奈良町には食いしん坊な神様と狛犬が住んでいます!

なかじまあゆこ

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狛犬と神様と祖父母と美味しいご飯の時間と笑いと涙

えっ? そんな……

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「その通りだな。ホッホッ、奈夜ちゃんは面白い子だと有名になるかもな」

  神様は口元に手を当てて可笑しそうに笑う。

「ち、ちょっと神様ってばひどいですよ」

  わたしはぷりぷり怒る。ちょっと、待ってよ。わっ!  これも……。

「わたし一人で怒っているように見えるじゃない~」わたしはムッキーと怒る。

「わっ、もうダメだ……」

  わたしは道端にしゃがみこみ頭を抱えた。

「あはは、奈夜ちゃんどうしたんだい?  さあ、神社に行くぞ」

  わたしは、怒りをこめて神様を睨み無言で立ち上がる。そんなわたしを見て神様はなんだか楽しんでいるように見えるのだけどそれもまた、ムッキーとなる。

「あ、鹿さんだよ~」
「わっ、鹿さんがいるね~」

  狛子と狛助の能天気な声が聞こえてきた。その時、わたしはふと思う。

「狛子ちゃんと狛助君も人間には見えていないんですか?」

  わたしは、見えていると言う返事を期待して聞いた。

「狛子と狛助も見える人間と見えない人間がいるのじゃないかな。まあ、見えていない人間の方が多いと思うぞ」

  神様は期待外れな返事をした。

「……そ、そんな~」

  わたしはめちゃくちゃ恥ずかしい子になっているではないか。

「ねえ、神様に奈夜ちゃん見てみて鹿さん可愛らしいよ」

「鹿さん、可愛いよ」

  狛子と狛助がきゃっきゃっと嬉しそうな声を上げている。

  その声に振り返ると狛子と狛助が民家の軒先にいる鹿を触ろうとしているところだった。

「狛子ちゃんに狛助君、鹿さんは触ると嫌がるよ~」

  とわたしが言ったけれど、どうやら遅かったようだ。

「わっ、鹿さんに舐められちゃった~」
「ぎゃっ!  鹿さんが追いかけてくるよ~」

  狛子は鹿に服をペロペロ舐められ怯え、狛助は鹿に突進されそうになり逃げ、追いかけられている。

「ホッホ、狛子と狛助は鹿に遊んでもらっているんだな」

  神様は呑気に笑っている。

「二人とも(二匹)大丈夫~って言うか鹿さんは狛子と狛助が見えるんだね!」

「そうじゃな。鹿には見えるらしいな」

  神様は首を縦に振り頷いた。

「か、神様~奈夜ちゃん、助けて~」
「た、助けて~」

  狛子と狛助が大声で叫んだ。

  きっと、鹿は狛犬の狛子と狛助が物珍しいのだろう。なんだか嬉しそうにペロペロ舐め追いかけているようにも見えた。

 「鹿と戯れて何をやっているのじゃ~神社に行くぞ」

「か、神様~鹿になめなめされているんだよ~」狛子は鹿に舐められ仰け反りながら叫んだ。

「か、神様~僕は鹿に追いかけられているんだよ~」狛助は鹿からすたこらと逃げ回りお尻を噛まれそうになっている。

  なんだかその姿が可愛くてそして可笑しくてクスッと笑ってしまう。

「あはは、情けない奴らだな。奈夜ちゃん、あいつらは放っておいて神社に行くとしようか」

「あはは、放っておくんですか?」

「そうじゃな」

「か、神様~置いていかないで~」
「か、神様~待って~」

  狛子と狛助は情けない声を上げた。

「置いていかれたくないのだったら鹿と遊ぶのをやめるんじゃな」

「だから遊んでないってば!」
「遊ぼうと思ったら追いかけられたんだよ~」

  わーわーっ騒ぐ二人(二匹)に神様は溜め息をついた。

  神社に行くだけで騒がしくあるのだった。だけど、ちょっといつもより楽しいかな。

  わたしと神様とそれから狛子と狛助は鳥居の前に立った。
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