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狛犬と神様と祖父母と美味しいご飯の時間と笑いと涙

ちょっと神様!

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「わたし達、奈夜ちゃんのお部屋に居候だね」
「奈夜ちゃんよろしくね」

  狛子と狛助はわたしの部屋に布団を敷きながら言った。

「あ、うん、よろしくね」

「う~ん、奈夜ちゃんのお部屋は畳のい草の良い匂いがするね~」

  狛子が鼻をクンクンさせている。

「う~ん、い草の香りはなんとなく懐かしいね」

  狛助も狛子と同じように鼻をクンクンさせている。

「奈夜ちゃんのお部屋は床の間や障子もあるんだな。う~ん、昔ながらの日本人の住まいって感じで良いな~」

「うん、そうでしょ。親と住んでいた家は近代的な家だったけど、わたし、おばあちゃんの昔ながらの家が好きなんだよね」

  そうなのだ。わたしは、まだ中学生なんだけれど、近代的な家よりもこのおばあちゃんの和を感じられる家が好きなのだ。

「畳の部屋はごろ寝もできるしい草の香りも好きで心がほわほわ~と和らぐもんね」

「うん、畳の部屋は良きだぞ」

  わたしは、うふふと口元に手を当てて笑ったのだけど、何かがおかしいことに気がついた。

「って、ちょっと待って!  どうして神様がわたしの部屋に居るんですか!?」

  そう、わたしがさっきから話していた相手は神様だったのだ。

  わたしが叫ぶと、神様は、「はて?  何かいけないことをしたかね?」と言って首を横に傾げた。

 「……あの、はて?  ってですね、どうして神様がわたしの部屋に布団を敷いているんですか!」

  神様は信じられないことに布団を敷きちょこりんと座っているではないか。

「うん?  それは食事終え風呂にも入ったから寝るのじゃ。まだ寝るのは早いのかな? 
 ならば話をしよう」

  神様はそう言って微笑みを浮かべた。

「……話をしようじゃありません!」

「はぁ?  では、何をするのじゃ?」

  神様はきょとん顔でわたしを見る。

「神様は通いじゃなかったんですか?  それに、わたしは女の子ですよ」

  わたしは呆れながら神様の顔を見て言った。

「うん、奈夜ちゃんは女の子だな。男の子には見えないな。この家には通いの予定だが今日は疲れたから泊まるのじゃ」

「……女の子の部屋に見かけが二十代の男性が泊まるのは変じゃありませんか?」

「ほぅ。そうなのかね。まあ、見かけは二十代男性だが俺は何千年も神様をやっているぞ」

「何千年も前から神様をやっているんですか!?」

  わたしは、びっくりして目を大きく見開いた。

「うん、俺は神様だからな」

  神様は誇らしげに胸を張った。

 「……そうなんですね。神様って凄いですね」

「ふふん、凄いだろう。では、寝ようとしようかな」

  神様は得意満面な笑みを浮かべたかと思うと布団に入って寝ようとしているではないか。それに神様は赤と紺のチェック柄の前開きパジャマを着ている。

  ちょっと神様、そのパジャマは……。

「か、神様……」

「何じゃね?  奈夜ちゃんも寝るのかい?」

「あ、わたしもそろそろ寝ようかな~」
「僕もそろそろおねむだな~」

  狛子と狛助も布団の上でぴょんぴょんと飛び跳ねた。

「こらこら、狛子と狛助も飛び跳ねていないで寝るのじゃぞ。奈夜ちゃんもな」

「か、か、神様そのパジャマ……」

「ん?  このパジャマかい?  これは奈夜ちゃんのおじいちゃんに借りたのさ」

  神様はそう言ってニコニコと笑っている。

「おじいちゃんから借りたんですね」

  そうなのだ。神様は人間じゃなくて神様なのにおじいちゃんがお気に入りだったオシャレなパジャマを着ているなんて信じられないよ。

「ホッホッ、柔らかくて着心地の良いパジャマだぞ」

  神様は掛け布団を顔ギリギリまで掛けた。どうやらこのまま寝るつもりらしい。

「神様!」

「寝るのじゃ~スピスピじゃ~」

  神様は完全に寝ようとしている。

「神様!  出ていきなさ~い!」

  わたしは、大声で叫び神様の掛け布団をめくりあげた。

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