーズを決めた。

「えっ!  夕飯!?」

  華夜ちゃんはそう言って目を大きく見開いた。

「う、うん、わたしのおばあちゃんが美味しいご飯を作ってくれるよ」
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