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狛犬と神様と祖父母と美味しいご飯の時間と笑いと涙
神様や狛犬がいると夕飯も楽しい
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「おばあちゃん、今日の夕食はなんだか楽しいね」
「うん、そうだね。狛子ちゃんや狛助君にそれから神様も家に来てくれたからかしらね」
「うん、食いしん坊な狛犬とお金が大好きな神様だけどわたし達に元気を与えてくれるね」
わたしは、おばあちゃんの顔を見て言った。
「奈夜ちゃんが連れてきてくれたんだよね。ありがとうね」
「えっ! わたしが連れてきたと言うか勝手についてきたんだよ」
わたしは、大和雑煮やいなり寿司をぱくぱく食べている無邪気な狛子や狛助とそれから神様に視線を向けて答えた。
「でも、きっと奈夜ちゃんが神社でいろいろお祈りをしてくれたから美味しくて楽しい時間を過ごせていると思うわよ」
おばあちゃんはうふふと幸せそうな微笑みを浮かべた。
「もしそうだったらわたし嬉しいな」
だって、わたしはおばあちゃんに笑顔になってもらいたかったのだから。
狛子や狛助にそれから神様は今も美味しそうにおばあちゃんの料理を食べている。
湯気の立っている湯呑み茶碗が置かれた木製のテーブルの前にちょこりんと座っているおじいちゃんにわたしは視線を向けた。
やっぱりおじいちゃんはお日様のような優しい笑顔を今も浮かべていた。そんなおじいちゃんをわたしがじっと見ていると、目が合った。
『今日の夕食はなんだか賑やかで楽しいな』と言ったおじいちゃんの優しくてふんわりとした声がわたしの胸にじーんと響いた。
「おじいちゃん、狛犬ちゃん達と神様が夕食に参加しているんだよ」
わたしは、おじいちゃんの目の前に座りニコニコと微笑みを浮かべた。
『ほぅ、そうかいな。食欲旺盛な狛犬と神様だな』
おじいちゃんはホッホッと笑いながら狛子と狛助とそれから神様に目を向けた。
「もう食い意地が張った食いしん坊な狛犬と神様なんだからびっくりしちゃうよ」
『ホッホッ、まあ、おばあちゃんの料理を美味しそうに食べてくれているからおじいちゃんは嬉しいな』
おじいちゃんは湯呑み茶碗を包み込むように持ち目を細めた。
「うん、おじいちゃん、わたしも嬉しいよ~」
わたしのおじいちゃんはとても優しい人だった。おばあちゃんもおじいちゃんは人が良すぎるとよく話していた。
いつもニコニコしていて怒った顔なんて一度も見たこともなかった。他人のことを思いやり自分を犠牲にするおじいちゃん。
人に騙されても嘘をつかれても信じた自分が悪いんだよと言ってニコニコ笑っている。お金を貸して返ってこなくても「そのお金であの人が助かったと思えばいいんだよ」と笑うおじいちゃん。
自分の失敗をおじいちゃんのせいにされても「まあ、仕方がない……俺にもそうさせてしまった落ち度があるんだよ」と言って怒らないおじいちゃん。
そんなおじいちゃんを見ておばあちゃんは、
「もっと怒ったらいいのに、人が良すぎるから利用されるんだよ」と言って溜め息をついていた。けれど、そんなおじいちゃんのことをおばあちゃんは優しい眼差しで見つめていたことをわたしは知っている。
わたしのおじいちゃんとおばあちゃんは優しい人なのだ。わたしにはとても真似できない。
だからおじいちゃんが亡くなった時おばあちゃんは、「どうしてあんな良い人がこんなに早く亡くなるのよ!」そう言って悲しそうにうつ向いた。
「うん、そうだね。狛子ちゃんや狛助君にそれから神様も家に来てくれたからかしらね」
「うん、食いしん坊な狛犬とお金が大好きな神様だけどわたし達に元気を与えてくれるね」
わたしは、おばあちゃんの顔を見て言った。
「奈夜ちゃんが連れてきてくれたんだよね。ありがとうね」
「えっ! わたしが連れてきたと言うか勝手についてきたんだよ」
わたしは、大和雑煮やいなり寿司をぱくぱく食べている無邪気な狛子や狛助とそれから神様に視線を向けて答えた。
「でも、きっと奈夜ちゃんが神社でいろいろお祈りをしてくれたから美味しくて楽しい時間を過ごせていると思うわよ」
おばあちゃんはうふふと幸せそうな微笑みを浮かべた。
「もしそうだったらわたし嬉しいな」
だって、わたしはおばあちゃんに笑顔になってもらいたかったのだから。
狛子や狛助にそれから神様は今も美味しそうにおばあちゃんの料理を食べている。
湯気の立っている湯呑み茶碗が置かれた木製のテーブルの前にちょこりんと座っているおじいちゃんにわたしは視線を向けた。
やっぱりおじいちゃんはお日様のような優しい笑顔を今も浮かべていた。そんなおじいちゃんをわたしがじっと見ていると、目が合った。
『今日の夕食はなんだか賑やかで楽しいな』と言ったおじいちゃんの優しくてふんわりとした声がわたしの胸にじーんと響いた。
「おじいちゃん、狛犬ちゃん達と神様が夕食に参加しているんだよ」
わたしは、おじいちゃんの目の前に座りニコニコと微笑みを浮かべた。
『ほぅ、そうかいな。食欲旺盛な狛犬と神様だな』
おじいちゃんはホッホッと笑いながら狛子と狛助とそれから神様に目を向けた。
「もう食い意地が張った食いしん坊な狛犬と神様なんだからびっくりしちゃうよ」
『ホッホッ、まあ、おばあちゃんの料理を美味しそうに食べてくれているからおじいちゃんは嬉しいな』
おじいちゃんは湯呑み茶碗を包み込むように持ち目を細めた。
「うん、おじいちゃん、わたしも嬉しいよ~」
わたしのおじいちゃんはとても優しい人だった。おばあちゃんもおじいちゃんは人が良すぎるとよく話していた。
いつもニコニコしていて怒った顔なんて一度も見たこともなかった。他人のことを思いやり自分を犠牲にするおじいちゃん。
人に騙されても嘘をつかれても信じた自分が悪いんだよと言ってニコニコ笑っている。お金を貸して返ってこなくても「そのお金であの人が助かったと思えばいいんだよ」と笑うおじいちゃん。
自分の失敗をおじいちゃんのせいにされても「まあ、仕方がない……俺にもそうさせてしまった落ち度があるんだよ」と言って怒らないおじいちゃん。
そんなおじいちゃんを見ておばあちゃんは、
「もっと怒ったらいいのに、人が良すぎるから利用されるんだよ」と言って溜め息をついていた。けれど、そんなおじいちゃんのことをおばあちゃんは優しい眼差しで見つめていたことをわたしは知っている。
わたしのおじいちゃんとおばあちゃんは優しい人なのだ。わたしにはとても真似できない。
だからおじいちゃんが亡くなった時おばあちゃんは、「どうしてあんな良い人がこんなに早く亡くなるのよ!」そう言って悲しそうにうつ向いた。
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